地図から消された小さな村に隠された歴史とは
ブラジル映画としては、コンペ出品の4回目になる本作の監督クレベル・メンドンサ・フィロは3回目の『アクエリアス』(2016年)の監督でもある。2本続けてのコンペ入りは快挙と言っていい。今回はフリアノ・ドルネレスとの共同監督である。
フィロ監督は「60〜70年代のSFをイメージして、現在様々な部分でディストピアとなっているブラジルの社会を表してみた」という。ディストピアというと、ブラジル映画で描かれてきた暴力・貧困におおわれた都市部のスラム街を想像するが、本作の舞台は土埃舞う田舎の村バカラウである。この村はなぜか地図からは消されている。それでも巨大企業は見逃さないもので、水道を私営化して村の人々の生命線を抑えている。どうもそこには選挙の時だけやってきて街のガラクタを施しとしてばらまいていく政治家が関係しているらしい。
この村が地図から消されたのには理由がある。かつてこの村の人々は権力者に立ち向かい、武器をとって立ち上がった歴史があるのだ。
そして今。この村を殲滅するため、アメリカ人のマン・ハント集団が雇われた。
プロの殺し屋集団に村人はどう対抗するのか?!
記者会見で質問に立った記者が「マッド・マックス イン ブラジルというか、七人の侍も思い出した」という言葉がこの雰囲気を伝えている。「今ブラジルで起こっていることを見て欲しい」とドルネレスと監督。マジック・リアリズムの伝統があるブラジル映画らしい、ファンタジックなマッド・マックス イン ブラジル 、である。しかし、マンハント集団のリーダーを演じたウド・キアによれば3週間かかった撮影はかなりハードだったようだ。
文:まつかわゆま
カンヌ映画祭スペシャル2019
<日本オフィシャル・ブロードキャスター>CS映画専門チャンネル ムービープラスにて
2019年5月25日(土)カンヌ映画祭授賞式 日本独占生中継ほか、受賞作&関連作計6作品放送