半世紀前の感覚をタイムカプセルのように閉じ込めた映画たち
前回のこのコラムで、1962年デビューのローリング・ストーンズとビートルズが2023年の時点でまだバリバリの現役、という話をした。半世紀前というと、若い読者の方には想像もつかないと思うけれど、その頃注目の若手映画作家だった人で今も活躍している人がいる一方で、その頃が旬だったスターで惜しまれつつ亡くなった人もいて、50年という時の重みを感じる。
そして2024年のいま、半世紀前=1974年の映画を見直してみると、その当時に何が熱く盛り上がっていたのか、何か画期的だったのかなどが、タイムカプセルのように甦るのだ! 今回は、そんな“1974年の映画たち”という観点で、いくつかの作品をご紹介したい。
『燃えよドラゴン』に始まるカンフー映画ブームはハリウッドをも席巻
1974年の最大のブームというのは、言わずと知れた“カンフー映画ブーム”で、その火付け役となったのが1974年のお正月映画として前年暮れに公開された『燃えよドラゴン』なのは言うまでもない。“怪鳥音”と呼ばれた「アチョー!」という叫び声と、上半身裸でヌンチャクを振り回すリーの勇姿は当時の小学生ならばみな真似をしたもの。
実は主演のブルース・リーはこの作品の日本公開5か月前に急死してしまっており、葬儀にリーの弟子であったスティーヴ・マックイーン、ジェームズ・コバーンらハリウッドの超ビッグスターらが参列したことで、そのミステリアスな死の印象と共に、いかに偉大な俳優だったのかという想像を掻き立てられたのだ。
『燃えよドラゴン』は香港のコンコルド・プロとアメリカのワーナー・ブラザースの合作で、リーとしては初めての英語圏向けの作品だったが、その後、リー主演の香港映画も続々と日本公開され、カンフー映画は一大ブームの様相を呈した。
この年にはまた、『007』シリーズの新作『007/黄金銃を持つ男』が12月に公開されているが、舞台をマカオに設定し、カンフー(空手)の達人の女子高生二人にボンドがびっくりさせられる、というシーンを取り入れており、“カンフー映画ブーム”が世界規模の現象なのを実感させられた!
Today I learned... One of the school brats in James Bond: The Man With The Golden Gun, is also the landlady in Kung Fu Hustle. pic.twitter.com/liM43WMGAy
— Catch Wrestling U (@CatchWrestling) April 30, 2022