1970年の『大空港』はオールスター・キャストによるパニック映画の元祖で、アカデミー賞9部門にノミネートされるほど評価も高く、興行的にも大ヒットした。
70年代パニック映画の超ヒット作
あらすじは、豪雪のリンカーン空港から飛び立ったローマ行ボーイング707の機内で爆弾が破裂、元の空港に引き返して緊急着陸することになるが、滑走路は脱輪した機体でふさがれ、使用不能で……というもの。いわゆるグランドホテル形式(※限定空間で繰り広げられる群集劇)で、家庭を顧みないで離婚の危機にある空港長メル・ベイカースフェルド(バート・ランカスター)と、彼と恋仲の地上職員ターニャ(ジーン・セバーグ)、メルの姉と結婚しているプレイボーイの機長ヴァーノン・デマレスト(ディーン・マーティン)と浮気相手の客室乗務員グエン(ジャクリーン・ビセット)、失業中の土木技術者ゲレーロ(ヴァン・ヘフリン)と家計を助けるためにダイナーで働く妻イネーズ(モーリン・ステイプルトン)、凄腕の整備士ジョー・パトローニ(ジョージ・ケネディ)、無賃搭乗常習犯のクォンセット夫人(ヘレン・ヘイズ)ら、それぞれのストーリーが錯綜する。
原作は「ホテル」「ストロング・メディスン」といった業界の内幕物で知られるアーサー・ヘイリー。監督は名匠ジョージ・シートンで、多数の登場人物が複雑に交錯する原作をほぼ忠実に正攻法の演出で描ききっている。
さすがに昔と今とでは、空港の規模や機能、セキュリティ問題など隔世の感があるが、ヘレン・ヘイズ、モーリン・ステイプルトン、ヴァン・ヘフリンといった名優の演技は見応えがあるし(アカデミー助演女優賞にヘレン・ヘイズとモーリン・ステイプルトンがWノミネート。結局ヘレンが受賞したが、モーリンはゴールデングローブ賞を受賞)、クライマックスの傷ついた機体での着陸シーンは、大丈夫と思って見ていてもスリリングだ。