パワーアップするゴジラはまさかの「DBZ」インスパイア?
本作公開前に発表されたフィギュアや予告編を観たファンの多くが、ゴジラのデザインが一新されたことに驚いたと思う。
今回のゴジラは『ゴジラ』(1984年)以来2度目となる原子力発電所から放射線を摂取するだけでなく、全長258メートルの電気ウナギのような怪獣<ティアマット>を殺して、その巣に蓄積されていたパワーを吸収した結果、お腹周りがスッキリしてビルドアップされた身体とピンク色に発光する背ビレを持つ、従来の20倍のエネルギーのオーナーとなる。
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— 映画『ゴジラxコング 新たなる帝国』公式 (@GodzillaMovieJP) April 10, 2024
ゴジラ
💥身長:約120m
💥生息地:地表世界
口から吐き出す放射能熱線と、
都市を一気に破壊できる
尻尾を振り回す攻撃で相手を倒す。#ゴジラxコング#ゴジラ #GodzillaXKong pic.twitter.com/LyPfytNnAW
このデザインに関しては当然、『ゴジラ2000 ミレニアム』(1999年)、『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』(2000年)に登場した紫色の背ビレを持つゴジラを参考にしつつ、クリチェフスキーはアニメ『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』(2021年)に登場したゴジラの最終形態<ゴジラウルティマ>からもインスパイアされたという。
それにしても、なんで背ビレが紫色ではなくピンクなんだ? と思うが、これには非常にゴキゲンかつチャイルディッシュな理由があった。「ゴジラがパワーアップしたバージョンをデザインして」とオーダーされたクリチェフスキーが、まず頭に思い浮かべたのは、なんとアニメ『ドラゴンボールZ』(1989~1996年)でピンクのオーラを発しながら界王拳を使う孫悟空だった。
今回のゴジラのデザインのベースとなったのは“界王拳”だよ。悟空が界王拳を使うのは一時的だし、多くの体力を消耗するように、ゴジラも一時的にパワーアップした姿になるには膨大なエネルギーが必要になる。だから、余分な脂肪が全部燃焼されて、ああいう体型になったんだ(笑)。
そう明かすクリチェフスキーのアイデアに賛同したウィンガード監督も、「ゴジラの背ビレをピンクにしたのは、僕が一番好きな色だから(笑)。僕の部屋にはピンクの照明があるし、映画を編集する時はいつも部屋をピンクの照明にしているぐらい好きなんだよ!」と語っている。
なお、パワーアップしたゴジラが氷山の中から出現するのは、『キングコング対ゴジラ』(1962年)のゴジラ登場シーンへのオマージュだという。
コングの腕アーマー装着に隠されたマニアックすぎる元ネタあれこれ
ゴジラのパワーアップ・バージョン以外にも、公開前に予告編やフィギュアを観たファンが驚いたのが、右腕に“メカアーマー”を装着したコングの姿だろう。
彼が装着するアーマーの正式名称は<B.E.A.S.T.グローブ>。B.E.A.S.T.は「Bio Enhanced Anatomech Seismic Thunderの」略。モナークがコングの戦闘能力を向上させるため、彼にアーマーを装着させる<パワーハウス計画>のために開発されたもの。
しかし、計画自体は「コングが強くなりすぎたら制御できないかも……」というモナーク上層部の懸念から頓挫する。その幻のプロジェクトの遺産を装着するわけだが、劇中に登場するB.E.A.S.T.グローブの設計図は、なんと『パシフィック・リム』(2013年)の主役ロボ、ジプシー・デンジャーの腕の図面!
ゴジラを気絶させるほどの打撃力を持つB.E.A.S.T.グローブをコングが装着するシーンで景気よく流れる曲は、KISSの「ラヴィン・ユー・ベイビー(I Was Made For Lovin’ You)」。この曲の使用にも、ウィンガード監督のギークなゴジラ愛が込められている。
「ラヴィン・ユー・ベイビー」は2006年に制作されたキヤノンのカメラ・EOS Kiss デジタルXのCMに使用された曲。そのCMには、この曲を唄うKISSのメンバー、ポール・スタンレーのような右目の周りに星形マークをペイントした『ゴジラ FINAL WARS』(2004年)版ゴジラが登場する。こういう細かいネタも拾ってくるウィンガード監督は、本当に信用できる人物です!
コングとゴジラの共闘は「グラサンかけろ」「嫌だ」インスパイア!?
B.E.A.S.T.グローブを装着したコングはスカーキング軍団を倒すため、『ゴジラ対メガロ』(1973年)のジェットジャガーのごとく、地上にいるゴジラに助っ人になってもらおうとネゴシエートを試みる。このシーンで、ゴジラがジブラルタルの岸壁から海へダイブするのは、『ゴジラ対メガロ』のダイブ・シーンへのオマージュ。
当然、前作で壮絶な殺し合いを繰り広げた者同士がスムーズにタッグを組めるわけはなく、ファンには嬉しいゴジラvsコングのリターンマッチがエジプトを舞台に勃発! ウィンガード監督がこのシーンの参考にしたのは、ジョン・カーペンター監督作『ゼイリブ』(1988年)でプロレスラーのロディ・パイパーとキース・デイヴィッド演じる主役キャラ同士が、方向性の違いからプロレス技も使って観客がドン引きするほど長い喧嘩をする名シーンだ。
ゴジラとコングの関係を描くのに影響を受けた作品は、『リーサル・ウェポン』(1987年)などの80年代に作られたバディものの刑事映画だよ。性格の合わない2人がコンビを組まされる映画は多いからね(笑)。そして、他に大きな影響を受けたのが『ゼイリブ』。この映画は、僕が人生で一番好きな映画といっても過言じゃない(笑)。『ゼイリブ』の中で特に好きなのが、本来はヒーローである主人公同士が誤解のために戦わなければならなくなるシーン。だから今回の映画の参考にしたんだ。ゴジラとコングの関係は、もっと複雑なんだけど(笑)。
それほどまでに『ゼイリブ』を愛するウィンガード監督は『ゴジラvsコング』のリターンマッチとして、『ゼイリブ』でロディ・パイパーが披露したブレーンバスターを本作でゴジラに使わせている。