なぜ? 中国では上映禁止に
9月のCS映画専門チャンネル ムービープラスでは『トゥームレイダー』と併せて続編『トゥームレイダー2』(2003年)も放送されるが、『1』ではグラマラスなララのバストサイズを再現するためにパッドで調節していたアンジーが、続編ではそれをしていない。それに代表されるように、前作よりもリアル指向を目指した作品となっている。
フライングスーツで滑空するシーンではCGもワイヤーも使わず、アクション面でもよりリアルさを目指そうとしていたようだ。しかしゲーム的なシーンも健在で、『2』でも塔の周囲を上ってヘリに飛び移る際に、ゲームそっくりの伏せるポーズが再現されているなど、おなじみのシーンも登場する。
なお『2』は中国が舞台になっているが、無政府状態の混沌とした国で秘密結社に支配されている……かのように描いたため、中国では上映禁止の憂き目を見た。
そして全く関係ないが、2作を通して執事役を演じているクリス・バリーは、イギリス産SFコメディドラマ『宇宙船レッド・ドワーフ号』(1988年~)のリマー役で日本では有名である。その実体は死亡してしまい、ホログラムデータだけの存在だが、時代/予算的にCGは使わずに、額に「H」のマークを貼ってホログラムであることを示しているバカな表現は一度見たら忘れられない。ちなみにその「H」マーク、30年以上も貼り続けていたので、額のしわが変形してしまったらしい。そんな彼の演技にも注目だ。
Remember that time Rimmer wanted to go from blue alert, to red alert…?
— BBC Archive (@BBCArchive) June 21, 2023
Red Dwarf box set is now available to watch on @bbciplayer : https://t.co/JhXe54jnZX#RedDwarf #BBCiPlayer pic.twitter.com/6znVXgsbHj
ちなみに本作は、『トータル・リコール』(1990年)などの名カメラマンで、『ツイスター』(1996年)『スピード2』(1997年)の監督としても知られるヤン・デ・ボンの、今のところ最後の監督作となっている。
アンジーの「もうやりたくない」で幻と消えた『3』
そんな『2』の完成後、すでに3作目も予定されていたのだが、「もうやりたくない」とアンジーがコメント。結局『3』はキャンセルになってしまった。その後、すでに完成したララ像を描いたアンジー版とは異なり、さらにリアルなアクションを追求し、ララ・クロフト誕生譚を描いたリブート作『トゥームレイダー ファースト・ミッション』(2018年)まで、再映画化には15年を要した。
制作元のパラマウントもこの後、ゲーム映画は『ソニック・ザ・ムービー』まで17年間も制作しないことになる。ヒットしたか否かに関わらず、ゲーム映画というのは作ること自体が大変なものなのかもしれない。ついゲーム映画であることを(また、その存在を)忘れられがちな『トゥームレイダー』シリーズ。だが、そこには後の芳醇なゲーム映画の世界を作った礎が、確かに存在したのである。
文:多田遠志
『トゥームレイダー』『トゥームレイダー2』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「トゥームレイダー イッキ観!」で2023年9月放送