「最初と最後は観客をスクリーンに釘付けにしたかった」
―バイオレンス描写に対してはどのような姿勢で望まれたのでしょうか? 私は(実際に頭を机にぶつけながら)こうやってヘイリーが机に頭をぶつけるシーンがショッキングで気に入っているのですが……。
(笑)。君はおかしな人だね。確かに、『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』はバイオレントなシーンはあるけれど、暴力の映画ではないことはご覧の通りさ。でも、やる時はしっかりやりたいと思った。メリハリをつけるため腑に響くようなものをね。だから、メイクアップには凄くこだわった。予告編(海外版)にもある、ヘイリーが暴力に晒されるシーンは本当に手間をかけたよ。とにかく現場で実際にあの描写をやりたかったんだ。だから彼が自分の目を抉り取ろうとする場面は、特殊メイクを使って実際に抉ってもらったんだ。
―今どきプラクティカル(・エフェクト)とは……素晴らしいですね!
だろう? プロデューサーは「ほんとに現場でやらなきゃダメ? CGじゃダメ? 時間もかかるし」なんて言ってきたんだけれど、断固お断りした。実際にやった方がスクリーンで迫力が出るのは間違いないからね!
―こだわりといえば、オープニングのパーティーシーンはワンショットでした。相当な大人数の中、ワンショットを仕上げるのは大変だったと思いますが、いかがでしたか?
あのシーンは一番最後に撮ったんだ。というのは、それだけテクニックを身につけてからじゃないと挑めないと思ったからさ。まず沢山のエキストラが必要だと思って、インスタで募集を掛けたんだよ。そしたら増えすぎちゃって(笑)、バスで何往復したのか覚えてないくらい。結果的には良かったんだけど、撮影の準備が整ったのは午前4時(笑)。それから何テイクも撮ってね、ドアも10枚以上壊したんじゃないかな。鏡もあったし、廊下を曲がらなきゃいけなかったりと、とにかく苦労したよ。
―ラストシーンもワンショットですよね。
うん、最初と最後は観客をスクリーンに釘付けにしたかったから。その点、ワンショットはとても有意義な手法だね。
―逆に、ライリーが霊界に囚われているシーンのようにフラッシュバックもありました。まるで『ヘルレイザー』(1987年)に登場する地獄のような場面で、ホラー雑誌<ファンゴリア>の表紙にも使われましたが、フラッシュバックにした理由は?
本当は2分30秒あったシーンなんだけど、ちょっと酷すぎた(笑)。プロデューサーにも「これ、本当に使いたいの?」と言われたし、実際そのまま使ってしまうとレーティングにも響いてしまうということでフラッシュバックにしたんだ。実際の時間にすると15秒くらいかな?
でも、フレームごとに観てみると本当に酷いことが起こっているんだよ。アイデアとしては「子供に対するあらゆる残酷な責めを行なっている地獄」を描きたかった。そりゃ<ファンゴリア>の表紙にもなるよね(笑)
Dumb Aussie kids F around & find out in TALK TO ME! This feature debut from the Philippou brothers will be THE most talked-about horror film of the year; @suspirialex brings you the inside scoop.
— FANGORIA (@FANGORIA) May 18, 2023
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「とにかく撮れ! 遅いなんてことはない、今からでも撮るんだ!」
―最後の質問になります。YouTubeから長編映画デビューと異例のキャリアアップを果たしたお二人ですが、映画制作を志している人たちに一言お願いします!
今は撮る道具はいくらでもあるよね。「とにかく撮れ!」ってことかな。撮れば撮るほど上達するのは間違いない。失敗したっていいんだ。それは次の糧になるから。僕らは9歳からやってるけど、遅いなんてことはないよ! 今からでも撮るんだ!
―あ、そうだ。私、お二人のYouTubeチャンネル<RackaRacka>の『FBI open up (ORIGINAL)』と『Ronald McDonald』シリーズが大好きです!
君は本当に変なヤツだな(笑)。
――ひょんなことから「90秒憑依チャレンジ」を行なった主人公ミアが遭遇する恐怖を描いた『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』。監督の言う通り、シンプルなプロットだ。
“手”を握り「Talk to me…I let you in」と言うだけで霊に憑依される遊びは、異様な高揚感をもたらす。しかし、行き過ぎた遊びは取り返しのつかない事態を引き起こすのだ。まるで若者が酒の飲み過ぎやドラッグの過剰摂取で振り回されるが如く……。
しかし、人物設定やストーリーテリングの妙は、憑依を酒やドラッグのメタファーとする鑑賞を許さない。母の死を受け入れられない主人公ミア、寂しがる彼女を家族のように慰める友人ジェイド、その弟ライリーに至ってはミアを姉のようにしたっている。そんな彼らの人生が、たった90秒でめちゃくちゃになってしまうのだ。
非常にダークな物語だが、ユーモアも残酷描写もふんだんに盛り込みながら、やりすぎていない。YouTuberである故か、10代の移り気な目を釘付けにする独特のリズムも持ち合わせている。監督いわく「セラピーを受けるかのように、小さな頃に感じた恐怖を脚本に盛り込んでいった」という。誰しもが抱える不安や恐怖、彼らにとっての“恐れ”が本作に盛り込まれているのだ。
ところで、私は冒頭に書いた通り、“手”を握り、監督との90秒憑依チャレンジをしたわけだ。90秒を越えると元に戻れなくなるそうだが、さて……。
取材・文:氏家譲寿(ナマニク)
『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』は2023年12月22日(金)より全国ロードショー
『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』
母を亡くした高校生のミアは、気晴らしに仲間とSNSで話題の「#90秒憑依チャレンジ」に参加してみる。
ミアたちはそのスリルと強烈な快感にのめり込み、チャレンジを繰り返していくが、仲間の1人にミアの母の霊が憑依し——。
監督:ダニー・フィリッポウ マイケル・フィリッポウ
出演:ソフィー・ワイルド ジョー・バード アレクサンドラ・ジェンセン
制作年: | 2023 |
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2023年12月22日(金)より全国ロードショー