「メインテーマは数分で書き上げた」
―チャド・スタエルスキ監督は毎回アクションの激しさだけでなく、芸術的な側面を探求してきたように思います。『ジョン・ウィック』シリーズの劇伴の基本となるのは攻撃的なロック・サウンドですが、この方向性はどのようにして決まったのでしょうか?
チャドはマーシャルアーツと武器の達人であり、その起源となる文化を深く理解している。彼はシリーズを通して自身の深い洞察を僕たちと分かち合い、最終的にはロック・ミュージックのエネルギーで非日常的な雰囲気を作り出すことを僕とジョエル(・J・リチャード)に勧めてくれた。こうした側面がシリーズ全ての音楽に反映されているんだ。
―シリーズを通して使われている印象的なメロディのメインテーマは、どのようにして出来上がったのでしょうか?
10年前、ジョエルと僕が最初の『ジョン・ウィック』の作曲に着手したとき、僕はまだ『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)の仕事に携わっていた。僕が『GOTG』の音楽を仕上げている間、ジョエルが『ジョン・ウィック』のスコア作曲を進められるように、まずメインテーマを書くことに集中したんだ。僕たちは文字通り、電話で話し合いながらほんの数分でテーマ曲を書き上げた。続編が作られる度にあらゆる方法を駆使してテーマ曲を発展させていくというのは、とてもやり甲斐のある作業だったよ。
「日本のシーンは黒澤明の映画から着想を得ている」
―今回は大阪コンチネンタルホテルが登場します。“『ジョン・ウィック』の世界における日本”をどのように音楽で表現しようと思いましたか?
日本でのシーンにおけるチャドのアプローチは、彼が映画監督を志すきっかけのひとつでもあった黒澤明の映画からインスピレーションを得たものだった。僕とジョエルもそこから受けた影響が大きかったね。今回は音楽に伝統的な楽器編成を使うことも求められたけど、ジョンが日本に滞在中のストーリーを支えるスコアの大部分は電子音楽だ。
―伝統的な楽器編成といえば、今回シリーズの劇伴で初めてオーケストラを使っていますが、このアイデアはどこから生まれたのでしょうか?
チャドはこの映画の第三幕を飾る古典的な決闘のシーンで、20世紀の音楽様式で演奏されるスコアを望んでいた。このシリーズの音楽ではオーケストラを使わなかったけれど、それはスコアがロック・ミュージックの美学をコンセプトにしていたからなんだ。予算が限られていたという理由もあったけどね。でも今回はジョエルと僕に非常に大きなリソースを与えられたから、従来のサウンドにオーケストラを統合することが出来たんだ。
『ジョン・ウィック』『ジョン・ウィック:チャプター2』『ジョン・ウィック:パラベラム』
CS映画専門チャンネル ムービープラス「特集:『ジョン・ウィック』シリーズ最新作公開記念!2ヶ月連続キアヌ・リーブス」で2023年10月放送