仰天アイデア満載のハラドキ・アクションは必見!
※物語の内容に一部触れています。ご注意ください。
今回も、まずアクションがすごい。冒頭のアフガニスタン、続くロシア、そして人質のジュニアを取り戻すためのイスタンブールでのタイガー、さらにはゾヤの闘いと、前半だけでも大盤振る舞いだ。中でも、イスタンブールのハマーム(中東式のサウナ)で中国特殊部隊の女性将軍とゾヤが闘うシーンは、美ボディの2人がバスタオルをまとっただけの姿で闘うという、ハラハラドキドキの前代未聞アクションである。
中盤では、パキスタン軍に囚われたタイガーの闘いがまた見もので、強力な助っ人が現れるのも、<YRFスパイ・ユニバース>のお約束。そして最後のパキスタン首相官邸でのクライマックスは、馬まで登場してのアイデア満載アクションシーンが展開する。
加えて素晴らしいのが、ワザありのアイディアを満載した“裏切りのストーリー”だ。クライマックスシーンでは、ラフマーンが軍部と組んで政権を掌握しようとするのだが、裏切りによるどんでん返しの連鎖に観客は翻弄されることになる。まさに『タイガー 裏切りのスパイ』の邦題そのものである。
脚本のシュリーダル・ラーガヴァンは、『WAR ウォー!!』(2019年)、そして『PATHAAN/パターン』と、<YRFスパイ・ユニバース>生え抜きの脚本家と言ってよく、そのおかげか、これまでは少し辛口のよくできたラブコメを得意としてきたマニーシュ・シャルマー監督も、見事にアクション監督として大化けしている。
印パ友好のメッセージも健在!歴代興収ランクインの秘密
特筆すべきなのは、『タイガー』シリーズの精神をしっかりと受け継いでいることで、今回もインドとパキスタン、つまりRAWとISIが手を組んで悪に立ち向かう、という構図が継承されている。実は、前作『タイガー 蘇る伝説のスパイ』と同じエージェントたちが登場するので、前作を見ておいていただいた方が多少わかりやすい(※5月4日[土]にBS12で無料放送アリ!)のだが、劇中に説明があるから大丈夫。現実のインドとパキスタンは、特にインド側から敵対意識が煽られつつある昨今だが、それを諫めるように毎回印パ間の友情が展開するのも『タイガー』シリーズの見どころである。
特に今作は、パキスタンの女性首相ナスリーン・イラニ(シムラン)が登場、その凜としたたたずまいと判断力&行動力がクライマックスシーンで光る。インド首相も、現首相にちょっと似た役者が登場するものの、彼女に比べると影が薄い。特に、事件が終熄したあとのパキスタン首相の粋な計らいは、インド人観客の心をわしづかみにしたに違いなく、それもあって本作は2023年の興収第8位、歴代興収でも第23位という好成績を挙げたのでは、と思われる。印パ間の関係改善への提言とも深読みできる『タイガー 裏切りのスパイ』、必見である。
文:松岡 環
『タイガー 裏切りのスパイ』は2024年5月3日(金・祝)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
CS映画専門チャンネル ムービープラス「ハマる!インド映画」毎月放送中
『タイガー 裏切りのスパイ』
インドの国家諜報機関RAWでは、亡くなった最高責任者シェノイに代わり、女性局長のメナン(レーヴァティ)が指揮を執っていた。メナンはアフガニスタン潜入中のエージェント、ゴーピー(ランヴィール・ショーリー)が危機に陥ったため、タイガー(サルマーン・カーン)に救出を依頼する。タイガーは瀕死のゴーピーを助けヘリに乗せたが、ゴーピーは「二重スパイ」がいる。女性―ゾヤだ」という言葉を残し亡くなる。タイガーは妻ゾヤ(カトリーナ・カイフ)への疑念を胸に帰宅し、少年に成長したジュニアとの3人暮らしの日常に戻るが、次の任務でロシアに赴いた時、タイガーを襲ってきたのはゾヤだった! ゾヤは1999年にISIのエージェントだった父をテロで亡くした後、ISIのアーティシュ・ラフマーン(イムラーン・ハーシュミー)をメンターとして組織に加わったのだが、その彼に従わざるを得ない事態が起きたのだった。12年前にある事件でISIを追放されたアーティシュの目的は、現首相イラニ(シムラン)を暗殺し、軍の指導者と共にパキスタンの全権を掌握することで、そのためにゾヤとタイガーが利用されようとしていた…。
監督:マニーシュ・シャルマー
出演:サルマーン・カーン カトリーナ・カイフ イムラーン・ハーシュミー レーヴァティ
制作年: | 2023 |
---|
2024年5月3日(金・祝)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー