「ゴジラVSスキュラ」と、前日端コミックに描かれた驚くべき真実
コングが歯痛で苦しんでいる頃、ローマでは、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』に登場した、蜘蛛のようなボディと長い6本の脚を持ち、クトゥルフのような面構えをした怪獣<スキュラ>が絶賛蹂躙中。
そこにゴジラが現れると、格の違いを見せつけてスキュラを瞬殺……。前作で描かれた香港での対コング戦では四足歩行で相手を追い詰める斬新な戦闘スタイルを披露してくれたが、本作ではさらにアップ・トゥ・デートされた戦闘スタイルをアピール!
ここでのゴジラは、戦闘開始直後にスキュラの脚を掴んで力いっぱい投げつけ、ダッシュしながら跳び上がるとスキュラの上に着地してマウントを取り、至近距離から放射熱戦を吐いて試合終了! という王の貫禄あふれる戦闘スタイルを披露。このシリーズのお約束である、放射熱戦を吐く前に背ビレが順番に発光していく時の“ブォンブォンブォ~ン!”という音も、ファンにとってはライトセーバーの作動音並みに心地良い。今回のゴジラはモンスター・ヴァース版ゴジラ史上最も俊敏かつアグレッシブな仕上がりになっているのではないでしょうか?
今でも一部ファンの間では、『ゴジラ対メガロ』(1973年)のゴジラがドロップキックをするシーンが、「ゴジラがあんなことできるわけねえだろ!」と不評を買っているが、本作のゴジラなら余裕でできる!
今回の対スキュラ戦は唐突に試合開始になるが、本作公開前にアメリカでリリースされた前日端コミック「Godzilla X Kong: The Hunted」では、この戦いに至った経緯が描かれている。『キング・オブ・モンスターズ』のラストではゴジラに頭を垂れていたスキュラだが、実は下剋上の機会を目論んでいたのだ。
“王”に成りあがるための準備としてインドの原発、イギリスの核癒合エネルギーセンター、イタリアの米軍核ミサイル基地を次々に襲って体内に核エネルギーをチャージしたスキュラ。満タンになってローマでゴキゲンに大暴れしていたところを、ゴジラにアッという間にシメられてしまう……。怪獣が地上で調子に乗ったらゴジラに処理される、というモンスター・ヴァース界の不文律を描いた大事なシーンだ。
ちなみにこの前日譚コミックではコングの活躍も描いていて、これまた画期的に素晴らしい。怪獣狩りに命を燃やすハンターが開発した巨大人型ロボット<タイタンハンター>と激闘を繰り広げるという、『キングコングの逆襲』(1967年)の対メカニコング戦を彷彿とさせる――というか正味な話、そんな燃えるカードなら映画でやってくださいよ! と懇願したくなるようなエピソードが描かれている。
話を映画に戻すと、スキュラを倒したゴジラはそのままローマに滞在。『グラディエーター』(2000年)でラッセル・クロウがたくさんの思い出を作り、『ドラゴンへの道』(1972年)ではブルース・リーとチャック・ノリスのベストバウトが繰り広げられ、『ダブルチーム』(1997年)ではミッキー・ロークが自爆したことでもお馴染みの、イタリアはローマが世界に誇る名所、古代ローマの円形闘技場コロシアムを、勝手に寝床にして熟睡する。
ゴジラ的には『キング・オブ・モンスターズ』で芹沢博士(演:渡辺謙)によって木っ端微塵に破壊された、海底の古巣を思わせる場所だから居ついてしまったのだろうが、近隣住民的にはヒヤヒヤが止まらない。このシーンは、アダム・ウィンガード監督が自宅で一緒に暮らしている猫が、猫ベッドで寝ている姿から着想を得たという。
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ジェットジャガーやヘドラも登場!「ゴジラの落書き」シーンに込められた山崎貴監督リスペクトとは?
コロシアムでの休息を終えたゴジラがローマを去るシーン。街中の塀に描かれたデフォルメされたゴジラの落書きが映るのだが、ここにぜひ注目してほしい。サングラス姿でピザを食べるゴジラ以外にも、特撮ファンならグッとくる落書きが散りばめられているので!
まずは『怪獣大戦争』(1965年)のX星人円盤、『ゴジラ対ヘドラ』(1971年)のヘドラ、さらに『ゴジラ対メガロ』(1973年)に登場した電子ロボット、ジェットジャガーの片腕と共に書かれた「Punch! Punch! Punch!」という文字。そうです! 映画の主題歌「ゴジラとジェットジャガーでパンチ・パンチ・パンチ」の歌詞まで描いてあるんです!
これだけでも凄いのに、他にも『パシフィック・リム』(2013年)に登場した巨大怪獣ナイフヘッドの頭部や、カメ型怪獣の骸骨まで描いてある――という、モンスター・ヴァース作品の今後を期待させる逸品になっています。
なお、この落書きを映画のために描いたのは、「Godzilla: Monsters & Protectors #4」や「Godzilla Rivals vs. Gigan #1」などのゴジラ・コミックでカバーアートを手がけた、クリスチャン・ゴンザレスによるもの。自身のインスタグラムで『ジャンボーグA』(1973年)や『ファイヤーマン』(1973年)などの特撮ヒーローたちのイラストも投稿している、後戻りできないくらいゴリゴリにオタッキーなゴンザレスの感性がスパークしているシーンを、ぜひ堪能してほしい。落書きが登場した直後、その建物がゴジラに踏み潰されるので……。
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踏み潰すといえば、ウィンガード監督は本作完成前に『ゴジラ -1.0』(2023年)の予告編を観てグッときたので、急遽、ローマでのシーンにゴジラの脚のクローズアップをトッピングして、山崎貴監督へのリスペクトを込めたという。