自分の記憶にぽっかり発生した“空白の時間”って、怖くないですか?
あなたはお酒に酔いすぎて記憶をなくしたこと、ありますか? なければそれに越したことはありませんが、もし身に覚えがある場合は、記憶がない間どう過ごしていたんだろう……と不安になったことでしょう。
そんなとき、デン! と構えていられるでしょうか? うっすら甦る記憶を頼りに、その晩のあらましを推測したり、あるいは居合わせた友達にたずねたりして、ホッとしたりゾッとしたり、なんてことが多少なりともあるんじゃないかと思います。
徹底したルールを設けて、1つの体を共有しようとする2つの人格
映画『ジョナサン -ふたつの顔の男-』は、アンセル・エルゴート演じる2つの人格を持つ男が主人公。昼と夜で1日を2等分するかたちで人格を入れ替え、一方が目覚めている間は、もう片方は意識が全くないというお話です。もし、そんな状況に自分がなったらどうするだろう……と妄想したところで、冒頭の“お酒の話”が頭に浮かびました。例えば大失態をやらかしてしまったら、もう繰り返さないように飲む量を減らす努力をしたり、たくさん飲みそうな日は見張り役として信頼できる友人を連れていったりするでしょう。対策は大事です。
本作では“平穏な日常生活”を送るべく、2つの人格がお互いの行動にいくつかのルールを設け、毎日自分の意識がなくなる前に相手へのビデオメッセージを残し、その日の自分に起こった出来事を報告し合います。なるほど合理的ではあるのですが、異なる意思を持った人格が1つの体を共有しているのですから、お互いが望むように行動し合うのが簡単でないことは想像に難くありません。実際、ちょっとした出来事から2人の関係には“ほころび”が生じてしまいます。
いわゆるNetflix的な質感の“今っぽい”SF(少し不思議)作品
監督のビル・オリヴァーにとっては、本作が初の長編になるとのこと。今っぽく言うと“Netflix的な質感”というか、映像には変なクセがなく音も洗練されていて、アンビエント的なSEがたまに聞こえてくるのが印象に残るくらい。何年か後に観たら「すごく2018~2019年っぽい!」なんて感じるんじゃないかな? と思いながら観賞しました。
いわゆる「世にも奇妙な物語」やNetflixの「ブラック・ミラー」のような、“あり得ないとは言い切れない”絶妙なSF(少し不思議)風味の作品が好きな方は、ぜひ映画館でじっくり堪能してみては。
文:川辺素
『ジョナサン -ふたつの顔の男-』は2019年6月21日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
https://www.youtube.com/watch?v=8hoSuba1MxY
Presented by プレシディオ
『ジョナサン -ふたつの顔の男-』
“午前7時と午後7時”に切り替わる、ふたつの異なる人格。すべては完璧にコントロールされているはずだった…。観る者を翻弄する、脳<ノー>コントロール・スリラー。
制作年: | 2018 |
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監督: | |
出演: |