アクション監督・谷垣健治が語る!ドニー・イェン最新作『シャクラ』の“説得力”とは?「“気功”の表現にも嘘くささを感じさせないのがドニー」

「ドニーだったら“風”を吹かせるよな、と思わせてくれる」
現代のアクションではCGを追加するのが当然のようになっている。完成した状態のビジョンを共有するのも大事で、だからプリヴィズ(※事前イメージ映像)も作られるわけだ。もちろんドニー作品にもプリヴィズはある。しかし、それは絶対的なものではないと谷垣さんは言う。
プリヴィズはもちろんプランを各部署で共有する上で大切です。ただプリヴィズは優れたスタントマンたちが、足場もいい練習場で動きやすい衣装で動く、そんな環境で作られるもの。不測の事態が連発する現場とは違うんですよ。プリヴィズを目指して撮影しても、どうしても80点くらいのものになってしまう。だから、そことは違うベクトルのことを目指さないといけないとは思いますね。

『シャクラ』メイキング © 2023 Wishart Interactive Entertainment Co., Ltd. All Rights Reserved
序盤、中盤、クライマックスと、それぞれシチュエーション、テイストの違うアクションが用意されている『シャクラ』。クライマックスの撮影は時間がかかり、オープンセットの使用期限がきて何度も撮影場所を変え、そのたびにプランを変え、アイディアを絞った。劇中で上階から下階、屋外と移動しながら闘いが続くのは、そんな苦心のたまもの。結果として、目まぐるしく状況が変わる新鮮なアクションになった。

『シャクラ』メイキング © 2023 Wishart Interactive Entertainment Co., Ltd. All Rights Reserved
それにしても、だ。詠春拳のイップ・マンを演じても、MMA(総合格闘技)スタイルで闘う現代の刑事役でも、そして今回のような剣を使う武侠アクションでも、ドニーは抜群にカッコいい。ファイトスタイルが変わっても、軸にあるものは変わらないような。それを谷垣さんは、ドニー・イェンという役者の持つ「説得力」だという。
この『シャクラ』では、気功の表現で手からエフェクトがバンバン出る。でも、そこに嘘くささを感じさせないのがドニーなんです。“まあ、ドニーだったら出せるんじゃない?”と思わせてくれる。闘いの最中にポーズをバッと決める場面もドニーらしかったでしょ。あれもその場で直感的に出たものです。「どうやろうかな。こうか?」とやったら、さすがのカッコよさで。その場に風が吹いたような感じがしましたね。風が“見えた”というか。だから、予定になかった風のエフェクトを入れたんです。
ポーズひとつで現場に風を吹かせる漢、ドニー・イェン。ぜひ劇場で“スクリーンに風が吹く”瞬間を確認してほしい。
取材・文:橋本宗洋
『シャクラ』は2024年1月5日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
『シャクラ』
宋代の中国。丐幇(かいほう)の幇主・喬峯(きょうほう/ドニー・イェン)は誰からも慕われる英雄的な存在だった。だがある日、何者かに副幇の馬が殺害され、その犯人に仕立て上げられてしまう。しかも自分が漢民族ではなく契丹人であるという出自まで明かされ丐幇を追放される。自らを陥れた人間を探し出し、さらに自身の出生の真実をつきとめるため喬峯は旅にでる。しかし、彼の行く手には更なる罠が仕掛けられていた! 武林最強の技、「降龍十八掌」を使い、襲い来る刺客たちをなぎ倒す喬峯。果たして彼は黒幕を突き止め復讐を果たすことが出来るのか!?
監督:ドニー・イェン カム・カーワイ
アクション監督:谷垣健治
出演:ドニー・イェン
チェン・ユーチー リウ・ヤースー
ウー・ユエ チョン・シウファイ
制作年: | 2023 |
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2024年1月5日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー