億万長者になった男、若かりし日の友情と再会
オンライン・ポーカーゲームの開発で莫大な富を得た億万長者ジェイク(ラッセル・クロウ)。彼は、長らく疎遠だった幼なじみを自身の邸宅に招待し、大金を懸けたポーカーゲームを開催しようと提案する。最初は昔話に花を咲かせていた参加者たちだったが、いつしか冷や汗が流れ出し、発熱と吐き気に襲われてしまう。
そこでジェイクはなんと、「毒を盛った」と告げる。ゲームが進むにつれて見えてくる彼らの秘密とジェイクの関係。そこに予定外の侵入者まで現れ、事態は収拾不可能なパニックに陥っていく――。
脂汗必至な本作だが、まずは少年たちの賭けポーカーから幕を開ける。まるで青春映画のワンシーンのようで、無軌道な若者たちのじんわりとした友情を観客に印象づける。
クロウが演じる主人公の名はジェイク・フォーリー。57才、職業はギャンブラー(自称)。少年時代から現在まで、やや強引ながら冒頭で自己紹介させ、彼の不穏な行き先も暗示してしまう。
10年前に妻を亡くし、娘が一人。再婚し若い妻もいる。生活に不自由はないはずのジェイクだが、常に脅迫的な何かにとらわれているらしい。タイトルにあるようにポーカーは人生のメタファーのようで、本作の大きなテーマにもなってはいるものの、ゲームのルールに詳しくなくても鑑賞に支障はないので予習の必要はナシだ。
リアム・ヘムズワースら豪州フレンズも出演
たびたび回想を差し込む演出は紛らわしくもあり、だが登場人物たちが過去~現在の“何か”にとらわれていることを匂わせる。しかも、我々がジェイクの真意を掴みかねているうちに、ある強盗計画が同時進行。約1時間半の上映時間のうち半分を過ぎても全貌が見えず、どこにヒントがあるのか? とジェイクたちの言動をじっと注視することになる。
むっつりクロウの独壇場から一転、ラストに向かってハードな“閉鎖空間アクション”が展開する。とはいえ『アイアン・フィスト』(2012年)で信を深めたRZAをオイシい役どころに配し、年齢差を誤魔化すための老けメイクを施されたリアム・ヘムズワースや、その兄クリヘムの妻であるエルサ・パタキーなど地元オーストラリア関連俳優の起用などもクロウらしく、なんだか安心して観ていられるから不思議。
クロウのドスの利いたナレーションによるラストのメッセージは亡き父の言葉だそうだが、過去にいくつかのゴタゴタを巻き起こしたことで厄介者のイメージが付いてしまったた自身を顧みている部分もあるのかも……? ともあれ今後、本格的に映画製作に乗り出す可能性があるクロウの記念すべき2作目として、観ておいて損はない作品だ。
『ポーカー・フェイス/裏切りのカード』は2024年3月1日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開