新婚のタランティーノ、いつもに増してハイテンション!ディカプリオ×ブラピ共演というド派手な最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』について語った。
映画オタク タランティーノらしい、ハリウッド愛あふれるコメディ
『パルプ・フィクション』のパルム・ドール受賞から25年の今年、カンヌ映画祭が待っていたクエンティン・タランティーノ監督の新作で、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットのダブル主演。派手なことでは今年の目玉と言える作品で、前日の公式上映も長蛇の列の大騒ぎになっていた。当然、1時間以上前から記者会見場の入り口には長い長い列ができ、フロアは人で溢れ、辛抱強く会見場のオープンを待っていた。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』はタランティーノ監督のハリウッド愛に溢れたコメディである。60年代テレビ西部劇スターであるリック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)と、彼のスタントマンを務めるクリフ・ブース(ブラッド・ピット)が、1969年というハリウッドにとってタフな年を乗り切ろうとする物語だ。
『イージー・ライダー』『真夜中のカーボーイ』『明日に向って撃て!』が公開されたのが69年…そして前年には『ローズマリーの赤ちゃん』でポーランドで育ったロマン・ポランスキーが大ヒットを飛ばしハリウッドの一員になり、新進女優のシャロン・テートと結婚する。本作ではシャロン役をマーゴット・ロビーが演じている。他にもティム・ロス、カート・ラッセルといったタランティーノ・ファミリーの俳優たちが大挙カメオ出演しているのも楽しい。
女優シャロン・テートがカルト集団に殺害された事件が題材
今作の物語の軸となるシャロン・テート殺人事件に何故興味を持ったのかと聞かれたタランティーノは「シャロン・テートの事件について、多くの資料を使ってリサーチしたんだが、結局、なぜチャールズ・マンソンとそのファミリーがあの事件を起こしたのかは、今も理解できないんだ。そもそもあの若い子たちがなぜカルト集団“マンソン・ファミリー”になっていったのかもわからない。そこに興味を惹かれたんだ」と語る。
シャロン・テート殺人事件とは、ロマン・ポランスキー監督の妻で妊娠中の女優シャロンが、1969年にカルト集団“マンソン・ファミリー”に惨殺された事件である。
テレビシリーズが打ち切りになった西部劇スター・リックとスタントマン・クリフの物語と、テイト事件がどう絡んでいくか。タランティーノがどう物語を作り上げたかは、劇場公開までのお楽しみだ。
というのも、これ以上のストーリー紹介はご法度。公式上映ではフレモー総代表が、プレス試写ではフランス語字幕を担当したカンヌの名物司会者アンリ・べアールが「ネタバレ禁止」アナウンスをわざわざするほどである。
タランティーノは「ロマン・ポランスキーには何回か会ったことがある。69年当時も、今も素晴らしい映画作家だと思うよ。『ローズマリーの赤ちゃん』で800万ドル稼いだって教えてくれた(笑)」と、いつもながらハイ・テンション。今回は結婚後初めてのカンヌ入りであることも影響しているのかもしれない。
「みんな知っていると思うけど、結婚したんだ。今まで、何でしなかったのかと言うと、パーフェクトガールを探していたからさ。そして、彼女は今僕の目の前に座っている。愛してるよ!」
プレスも祝福の拍手を送る。
そして、映画オタクのタランティーノらしい映画愛たっぷりの作品であることを明かしてくれた。「この作品は、映画産業界のアウトサイダーたちへのラブ・ストーリーなんだ。テレビやB級映画を作っていて、決してアーティストとは呼ばれなかった人達へのラブレター、だと思う。ハリウッドだけじゃなく、例えばイタリアでジャンク映画ばかり作っていたと思われているセルジオ・コルブッチ監督が僕は好きで、『ジャンゴ 繋がれざる者』は彼にオマージュを捧げた作品なんだけれど、今回落ち目の西部劇スターが起死回生の一作として嫌々ながらスパゲッティ・ウエスタンに出るというエピソードなどはコルブッチを意識したものなんだ。どこの国でも映画産業にはアウトサイダーがいる。そんな彼らに捧げる物語、それが『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』なんだよね」
文:まつかわゆま
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』 CS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年6月放送