スパイスは“人間性”
深夜のガソリンスタンドで女性が謎の狙撃手に襲われる……。
「ああ、ホラー映画でよくある話だなあ」。
『ハンテッド 狩られる夜』に抱く最初の印象は、そんなものかもしれない。
本作は2015年制作のスペイン映画『シャドウ・スナイパー(英題:Night of the Rat)』のリメイクであり、このオリジナルはまさにその印象そのままの作品だ。
『シャドウ・スナイパー』の主人公は男性で、恋人と立ち寄ったガソリンスタンドで狙撃手に襲われる――といったもの。犯人との会話もなく、災厄のガソリンスタンドに立ち寄る人々との交流も無い。彼らは一方的に撃ち殺され、それを見ていることしかできない男が酷い目に遭う80分。メッセージ性も皆無。見終わった直後に内容を忘れてしまうような、70年代的なエクスプロイテーション・ホラーだった。
しかし『ハンテッド 狩られる夜』は、そんな『シャドウ・スナイパー』の古くさいプロットに激辛スパイスを振りかけ、設定だけ拝借した全く別の緊張感の溢れる作品となっている。その激辛スパイスとは何か? “人間性”である。映画には欠かせない要素にも関わらず、ホラー映画において蔑ろにされがちなこのスパイスをぶっかけることにより、本作は終始、観客に歯を食いしばることを強いる。
『ハンテッド 狩られる夜』
製薬会社フィンザーでSNSマーケティングを担当するアリスは、不倫相手の同僚との密会後、夫の元へと深夜に家路を急いでいた。道中人里離れたガソリンスタンドに立ち寄ったが店内に従業員の姿はない。仕方なく店を出ようとしたその時、突然どこからか銃弾が飛んできて腕を負傷、スマートフォンも撃ち壊されてしまう。彼女が戻らないのを心配し、店内に入ってきた不倫相手も射殺され、パニックに陥るアリス。なぜ彼女は狙われるのか…?助けを呼ぶ手段もない、逃げ場もない絶体絶命の状況の中、目的の分からない残虐無比なスナイパーとの悪夢のような一夜が幕を開ける…。
監督:フランク・カルフン
製作:アレクサンドル・アジャ
出演:カミーユ・ロウ
制作年: | 2022 |
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2024年2月23日(金・祝)よりシネマート新宿ほか全国公開