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『ゴジラ-1.0』公開記念!名作『ゴジラVSビオランテ』の魅力を改めて振り返る 〜時代背景から劇伴まで、超・私的マニアック視点で解説 〜

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ライター:#ナカムラリョウ
『ゴジラ-1.0』公開記念!名作『ゴジラVSビオランテ』の魅力を改めて振り返る 〜時代背景から劇伴まで、超・私的マニアック視点で解説 〜
『ゴジラVSビオランテ』©1989 TOHO CO., LTD.
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『ゴジラVSビオランテ』の魅力①~③

① 圧倒的な怪獣造型

小さくて鋭い瞳、哺乳類的な鼻先、二列に並んだ歯と生々しい口腔……。本作のゴジラ(通称ビオゴジ)は、その顔つきが過去作から大きく一新された。前作までは目が大きくてトカゲ面という、いわゆる怪獣顔だったのに対し、ビオゴジは見る角度によって猛禽類にもゴリラにも、犬にも猫にも見える。様々な動物のイメージを盛り込んで生物的なリアリティを高めるというのは、昭和期から東宝特撮の現場に携わり続け、本作で初めてゴジラ映画の特技監督を務めた川北紘一の強いこだわりだったという。

『ゴジラVSビオランテ』©1989 TOHO CO., LTD.

もうひとつ、川北ら製作陣が徹底的にこだわったのが新怪獣・ビオランテのデザインだ。「ゴジラのDNAを取り込んだ植物怪獣」という前代未聞すぎるお題は、当然ながら決定に至るまで難航を極めたそうだが、最終的に辿り着いたその異形な佇まいの完成度は、今なお古びることがない。

気持ち悪さスレスレなクリーチャー感と、ゴジラを凌駕する巨大なスケール、そして艶かしくもある植物的なテクスチャ。過剰なほど細かいディテールからは、行きすぎた遺伝子操作の産物という出自の悲劇性さえ感じられる。0を100にする途方もないクリエイティブだったと想像するが、この2体の造型だけでも「誰も見たことがない、新しい怪獣映画を見せつけてやろう」という挑戦的精神がひしひし感じられて、たまらない気持ちになるのだ。

『ゴジラVSビオランテ』©1989 TOHO CO., LTD.

② 時代性を反映したストーリー

本作は、日本と米国、そして中東のサラジア共和国(架空の国家)が、ゴジラの細胞という“希少な資源“を奪い合う国家間の駆け引きを軸に展開する。ゴジラもビオランテも、その人間同士の争いの果てに目覚めさせられる羽目になってしまう“人災としての怪獣映画”という側面が強いのも特徴だ。

この映画が公開された1989年末というと、世界的にはイラン・イラク戦争から湾岸戦争に至る時期。テレビのニュースは連日連夜にわたり緊迫した中東情勢をトップで報じ、幼い自分もお茶の間でそれを眺めながら、子ども心になんとも重苦しいムードを感じていたのを痛烈に記憶している。本作はフィクションでありつつも、そんな「当時の国際問題のイヤな空気」を多分に纏っていて、同時にそういうモヤモヤを怪獣たちが一蹴してくれるような爽快さもあった。

S-Fマガジン 1989年11月号 (通巻385号) 愛と狂気と混沌と:カルト・ファンタジイ特集

ゴジラ映画の歴史を振り返れば、明らかに水爆と戦争への警鐘が込められた第1作『ゴジラ』(1954年)や、公害問題をストレートに反映した『ゴジラ対ヘドラ』(1971年)をはじめとして、当時の世相と切っても切り離せない作品も多い。個人的には、そんな時代の合わせ鏡となり得るのが怪獣映画の醍醐味だと思っている。

世界を取り巻く状況が不安定な今だからこそ、“あの頃のムード”が追体験できる本作は、また新しい視点で見えてくるかもしれない。

『ゴジラVSビオランテ』©1989 TOHO CO., LTD.

③「怪獣世代」による新感覚ゴジラ映画

現在では「怪獣映画のメインスタッフがもともと怪獣マニア」というケースは珍しくないが、その先駆けになったのもこの作品ではないだろうか。

本作はストーリーを一般公募し(選考者には手塚治虫も名を連ねていた)、そこで選ばれた小林晋一郎の作品が原案になった。小林は高校生当時にTV番組『帰ってきたウルトラマン』(1971年)の一編「許されざるいのち」の原案を円谷プロに投稿して採用された実績があり、言わば特撮マニアの中で抜きん出た存在だった(ちなみに、そこに登場する怪獣レオゴンも科学の暴走の果てに生まれた植物と動物の合性怪獣であるなど、ビオランテと共通点がある)。

許されざるいのち

©円谷プロ

本業は歯科医である小林は、学術的な知見で物語に奥行きを与えたばかりでなく、ゴジラの歯並び等といったデザイン的な部分でも積極的に現場に助言していたそうだ。自分の持てるスキルを推しコンテンツに直接注ぎ、還元する……これはファンとして究極の夢であろう。

『ゴジラVSビオランテ』©1989 TOHO CO., LTD.

そして本作最大のキーパーソン、監督の大森一樹。それまでゴジラ映画は東宝に所属する社員監督がメガホンを取るのが通例だったが、田中プロデューサーは新基軸を打ち出すべく、当時『ヒポクラテスたち』(1980年)等で評価を高めていた新進気鋭の若手監督・大森に作品を託した。大森自身、幼少期に『妖星ゴラス』(1962年)や『モスラ対ゴジラ』(1964年)など、東宝特撮映画を数多く観て影響を受けてきたと公言している。

ヒポクラテスたち

©1980 オフィス・シロウズ/東宝

大森や小林のように、怪獣映画に触れながら育った世代ならではの新感覚な目線が作劇に落とし込まれたことで、王道とチャレンジ精神の両立という、本作の奇跡的なバランスが生まれたのではないかと推察する。

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『ゴジラVSビオランテ』

ゴジラが東京を蹂躙してから5年、再び活動を開始したゴジラに備え、政府は核を制御する抗核バクテリアの研究を白神博士に依頼する。しかし博士は亡き娘の細胞が埋め込まれたバラと、ゴジラ細胞を融合させ、ビオランテを生み出してしまう。そんな折にゴジラが覚醒。ゴジラとビオランテの激闘が始まる!

制作年: 1989