「ヒロユキが若い頃に出したアルバムを持ってるよ!」
―日本のアクション映画ファンが『ジョン・ウィック:コンセクエンス』で嬉しかったことは、真田広之さんを大阪・コンチネンタルホテルの支配人、シマヅ・コウジとして『ジョン・ウィック』の世界に迎え入れてくれたことです!
イェーッ(笑) やっぱり、そう思ってくれたんだ!
―しかも、真田広之VSドニー・イェンなんて夢のような対決を生きている間に観ることができるとは思っていませんでした。ありがとうございます!
僕も君のように夢の対決を観たかったんだよ(笑)。
―真田広之さんとドニー・イェンさんとの対決を描こうと思った理由を教えてもらえませんか? お2人を起用した理由は?
(日本語で)ヒロユキはトモダチです! ヒロユキとは旧知の仲だったから、前から「一緒に仕事がしたい!」と言っていたんだけど、なかなかスケジュールが合わなくて……。実は前作『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年)に登場したゼロ(マーク・ダカスコス)の役はヒロユキにやって欲しかったんだけど、スケジュールが合わなくて実現できなかったんだ。
僕は『エクスペンダブルズ』(2010年)、『エクスペンダブルズ2』(2012年)のアクション監督をやっていたから、チャック・ノリス、アーノルド・シュワルツェネッガー、ジェット・リー、ジェイソン・ステイサム、シルヴェスター・スタローン、ウェズリー・スナイプス、ブルース・ウィリスたちと知り合いだ。それで、『ジョン・ウィック』の新作を作る時はいつも、「次は誰を登場させようかな……ウェズリー・スナイプスが良いかな? ジャッキー・チェンが出たら面白くなるかも!」って考えるんだよ。
―個人的にはウェズリー・スナイプスさんのガン・フーが観たいです!
そういう感じに僕も考えているよ(笑)。今回の映画では、どういう考えからヒロユキとドニーに決めたかというと、「かつては親友だった男たちが戦う」シーンを描きたかった。そのシーンを観た観客には「どっちが勝つのか? どっちを応援して良いのかわからない……」という気持ちになって欲しかった。そうなると、観客にとって思い入れがある俳優じゃなければダメだよね? 僕も含め、観客がそう思える俳優はドニーとヒロユキの2人だと思ったんだ!
―たしかに!
まあ、僕が二人のファンだから、「いつか一緒に仕事がしたい」と思い続けていた、という理由もあるんだけど(笑)。それと、ドニーのキャラクターに関しては、キアヌとも映画の中で「かつては親友だったけど戦わざるを得なくなってしまった」という状況になるよね。ここでも「どっちが勝つのか? どっちを応援して良いのか……」と思って欲しかったから、出演してもらいたかったんだ。それでヒロユキとドニーには「今回はどうしても出演して欲しい!」とお願いをしたら、スケジュールがうまくハマったんだよ。ラッキーだったね!
―真田広之さんが過去に出演されたアクション映画で好きな映画があったら、ぜひ知りたいんですが……
『ジョン・ウィック:コンセクエンス』かな。って、冗談だよ(笑)。ヒロユキの映画は全部好きだよ! 特に昔の作品、ヒロユキが歌を唄っていた頃の作品かな。
―真田さんが主題歌を唄っていた作品といえば『忍者武芸帖 百地三太夫』(1980年)や『吠えろ鉄拳』(1981年)ですね!
ヒロユキが若い頃に出したアルバムを持ってるよ!
―本当ですか!?
ちょっとディスコっぽい感じの歌も唄っているよね(笑)。その頃からヒロユキのファンだよ!
「日本の歴史、とくにサムライがいた時代に作られたアートについて改めて深く勉強した」
―真田さんが演じるシマヅ・コウジが総支配人を務める大阪・コンチネンタルホテルのシーンは、僕らの知っている日本とは違う『ジョン・ウィック』オリジナルの日本を楽しめました。
ありがとう!
