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アカデミー賞有力!『哀れなるものたち』 偏見も羞恥心もない女性を熱演エマ・ストーン&ヨルゴス・ランティモス監督インタビュー

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ライター:#佐藤久理子
アカデミー賞有力!『哀れなるものたち』 偏見も羞恥心もない女性を熱演エマ・ストーン&ヨルゴス・ランティモス監督インタビュー
『哀れなるものたち』©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
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「ウェディング・ドレスを着たときは泣きそうになった」

―こんな作品は観たことがないというほど、セットや衣裳に至るまでアートワークが芸術的でしたが、どのようなコンセプトを考えられたのでしょうか。

ヨルゴス:ベラが住む世界は、たんに現実的なものではだめ。レトロな時代であると同時に、おとぎ話や物事のメタファーとなるようなものを目指したんだ。さらに未来的なところや空想的な要素も入り混じったものにしたかった。最初はロケをするというアイディアも考えたけれど、結局セットを作り込むことにしたよ。

『哀れなるものたち』©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

ヨルゴス:もうひとつ考えたのは、フェデリコ・フェリーニやマイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガーがかつて撮影していたような方法で古風な映画をつくること。それでロイ・アンダーソン監督(『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』[1970年]、『さよなら、人類 』[2014年]ほか)のようにスタジオでセットを作り上げることにした。もっとも、本作の世界はあまりに広大ですべてのセットを作り上げることはできなかったので、たとえば船のシーンにおける海や空はLEDスクリーンを使った。

エマ:すべてのセットを歩くのに30分はかかるような広大さで、圧倒された。

『哀れなるものたち』©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

―衣裳も時代性を超越した、とても大胆なものでしたね。

エマ:衣裳デザインのホリー・ワディントンは素晴らしい仕事をしてくれた。彼女が使用したカラーパレットや素材は、すべて深く考え抜かれたもの。ベラが経験したことやどのように成長しているかを表現している。俳優は素晴らしい衣裳に助けられるものだけど、とくにベラのウェディング・ドレスを着たときは泣きそうになった。薄く繊細でありながらパワフル。わたしがセックスの本質を脆さと自信が溶け合ったものだと考えているのと似て、あのドレスはわたしにとってそれを象徴していた。とてもメッセージ性の強いものだった。

―プロデューサーも務めようと思った理由は?

エマ:わたしにとっては自然な成り行きだし、これまでやったことがないことに挑戦できるならやってみたいと思った。ヨルゴスの世界が大好きだし、映画監督としてとても尊敬している。そんな彼からプロデューサーもやらないかと言われて、わたしとしては恵まれているとしか言いようがない。でも、それで俳優と監督としての関係が何か変わったとは思わない。

ヨルゴス:彼女とはこの企画について2017年から話をしてきた。本当に入れこんでくれたし、僕にとっても彼女がプロデュースをするのは、とても自然なことに思えたんだ。

『哀れなるものたち』©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

「この物語ではすべての女性たちがとても重要」

―ベラと出会う男性は、それぞれのやり方で彼女を支配しようとしますが、ベラはそれをはねつけていきます。きわめて現代的でフェミニストな物語と言えるのでは?

エマ:その通り。わたしにとってこの役を演じることは、女性であること、勇敢で自由であることを受け入れ、解き放つことのように感じた。社会的には「みんなわたしのことを好きになってくれるだろうか」と考えがちだけど、彼女はそんなことは考えない。男性に対して反発するというより、すべてを経験したいと思う、好奇心と自由であることの表れだと思う。

ヨルゴス:ベラはもちろん、この物語ではすべての女性たちがとても重要だ。彼女たちが、ベラの自立の旅に大きな影響を与えていくのだから。

『哀れなるものたち』©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

取材・文:佐藤久理子

『哀れなるものたち』は2024年1月26日(金)より全国公開

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『哀れなるものたち』

自ら命を絶った不幸な若き女性ベラ(エマ・ストーン)が、天才外科医ゴッドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)の手によって奇跡的に蘇生することから始まる。蘇ったベラは“世界を自分の目で見たい”という強い好奇心に導かれ、放蕩者の弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)の誘いに乗り、壮大な大陸横断の冒険の旅へ出ていく。やがて貪欲に世界を吸収していくベラは、平等と自由を知り、時代の偏見から解き放たれていくのだった。

監督・脚本・製作:ヨルゴス・ランティモス
出演:エマ・ストーン マーク・ラファロ ウィレム・デフォー ラミー・ユセフ ほか

制作年: 2023