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ミリタリー目線で解説!『ナポレオン』激動の成り上がり22年 平民将校から「戦争の天才」と恐れられ皇帝に リドリー・スコット監督×ホアキン・フェニックス主演

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ライター:#大久保義信
ミリタリー目線で解説!『ナポレオン』激動の成り上がり22年 平民将校から「戦争の天才」と恐れられ皇帝に リドリー・スコット監督×ホアキン・フェニックス主演
『ナポレオン』
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ナポレオンの時代

「戦争の天才」と称賛され、同時に恐れられていたナポレオン。その特徴は、徴兵による国民軍・散兵(さんぺい)戦術・大砲の集中運用・戦術の巧妙化・信号(手旗や腕木、灯火)の組織的活用、などです。

散兵とは自律的に戦闘する一人ないし数人単位の銃兵のことです。集団密集隊形で画一的に戦うのが標準戦術だった欧州各国軍は、散兵に翻弄され指揮と隊形が混乱したところを突入してきたナポレオン軍主力に壊滅させられました。

散兵戦術についてはローランド・エメリッヒ監督、メル・ギブソン主演の『パトリオット』(2000年)で~やはり映画的脚色はありますが~描かれています。アメリカ独立戦争における民兵(ミニットマン)の散兵戦術を書物を通して知っていたナポレオンは、自軍にも大胆に取り入れたわけです。

ナポレオンはたいへんな勉強家で、しかも書物から定理を的確に読み取り自家薬篭とする才に長けた人物でした。

実は、徴兵は革命政府が導入した制度で、それが可能だったのにはルイ14世時代の人口増加を背景とした革命の熱気がありました。また砲兵の集中も、1760年代に砲兵監のグリヴォーバルが大砲の標準化を実施していたからこそ実現できたのです。

『ナポレオン』

徹底したワンマン化がもたらしたもの

けれども、ナポレオンは幕僚(スタッフ)の養成はせずに、戦場での状況判断と命令決定は常に自分一人だけで行なっていました。ですから戦場が広域化し組織が巨大化すると、かつてのような臨機応変の戦いができなくなってしまうのです。

加えて欧州列強がナポレオン戦術を学習したことで緒戦の神通力も失われ、いつまでも続く戦争にフランス国民が疲弊し士気も低下~当時の戦争は結局は兵隊の消耗戦でした~、フランスの“財産”を食い潰すようにしてナポレオンは表舞台から退場していくのです。

『ナポレオン』

近世ヨーロッパ陸軍において、歩兵部隊と騎兵部隊の将校は高級貴族によって占められていました。陸戦の主力である歩兵と騎兵は貴族階級の地位そのものだったからです。ただ、砲兵部隊と工兵部隊の将校には平民でも就くことができました。コルシカという辺境の地の出身であるナポレオンが砲兵将校だったということは、彼が平民なみの下級貴族だったことを示しています。

リドリー・スコット監督の『ナポレオン』は女性に対する社会的圧力を炙り出していますが、ナポレオン自身を取り囲んでいた当時の社会制度に目線を配って鑑賞するのも興味深いのではないでしょうか。

『ナポレオン』

文:大久保義信

『ナポレオン』は2023年12月1日(金)より全国公開

ホアキン・フェニックス主演『カモン カモン』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2023年12月放送

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『ナポレオン』

1789年 自由、平等を求めた市民によって始まったフランス革命。マリー・アントワネットは斬首刑に処され、国内の混乱が続く中、天才的な軍事戦略で諸外国から国を守り 皇帝にまで上り詰めた英雄ナポレオン。最愛の妻ジョゼフィーヌとの奇妙な愛憎関係の中で、フランスの最高権力を手に何十万人の命を奪う幾多の戦争を次々と仕掛けていく。冷酷非道かつ怪物的カリスマ性をもって、ヨーロッパ大陸を勢力下に収めていくが――。フランスを<守る>ための戦いが、いつしか侵略、そして<征服>へと向かっていく。

監督・製作:リドリー・スコット
脚本:デヴィッド・スカルパ

出演:ホアキン・フェニックス ヴァネッサ・カービー タハール・ラヒム

制作年: 2023