『ジョン・ウィック』映画化までの道のり
『ジョン・ウィック』映画化のために、まずやらなければならないのは、60代半ば~70代半ばの老人という設定だったジョン・ウィック像を、キアヌに合うキャラクターに修正することだった。そのためキアヌは脚本家のコルスタッドと共に二カ月かけて脚本を直していった。その過程でジョン・ウィックのセリフは最小限に削ぎ落とされただけでなく、当初は劇中で11人しか殺さなかったが、キアヌに合わせてキルカウントを大幅に増量した(完成した映画でのキルカウントは77人)。
それだけの人数を、たった1人で皆殺しにする伝説の殺し屋の戦闘スタイルとは、どんなものなのか? これはチャドとデヴィッドが『ジョン・ウィック』を監督するために、決めなければならない最も重要な課題だった。
「誰も観たことのない銃撃戦と格闘シーンを描きたい」と考えた二人は、87イレブンの精鋭たちと、ジョン・ウィックの戦闘スタイルを模索した。その過程で、銃撃戦と格闘技を融合させる、という案が浮かんだ。ただし『リベリオン』(2002年)の“ガン=カタ”のようなファンタジックなものではない。
彼らは、「常識のボーダーラインを越えず、斬新でカッコよく、観ていて痛みが伝わるアクションにしたい。格闘技ファンにも納得してもらえるような作品にしたい」という方向で検討した結果、実際の格闘技と射撃テクニックを組み合わせることにした。
キアヌに課された過酷な訓練、そして“ガン・フー”の誕生
格闘技は柔道や柔術を取り入れることになった。『リーサル・ウェポン』(1987年)でも、特殊部隊出身の刑事マーティン・リッグス(メル・ギブソン)の格闘スタイルにブラジリアン柔術を導入した前例はあるが、アクション映画のファイトシーンで柔道や柔術のテクニックを見せるのは容易ではなかった。
「柔道や柔術を見慣れていない人には、至近距離で組み合った時に、何をしているか伝わりにくい」と考えた彼らは、リアルさを追求しながらも、伝わりやすいアクションを目指すことになる。
そうして、キアヌを伝説の殺し屋に変貌させる特訓の日々がはじまった。特訓の期間は4カ月。1日8時間の練習を週5日おこなう。キアヌは不気味なまでのストイックさで過酷な訓練をこなしていった。
プロの殺し屋らしい射撃スタイルを修得するため、キアヌはSWAT隊員を演じた『スピード』(1994年)の役作り以来、20年ぶりにSWATの訓練に参加。さらに、モザンビーク・ドリルという射撃術を学んだ。これは確実に仕留めるために、必ず相手のボディに2発、頭部に1発撃ち込む射撃術である。
チャドやキアヌたちは、射撃と格闘技を融合させた戦闘スタイルの中でも、銃の扱いはリアルに描きたかった。装弾数を無視した撃ち合いは絶対にしない。キアヌが使う銃は、装填可能な数の弾丸しか発射しない。弾丸が尽きたら、素早くリロードする姿をリアルかつカッコよく見せれば良い。そんなシューティングスタイルに柔術と柔道を融合させる。この戦闘スタイルを彼らは“ガン・フー”と名づけた。
本作でジョン・ウィックはハンドガン(H&K P30、グロック26)、アサルトライフル(コハリーアームズCA-415)、ショットガン(ケル・テック KSG)を使ったレベルの高い銃撃戦を披露したことから、その後のシリーズでも毎回、この3種は必ず使い、回を増すごとにレベルアップした射撃スキルを見せてくれている。
『ジョン・ウィック:コンセクエンス』
裏社会の掟を破り、粛清の包囲網から生還した伝説の殺し屋、ジョン・ウィック。地下に身を潜めながら、全てを牛耳る組織:主席連合から自由になるために立ち上がった。組織内での勢力拡大を狙う若き高官、グラモン侯爵は、これまで聖域としてジョンを守ってきたニューヨークのコンチネンタルホテルを爆破、ジョンの旧友でもあった盲目の達人ケインを強引に引き入れ、ジョン・ウィック狩りに乗り出す。そんな中、日本の友人シマヅの協力を求めてジョンが大阪のコンチネンタルホテルに現れた……。
監督:チャド・スタエルスキ
脚本:シェイ・ハッテン マイケル・フィンチ
出演:キアヌ・リーブス
ドニー・イェン 真田広之
ビル・スカルスガルド ローレンス・フィッシュバーン
シャミア・アンダーソン ランス・レディック リナ・サワヤマ
スコット・アドキンス イアン・マクシェーン
制作年: | 2023 |
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2023年9月22日(金)より全国公開
CS映画専門チャンネル ムービープラス 新作映画情報番組「映画館へ行こう9月号」
キアヌ・リーブスが伝説の殺し屋に扮した大ヒットアクションの第4弾『ジョン・ウィック:コンセクエンス』を映画ライターのギンティ小林が徹底解説!川本耕史、伊澤彩織のインタビューなど盛りだくさんでお届け!
MC:小林麗菜 ゲスト解説:ギンティ小林
出演:川本耕史、伊澤彩織