極限の中で生き抜くことができる男
ベニチオ・デル・トロは、疲れていればいるほど映画の中で輝く。
例えば『ボーダーライン』(2015年)を思い出して欲しい。観た者全てに「自分の方がマシ」と思わせる過酷な労働環境、メキシコに対して一生消えることのない恐怖を与えた本作で彼が演じたアレハンドロは、鈍く輝いていた。
少し裏道に入れば首吊り死体という信じられない光景が続くメキシコで、一切動じない。疲れ切った表情で淡々と、銃撃戦、拷問をこなす姿はプロフェッショナルそのもの。ソーコムピストル片手に単身、カルテルの大ボスの豪邸に乗り込む「突撃!隣の晩ごはん」は、映画史に残る名シーンだ。
Benicio Del Toro’s Excellent Performance in Sicario (2015) pic.twitter.com/ftOnXuU2yd
— Cinema Connoisseur (@MovieEndorser) September 23, 2023
しかし、もしデル・トロのSNSアカウントの投稿内容がプライベートジムでの筋トレや無駄に高級そうな肉、部屋にピカピカの自転車を飾っているビジネスマンのようにギラギラしていたらどうだっただろう? きっと潜入途中でカルテルに銃殺されていたはずだ。
極限の中で生き抜くことができる男。デル・トロの目が曇っていたからこそ生まれる説得力があった。
Benicio Del Toro, Josh Brolin & Jeffrey Donovan behind the Scenes of 'Sicario' in 2015 pic.twitter.com/tyRqCJEIBD
— 𝐅𝐈𝐋𝐌.𝐌𝐄 (@wwwfilmme) April 18, 2023
そして『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017年)。薄汚れたコート姿の彼が登場する時間だけは、あの広大な宇宙のサーガが、カルテルの麻薬戦争に変わっていた。
『SW』に関しては色々ややこしいのでできるだけノーコメントを貫きたいのだが、決して評価の高くないあの作品の中で、やはり彼はひときわ輝いていた(そして目は曇っていた)。
The Name of Benicio del Toro's 'Star Wars: The Last Jedi' Character Explained https://t.co/ds0VQZTpk3 pic.twitter.com/hEwhqStUN6
— /Film (@slashfilm) September 2, 2017
「出演する映画を間違えた」とか「目つきや髪型の様子から単純に寝起きでの撮影だったのではないか」という考察もあるが、とにかくベニチオ・デル・トロが疲れているほど輝きを増す説は、より強固となった。