―チャド監督は今回、座頭市からインスパイアされて盲目の殺し屋ケイン(ドニー・イエン)のキャラクターを生み出したり、映画のあるシーンでウォルター・ヒル監督の『ウォリアーズ』(1979年)にインスパイアされた燃えるシーンを描いたりしていますが、大阪・コンチネンタルホテルのシーンや世界観を作るにあたって、影響を受けた映画はありましたか? 個人的にはジョン・フランケンハイマー監督が京都を舞台に撮ったアクション映画『最後のサムライ ザ・チャレンジ』(1982年)をチャド監督流にアップデートしたような感じで楽しめました。
たしかに『最後のサムライ ザ・チャレンジ』の影響もあるけど、それだけじゃないな。視覚的なスタイルというのは、自分が観てきた多くの作品や、自分が関わった映画の現場から吸収されていくものなんだ。だからウォシャウスキー姉妹、ジョン・フランケンハイマー、セルジオ・レオーネ、黒澤明、ウォルター・ヒルなどの自分が観てきた作品は、僕の頭の中に入ってしまっていて、そこから逃れることはできない(笑)。ちなみにジョン・フランケンハイマーといえば、パリのサクレ・クール寺院の階段のシーンの照明の感じは、フランケンハイマーの影響を受けてるな、って自分でも思うし(笑)。
―222段ある階段での死闘シーンですね。
でも、大阪・コンチネンタルホテルに関しては一本の映画や一人の監督の影響だけじゃないかな。どちらかというと、日本のアニメーション作品の影響の方が強いと思う。『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(1995年)や『AKIRA』(1988年)などの具体的な作品というわけではなくて、色味全体の使い方みたいなものはインスピレーションを受けているかな。僕がアクション監督を務めた『マトリックス』シリーズも日本のアニメの影響を受けた作品だったけど、個人的には、ちょっとトーンがダークかなと思っていた。僕はカラフルな画面がとても好きだから、もっと色味のある、現実とは違う『ジョン・ウィック』オリジナルの大阪を作りたかったんだ。
―たしかに『ジョン・ウィック』シリーズは色の使い方が素敵な映画ですね。
色の話が出たから、さらにカラーグレーディング(画像や映像に色彩の補正を加えること)の話をすると、『ジョン・ウィック』1作目と『ジョン・ウィック:コンセクエンス』の間では色味を出す技術が、もうめちゃめちゃ進歩して、1作目の時にはできなかったことができるようになったんだ。1作目の時には日本のアニメ作品みたいな、ネオンのような紫やピンク色が出せなかった。でも、今の技術ではそれができるようになったことと、ダン・ローストセンという素晴らしいキャメラマンがいてくれることで、色彩をより極めることができるようになったんだ。黒味も、めちゃめちゃ黒を深くすることができるし。
―大阪・コンチネンタルホテルだけでなく『ジョン・ウィック』シリーズは映画オリジナルの世界観も見所のひとつですね。シリーズが作られるたびに、世界観は広がっていきますが、どのように作っているんですか?
個人的にも『ジョン・ウィック』オリジナルの世界を作っていくことが、このシリーズを監督する楽しみなんだよ(笑)。1作目からスタートして今回4作目になるから、アクションだけでなく世界観も進化させないといけないと思っている。そのために僕は、3作目『ジョン・ウィック:パラベラム』が完成して今回の『ジョン・ウィック:コンセクエンス』を撮影する間に1000本ぐらいの映画、テレビドラマ、本から吸収していったんだ。
―具体的にどんなものを吸収されたんですか?
特に勉強したのは日本の歴史。サムライのことや、彼らがいた時代に作られたアートについて改めて深く勉強したよ。で、大事なのは吸収した知識をどうやって自分のものにして『ジョン・ウィック』の世界に活かすか? ということ。 僕は「いろいろなものから少しずつ影響を受ける」ことを大事にしている。色彩はあの作品から少し、構図はあの映画から少し、という感じで新しい世界観や画面を作っていく。例えば大阪・コンチネンタルホテルの中に甲冑や刀などの工芸品が展示された部屋があったよね。あの中で使われている、日本の工芸品は本物なんだよ。
―ゴージャスですね!
それぞれ違う時代のものなんだけど、工芸品をガラスの展示室ケースに入れて、照明を作ることによって新しいビジュアルができる。そうやって『ジョン・ウィック』オリジナルの世界ができるんだ。これはとても幸運なことだと思うし、それを可能にしてくれてるスタジオのライオンズゲートにも感謝しているよ。ちょっと「イカれた監督だ」って思われてるみたいだけど……(笑)。まあ、やらせてくれるから。
『ジョン・ウィック:コンセクエンス』
裏社会の掟を破り、粛清の包囲網から生還した伝説の殺し屋、ジョン・ウィック。地下に身を潜めながら、全てを牛耳る組織:主席連合から自由になるために立ち上がった。組織内での勢力拡大を狙う若き高官、グラモン侯爵は、これまで聖域としてジョンを守ってきたニューヨークのコンチネンタルホテルを爆破、ジョンの旧友でもあった盲目の達人ケインを強引に引き入れ、ジョン・ウィック狩りに乗り出す。そんな中、日本の友人シマヅの協力を求めてジョンが大阪のコンチネンタルホテルに現れた……。
監督:チャド・スタエルスキ
脚本:シェイ・ハッテン マイケル・フィンチ
出演:キアヌ・リーブス
ドニー・イェン 真田広之
ビル・スカルスガルド ローレンス・フィッシュバーン
シャミア・アンダーソン ランス・レディック リナ・サワヤマ
スコット・アドキンス イアン・マクシェーン
制作年: | 2023 |
---|
2023年9月22日(金)より全国公開
CS映画専門チャンネル ムービープラス 新作映画情報番組「映画館へ行こう9月号」
キアヌ・リーブスが伝説の殺し屋に扮した大ヒットアクションの第4弾『ジョン・ウィック:コンセクエンス』を映画ライターのギンティ小林が徹底解説!川本耕史、伊澤彩織のインタビューなど盛りだくさんでお届け!
MC:小林麗菜 ゲスト解説:ギンティ小林
出演:川本耕史、伊澤彩織