海の男たちのドラマ
2000年8月12日、バレンツ海で演習中だったロシア海軍の原子力潜水艦<クルスク>が艦内爆発を起こして沈没、乗員118名全員が死亡しました。けれども後日の捜索により、海底に着底後も23名が艦の最後部の第9区画に避難し救出を待ち続けていたことが判明したのです。
CS映画専門チャンネル ムービープラスで1~2月に放送される『潜水艦クルスクの生存者たち』(2018年)は、この23名に焦点を当てた作品です。もちろん、この23名も亡くなっているのですから、艦内での言動はすべてフィクションです。
けれども、区画指揮士官のコレスニコフ大尉(映画ではマティアス・スーナールツ演じるアヴラン大尉)が、第9区画に避難した将兵の氏名と状況をメモ帳に書き記していました。また調査によって第9区画にも1メートル程度の浸水があったこと、酸素発生用化学カートリッジが原因の火災が起きたこと、その火災後も何人かが生存していたこと、などが事実として判明しているのです。
「俺、結婚するんだ」フラグに涙
それらを物語のピースとして嵌め込みながら、苛酷な状況に翻弄されつつも団結し希望を掴もうとする者たちの人間ドラマに仕上げているのは、『偽りなき者』(2012年)や『アナザーラウンド』(2020年)のトマス・ヴィンターベア監督ならでは。とくに本作では乗員たちの「同僚」や「戦友」を超えた紐帯、そして乗員の家族たちの絆の強さが熱く、そして絶妙の距離感をもって描かれます。
冒頭の、クルスク乗員が仲間の結婚式のためにお金を出し合い、海軍基地の空き室で簡素ながら心温まるパーティを開くシーンは~この後、男たちが全員死んでしまうことが分かっているだけに~胸を打つものがあります。また、親子の物語を完結させる小道具としての腕時計の使い方も見事です。
これ以上はネタバレになってしまうので、ここからは潜水艦について書いてみましょう。
『潜水艦クルスクの生存者たち』
艦員118名を乗せて、軍事演習のために出航した原子力潜水艦クルスク。だが艦内の魚雷が突然、暴発。司令官ミハイルは脱出を模索するが、艦体は北極海の海底まで沈み、わずか23名が生き残った。一方、この事故を察知した英国の海軍准将デイヴィッドは救援を表明するが……。
監督:トマス・ヴィンターベア
出演:マティアス・スーナールツ レア・セドゥ
マックス・フォン・シドー コリン・ファース
制作年: | 2018 |
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CS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年1~2月放送