この春、公開が一番待ち遠しかった映画といえば、私にとっては『デューン 砂の惑星PART2』だ。待ち遠しさが高じて『PART1』の特別映像付きIMAX上映に行ってしまったくらいだ。この作品ほど大スクリーンで、砂漠の熱風に包まれて見るのにふさわしい映画はない。
では、2024年3月15日(金)に公開が迫った『PART2』公開を前に、『砂の惑星』前史をざっとおさらいしておこう。
「砂の惑星」映像化の険しい道
原作はフランク・ハーバート(1920-1986)が1965年に発表した「デューン 砂の惑星」(ハヤカワ文庫SF)で、世界中で最も読まれたSF小説の一つと言われる。ハーバートは1985年までにシリーズ6作を書き上げ、翌年他界した。その後シリーズは息子ブライアン・ハーバートとケヴィン・J・アンダースンによって書き継がれている。
ドゥニ・ヴィルヌーヴの映画化はシリーズ1作目「砂の惑星」をPART1とPART2に分けたもの。噂によれば、シリーズ2作目「砂漠の救世主」を『PART3』として映画化する構想があるというが、実現するかどうかは定かではない。
SF小説「砂の惑星」は発表以後、映像化が何度も企てられた。私が知る限り2作ある。最初は『エル・トポ』(1969年)で知られるチリの奇才アレハンドロ・ホドロフスキーで、1975年のこと。その顛末を2013年にフランク・パヴィッチが『ホドロフスキーのDUNE』というとびきり面白いドキュメンタリーにしている。
特撮にダグラス・トランブル、特殊効果にダン・オバノン、セット・デザインにH・R・ギーガー、そしてオーソン・ウェルズ、サルバドール・ダリ、ミック・ジャガーまで出演するという驚きの『砂の惑星』実写映画化は、当然のことながら資金繰りがうまく行いかずに頓挫。ホドロフスキーが関係者に配るために20冊ほど作った分厚い絵コンテ集(作画はフランスのバンド・デシネ作家メビウス)だけが残った。2021年、そのうちの1冊がフランスのクリスティーズで競売にかけられ、266万ユーロ(当時のレートで約3億4千万円)で落札されたという驚きの逸話もある。
続いて、1984年にイタリアの伝説的プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスが『エレファント・マン』(1980年)で世界的な注目を集めたばかりのデヴィッド・リンチを監督にして映画化。こちらは実現し、映画『デューン/砂の惑星』となった。
しかし、大幅にカットされたバージョンで公開されたためか、不評に終わる。私はリンチも主演のカイル・マクラクランも大好きだったので楽しんで見たのだが、原作ファンには物足りなかったかもしれない。その後、アメリカのケーブルTV局<SYFY>によるテレビシリーズ化を経て、今回のヴィルヌーヴによる映画化となる。
『デューン 砂の惑星PART2』
砂の惑星デューンをめぐるアトレイデス家とハルコンネン家の壮絶な宇宙戦争が勃発!
ハルコンネン家の策略により、アトレイデス家は全滅。しかし、最愛の父とすべてを失うも、後継者ポールは生きていた。
ポールは愛する砂漠の民チャニと心を通わせ、その絆は、彼を救世主としての運命に導いていく。
一方で、ハルコンネン家は宇宙を統べる皇帝と連携し、その力を増していく。
そして、遂に復讐の時――。
未来の希望を取り戻すため、ポールたちの全宇宙を巻き込む最終決戦が始まる。
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
撮影:グリーグ・フレイザー
出演:ティモシー・シャラメ、ゼンデイヤ、レベッカ・ファーガソン、ジョシュ・ブローリン、オースティン・バトラー、フローレンス・ピュー、デイヴ・バウティスタ、クリストファー・ウォーケン、レア・セドゥ、ステラン・スカルスガルド、シャーロット・ランプリング、ハビエル・バルデム
制作年: | 2024 |
---|
2024年3月15日(金)より全国公開