苦い批評家ウケに反して観客には愛された『2』&『3』
香港でのオールロケーションを行った『ラッシュアワー2』。休暇で香港を訪れたカーター刑事が、香港のアメリカ領事館爆破事件をリー刑事と共に追う。そこに謎のカンフーガール、フーリーが現れ、さらにリー刑事の父親が殺される原因となったリッキー・タンの関与が浮上する……という物語(スティーブン・ソダーバーグ映画で頭角を現したばかりのドン・チードルが謎の雀荘支配人としてジャッキーとカンフー対決するのが楽しい)。
Jackie Chan, Don Cheadle & Chris Tucker appear in Rush Hour 2 pic.twitter.com/laBSvdmSvN
— Frame Found (@framefound) December 29, 2021
この続編は前作以上の大ヒットを記録し、北米だけで2億2600万ドル、全世界では3億4700万ドルを稼ぎ出し、世界でもっともヒットしたマーシャルアーツ映画となったのだった。
当然続編が熱望され、第3弾となる『ラッシュアワー3』が企画されたが、制作は様々な困難があり、公開は2007年までずれ込んでしまった。真田広之、工藤夕貴、マックス・フォン・シド―、ジュリー・ドパルデューなどが出演し、『ブルース・リー/死亡遊戯』(1978年)のカリーム・アブドゥル=ジャバーのオマージュとして身長236cmのバスケプレイヤーであるスン・ミンミンも登場。
さらにシリーズの大ファンであるロマン・ポランスキー監督は、本作がフランスで撮影されることを聞きつけて自らブレット・ラトナー監督に電話をかけて出演を直訴し、レヴィ警視役でカメオ出演している(少女淫行事件でアメリカから逃亡している身であったためクレジットはされていない)。
RUSH HOUR 3 (2007)
— One Less Than Perfect Shot (@LessShot) April 21, 2021
Cinematography by J. Michael Muro
Directed by Brett Ratner
Submitted by @Immortan_Scott pic.twitter.com/6MGBI4AalM
第3弾は、フランスを舞台にカーター刑事とリー刑事の珍道中が繰り広げられるのだが、批評家からは手厳しい評価しか得られなかった。しかし、全世界では2億5800万ドルという大ヒットを記録し、本シリーズが多くのファンに愛されていることを証明している。
『ラッシュアワー4』製作の可能性は……?
さて、『ラッシュアワー』シリーズというと、ハードコアなジャッキーファンからは「アクションがヌルい」「物語が薄い」「クリス・タッカーがウザい」など散々な評価であり、香港でもあまりヒットはしていない。正直、ぼく自身もあまり積極的に見直している作品ではない。しかし公開から25年経った今観てみると、実に軽妙な作品であり、テンポよくストーリーが進み、アクションもほど良く、主演の2人の掛け合いも抜群に面白い作品であると改めて気付かされた。好き嫌いはあろうが、あえて今、本シリーズを見直してみるというのも一興なのではないだろうか。
なお、ジャッキーは政治問題で中国寄りの姿勢を明確にしてハリウッドからは完全に距離を置かれてしまっており、もともと寡作だったタッカーは数年に1本の出演ペースで助演俳優としていぶし銀の立ち位置になっている。そんな中、2017年には続編に対して否定的だったジャッキーが、ようやく『ラッシュアワー4』の脚本検討にOKを出すも、3作を監督したブレット・ラトナーが「#MeToo」ムーブメントの中で過去のセクハラを告発されてハリウッドを追放されてしまう。残念だが、『ラッシュアワー4』の可能性は完全に無くなっているのが現状だろう。
『ラッシュアワー』シリーズ3作【日本語吹替版】はCS映画専門チャンネル ムービープラス「ラッシュアワー イッキ観!」で2023年11月放送