グザヴィエ・ドラン 最新作『マティアスとマクシム』で新章に突入!

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ライター:#まつかわゆま
グザヴィエ・ドラン 最新作『マティアスとマクシム』で新章に突入!
2009年に『マイ・マザー』で、カンヌ映画祭<監督週間部門>に選ばれカンヌデビュー。以来、ほとんどの作品がカンヌで上映されるというカンヌの申し子、秘蔵っ子である。審査員賞、グランプリと、駆け上り、コンペ審査員も務めている。そんなドラン最新作『マティアスとマクシム(原題)』の記者会見が開かれた。

同世代グループの友情に感じた想いを映画化

「30歳になって、フィルムメイカーとしても俳優としても、新しいチャプターに入ろうと思った。ペースを調整して健康的に、でも作家としては必死になって作るって感じにね。今回はその移行期の作品だと思っている。今までよりも、ニュートラルで、優しくて柔らかなタッチで撮れたらと思って作った。

そこでモチーフにしたのが、同世代の男の子たちグループの友情。同じ年頃で子供の頃からつるんでいて、気兼ねも遠慮もない仲間たち。その友情を描いて見たいと思ったんだ。かれらはいつもじゃれ合っていて、ふれあいやキスやケンカも遊びのうち。セクシャリティについての配慮なんてない。ヘテロが当然で、自分たちの間にはそんなものは存在しないと思っている男の「子」たちなんだ。幾つになっても、ね。
撮影は楽しかったよ。何回もリハーサルをして、キャストたちのやりとりがナチュラルにリアルになるよう、即興を取り入れ、セリフも変えていった。リハーサル自体がパーティみたいだった」

見えざる壁が主人公の恋心の前に立ちはだかる

『マティアスとマクシム(原題)』©Shayne Laverdiere

ドラン自らが演じる主人公マティアスは顔に痣のある青年。仲間の一人マクシムに密かに恋しているのだが、友情関係を壊すことを恐れて想いを隠してきた。しかし、マティアスはオーストラリアに行くことになり、仲間たちとの別れが近づく…

「マティアスはたくさんのタトゥーを入れている。それは彼のアイデンティティーを示すものだけれど、クラスも上で保守的なマックスを遠ざけるものにもなっている。このグループは世代は同じなんだがクラスはまちまちなんだよね。舞台はいつものようにケベックなんだけれど、僕ら世代のケベック人はフランス語を主に使い英語が苦手な人もいるんだ。それは教育の差にもつながっている。このグループは子どもの頃から仲良しで、大きくなるにつれてそのクラスの差というのがはっきりしてきているんだよね」
その見えざる壁がマティアスの恋心の前に立ちはだかる。マクシムは大学を出てエリート街道を歩んでいる。婚約者もいて結婚も決まっている。一方のマティアスは定職もなく母の介護をしているが、母は出来のいい兄の方を愛していてマティアスには冷たい。
ドランの作品には常に愛しすぎるほど息子を愛する母親が出てくる。こんなに母親に冷たくされる役はドランにとって初めてだ。といっても、脚本を書いているのはドラン自身なのだが。
「今回は母親は主人公たちの物語には入れないことにした。今回、母親はテーマではないんだよね。母親はフィギュアにすぎない」

『マティアスとマクシム(原題)』©Shayne Laverdiere

30歳になったドランは、今の同世代の若者たちにこんなことを感じているという
「時代は変わっていると思うのは、今の若い子たちにとって、ジェンダーやセクシャリティという問題はなくて当たり前になりつつあること。僕の少年時代よりももっとリベラルだしモダンでオープンなんだ。ただ残っているのは「男とは何か」というマスキュラニティ信仰で、まぁこれは「女らしさ」と言うのもそうだと思うけど、毒でしかないよね。どんどん変わっているけれど、もっとセクシャリティについてフリーになればいいと思うよ」

文・まつかわゆま

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