なぜトム・ハンクス主演に? 原作の主人公は“ハリソン・フォードに似ている”
主人公のラングドン教授は、原作ではハリソン・フォードに似ているとはっきり書かれており、ダン・ブラウンは『インディ・ジョーンズ』シリーズの冒険考古学者をイメージしたと思うのだが、映画化では監督のロン・ハワードと相性のいいトム・ハンクスがキャスティングされた。そのうえ、彼と行動を共にする暗号解読官のソフィー・ヌヴー役が『アメリ』のオドレイ・トトゥになった結果、大人向けの歴史ミステリーというより青少年向け冒険アクション映画といった雰囲気になっている。
脇役のチューリヒ保管銀行パリ支店長のユルゲン・プロフノウや、生涯を掛けて聖杯を追求する宗教史学者ティービングのイアン・マッケラン、宗教結社オプス・デイの一員で殺し屋シラスのポール・ベタニーなどは原作のイメージ通り。ただ、私は本物のルーヴル美術館の館長にインタビューしたことがあるが、本物はソニエール館長を演じたジャン=ピエール・マリエールよりずっと若く、映画好きな方だった。
現在の美術館館長は、功成り名遂げた研究者の名誉職ではなく、バリバリのやり手でなければ務まらない激務で、美術ばかりでなく様々な分野に目を配り、提携していかねばならない。だからこそ、この映画も、ルーヴルの全面協力によるロケ撮影が可能になったともいえる。
名所旧跡が多数登場!分厚い原作を2時間半にギュッと圧縮
原作の「ダ・ヴィンチ・コード」の面白さは、中世の騎士道物語に登場する聖杯伝説や十字軍をめぐる様々な謎を“コード(暗号)”というキーワードで1つに繋げたところにある。十字軍をめぐる伝説は、映画『マルタの鷹』(1931年ほか)からマンガ/アニメの「ワンピース」まで、多くの作品にネタを提供している。それだけ魅力的な謎だということだ。
そもそも上下2巻の大部な原作を2時間半に圧縮すること自体に無理があるが、誠実なロン・ハワードは、原作を大きくそれることなく適度にダイジェストしている。そのため、ジェットコースター・ムービー並に筋の展開が早く、落ち着いて物語を咀嚼する暇がないのが難だが、これは何度も見て楽しめると、いい方に解釈しよう。
映画の一番の見どころは、ルーヴル美術館、サン=シュルピス教会、テンプル教会、ロスリン礼拝堂といった原作に登場する名所旧跡が実際に映像で見られるところだ。本物の歴史の重さは何ものにも代え難く、映画に真実味を加えている。
文:齋藤敦子
『ダヴィンチコード』『天使と悪魔』『インフェルノ (2016年)』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「特集:24時間 秋のミステリーサスペンス」で2023年11月放送
https://www.youtube.com/watch?v=1qvaDDvIqM4
『ダヴィンチコード』『天使と悪魔』『インフェルノ (2016年)』『オリエント急行殺人事件(1974年)』『君だけが知らない』『レディ・ジョーカー』『殺人の追憶』『ブラックボックス:音声分析捜査』『誘拐の掟』『レミニセンス』
CS映画専門チャンネル ムービープラス「特集:24時間 秋のミステリーサスペンス」で2023年11月放送