群像劇の原点にして傑作! バート・ランカスター主演『大空港』
『大空港』では、大雪に見舞われたシカゴの国際空港と、同空港を飛び立ったボーイング707機を巡る様々な人物のドラマが複雑に交錯する。
――積雪に車輪を奪われて滑走路上に立ち往生した大型ジェット機を取り除くべく奮闘する空港責任者のバート・ランカスター、保安係のジョージ・ケネディ、そして出立したボーイング707機に爆弾魔が乗り込んだ情報をキャッチした航空会社旅客係ジーン・セバーグの地上組、そして地上からの連絡を受けて爆弾魔から爆弾の入ったアタッシュケースを奪取しようとする機長ディーン・マーティン、その恋人であるキャビンアテンダントのジャクリーン・ビセット、無賃搭乗を不問に付す代わりにアタッシュケース奪取に協力する老婦人ヘレン・ヘイズの機上組。世代は様々なれど、いずれも主演スターの名優ばかり。
爆弾魔の男ヴァン・ヘフリンから何とかアタッシュケース奪取に成功したものの、事情を知らない別の乗客が「何をするんだ!」とアタッシュケースを奪って再び爆弾魔に返してしまい、トイレに籠った爆弾魔はダイナマイトを爆破させ機体に大きな穴が開いてしまう。
急激な気圧減少で危機的状況となった機体は、すぐにシカゴに引き返して緊急着陸しなくてはならなくなるが、それまでに滑走路をふさぐ大型ジェット機を移動させることができるのか!? ……というサスペンス溢れる本作は、アメリカン・ニューシネマ全盛のハリウッドに大型映画復活の機運をもたらした。
なお無賃搭乗常習犯のおばあさんを演じた往年の大女優、ヘレン・ヘイズがアカデミー助演女優賞を受賞している。
CAがジャンボ機を操縦!?『エアポート’75』
前作の4年後に製作された『エアポート’75』は、当時の一般的なパニック映画(たとえば本作と同時期にチャールトン・ヘストンやジョージ・ケネディが出演した『大地震』)と比べて低予算の作品だが、結果的には、1970年代アメリカ映画全体を紹介したロン・ホーガンの著書「The Stewardess is Flying the Plane!」のタイトルと表紙に抜擢されるほどの、この時代を象徴するような映画になった。この本のタイトル、「キャビンアテンダント(Stewardess)が飛行機を操縦している!」というのが、つまりは本作の最大のポイント。
The Stewardess is Flying the Plane! American Films of the 1970s (Book - borrowable, Ron Hogan & Manoah Bowman, 2005) https://t.co/oFskeWaIvD
— ArchiveOnTheInternet (@ArcOnInternet) August 24, 2022
Let the internet be your coffee table with this gorgeous book. pic.twitter.com/JzstC7CXgQ
大女優グロリア・スワンソン(本人役)、腎臓手術を受けにLAの病院へ行く少女リンダ・ブレア、アル中の老婦人マーナ・ロイといった様々な乗客を乗せたボーイング747機がワシントンDCからLAへ向けて飛行中に、濃霧のためやむなくソルトレイクシティに進路変更し降下し始めたところへ、小型機を操縦する実業家ダナ・アンドリュースが心臓マヒを起こして絶命、ボーイング機のコックピットに激突する。機長エフレム・ジンバリスト・Jrは重傷を負い、副機長は機外へ放り出され、機関士も死亡。
そこでチーフ・キャビンアテンダントのカレン・ブラックが管制塔からの指示でジャンボ機の操縦桿を握ることに! 彼女の恋人で、地上勤務の元パイロット=チャールトン・ヘストンが空軍のジェットヘリコプターで空中からジャンボ機に近づき、コックピットに開いた穴から操縦席に乗り込もうとするが……という手に汗握る展開。
前作との唯一の共通点はジョージ・ケネディ扮するジョー・パトローニの存在で、同一人物ではあるが、本作では航空会社の社長としてヘストンと共にジェットヘリコプターに乗り込む。特筆すべきはグロリア・スワンソンの出演で、実は彼女は『グランド・ホテル』にも出演した伝説の大女優だから、本作が“グランド・ホテル形式”ですよ、というイメージを前面に押し出した形だ。