ユ・オソンとチャン・ヒョクが血で血を洗う抗争で正面衝突
主人公のキルソクを演じるのはユ・オソン。オソンは『チング』シリーズ(2001年ほか)で知られるが、個人的には『アタック・ザ・ガス・ステーション!』(1999年)の知恵が足りない大男ムデポ役や、ボクシング映画『チャンピオン』(2002年)も印象的な俳優。本作では重厚なキルソクを貫禄たっぷりに演じている。
対するミンソク役はチャン・ヒョク。『火山高』(2001年)で映画主演デビューし、大ヒットドラマ『チュノ ~推奴~』(2010年)に主演。『僕の彼女を紹介します』(2004年)などのラブコメも得意とするが、やはりボクシングで鍛えた身体能力を活かしたアクションがとにかく上手い俳優である。特に本作のクライマックスでの1対10の戦いでは、その本領を完全発揮。格闘技然としていないアクションシーンで、まるで野生の獣のような戦いっぷりにドギモを抜かれること請け合いだ。
大量の血を吸ったリゾート施設の空虚な風景
そんな本作のテーマは「時代の変化」。海水浴場でしかなかったカンヌンが、平昌オリンピックを機に大規模開発が始まり、街にはドラッグがあふれ始める。ヤクザの役割も、街の地回り的なもので刃物も使わなかったが、別都市の組織の参入で仁義もへったくれもない血で血を洗う抗争に突入していく。
「目には目を、歯には歯を」でエスカレートしていく抗争の中で、昔かたぎのキルソクは大きな判断を迫られることになる。これはカンヌンに生まれ育ったユン・ヨンビン監督の、変わりゆく故郷への感慨が強く影響していると思われる。映画のラスト、リゾート施設の空虚な風景を見ながら、登場人物は、そして映画を観てきた我々は何を思うだろうか? ということを問われるような作品なのである。
文:高橋ターヤン
『狼たちの墓標』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2023年1月放送
『狼たちの墓標』
平昌五輪直前。大規模開発に湧く韓国屈指のビーチリゾート地・江陵。この地を牛耳る組織の幹部キルソクは地元警察からも一目置かれ、義理と秩序を重んじる彼のおかげで街は安定していた。そんなキルソクの前に巨大な開発利権を狙う新勢力と、目的のためには手段を選ばない男ミンソクが立ちはだかる。
監督・脚本:ユン・ヨンビン
出演:ユ・オソン チャン・ヒョク パク・ソングン
制作年: | 2021 |
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CS映画専門チャンネル ムービープラスで2023年1月放送