新世代のJホラー誕生
2021年に発足した、ホラージャンルに絞った短編作品の一般公募フィルムコンペティション<日本ホラー映画大賞>。その第1回大賞受賞作を新鋭・下津優太監督が長編映画化した『みなに幸あれ』が現在公開中だ。
Netflixシリーズ『幽☆遊☆白書』等、出演作が絶えない古川琴音が主演を務め、『呪怨』シリーズ(1999年~)の清水崇が総合プロデュースを手掛けた本作。社会問題をシニカルに混ぜ込みつつ、底冷えのする“わけのわからない恐怖”が畳みかける凶暴な怪作に仕上がっている。
『リング』(1998年)や『呪怨』、或いは『回路』(2000年)や『黒い家』(1999年)、『着信アリ』(2004年)に『オーディション』(2000年)……90年代後半からゼロ年代初期にかけて、良質な国産ホラーが次々と世に放たれ、<Jホラー>という一ジャンルを築き上げた。近年でも、コロナ禍初期の激動の中でも堅実にヒットした『犬鳴村』(2019年)をはじめとする「恐怖の村」シリーズや『きさらぎ駅』(2022年)、『リゾートバイト』(2023年)等、勢いのあるホラーはあれど、個人的な感覚としては国産ホラー(特に大きめの)はハリウッド製のアトラクションホラーに沿う形となり、娯楽性を重視した結果、芸術性・作家性・異常性は薄まってきた印象だ(むしろそうした“ヤバみ”は、『哭声/コクソン』[2016年]、『女神の継承』[2021年]、『呪詛』[2022年]、『哭悲/THE SADNESS』[2021年]といったアジアンホラーや、『LAMB/ラム』[2021年]、『MEN/同じ顔の男たち』[2022年]等のA24が目を付けた作品群に感じるように)。
そんななかで、Jホラーの立役者の一人であるKADOKAWAが次なるホラー映画作家を発掘・育成できるかは注視したいところだったが――『みなに幸あれ』は、そうした期待に十二分に応えてくれる一作となった。