サメ映画とパクリ映画で有名な映画スタジオのアサイラム社だが、ときにはそのいずれにも属さない、よくわからない作品をリリースすることだってある。SFロボット映画、『ワールド・ウォー20XX 世界最終戦争』(2021年/原題:『ROBOT APOCALYPSE』)がそれだ。
一説によると本作、ダニエル・H・ウィルソンのSF小説『ロボポカリプス』(あるいは一時期話題となったその映画化企画)が基ではないかとも言われているが、真相は不明。そもそもアサイラム社のやることを真面目に考察するべきではないのかもしれない。
とにかく今回は、この『ワールド・ウォー20XX 世界最終戦争』を紹介していこう。
ページ分割:AI暴走! ロボット・アポカリプスの恐怖
暴走AIが先導する“ロボット・アポカリプス”の恐怖
時は近未来。量子システムをベースにした最新型AI“メデューサ”が突如として暴走を開始。世界中の軍事ネットワークの掌握を目論むと同時に、殺人ドローン部隊を操り、開発者のロペス博士を殺害する。
レスキューロボットのテストパイロットであるウィルソンは、いち早く異変を察知。ロペス博士の娘にしてアノニマスのハッカー、そしてかつての恋人でもある少女タラと、一連の情報を共有する。
一方、メデューサは即座に二人を抹殺対象として認識。ドローン攻撃や、人型戦闘ロボット“エアリス”の軍隊を絶え間なく差し向け、機械の手による世界征服を成し遂げようとする。
遠く離れた別々の拠点からやり取りを行っていたウィルソンとタラは、それぞれの仲間と共に、打倒メデューサに向けての活動を開始。とっておきのハイテク・ガジェットと機転を駆使して、この前代未聞の“ロボット・アポカリプス”を切り抜けていく。
が、メデューサ率いるロボット軍の驚異的な力の前に、ウィルソンとタラ、そして人類はじわじわ追い込まれてしまい……。というのが、本作の概要である。
安定したCGクオリティと低予算ならではの懐事情
正直なところ、本作の前半は期待外れだ。誰が主人公で一体どんな立ち位置なのかもわからないドしょっぱなから、専門用語まみれの台詞を登場人物に連発させ、完全に視聴者を置いてけぼりにする話運びは、近年のアサイラム製SF映画らしいといえばらしいか。
“ロボット・アポカリプス”なんて仰々しい名を冠しておきながら、冒頭にちょろっと顔見せする巨大レスキューロボットと最新型AI“メデューサ”を除けば、出てくるのはチマチマした飛行ドローンばかり。ドローンの追跡から逃れようとするヒロインのカーチェイス風シーンでは、よくよく見ると画面後方に一般通行車両が平和に行き来しているのが映り込んでいる有様。
さらには別の車を運転する登場人物の一人が、「うおーっ!」と雄叫びを上げてドローンに特攻を仕掛けるシーンでは、その勇猛果敢な行いに反して普通に法定速度を順守したスピードで突っ込んでいくため、とにかく全体的に脱力感の漂う作りとなっている。
ただし、まったくいいとこなしというわけでもない。「メデューサには脳がある。だったら心臓も与えてやる」という主人公の決め台詞がカギとなるラスボスの倒し方は、なかなかヒネリが加えられており、素直に評価すべき点だろう。後半からはドローンだけでなく人型ロボットの出番も増え、SF映像作品としての見てくれはかなりマシになる。
また、ここ数年のアサイラム映画のほぼすべてに共通して言えることだが、やはり3DCGのクオリティーは安定して良くなっている。もっとも、例によってフッテージの使い回しも非常に多いのはご愛敬。そこは低予算早撮り映画の厳しい懐事情を加味したい。ほか、往々にしてカメラワークが単調になりがちなアサイラム映画においては、いつもより少しばかりあれこれ変わった撮り方をしている点が特徴か。
アイデアがまとまっているとは言い難く、いつも以上に突貫工事で仕上げたらしき部分も多い。設定面の細かな矛盾を挙げていけばキリがないだろう。とはいえ、人型戦闘ロボット“エアリス”が本格的に活躍し始める後半からは、そこそこの面白さ。笑えるところ、まっとうに評価できるところも共になくはない。
文:知的風ハット
『ワールド・ウォー20XX 世界最終戦争』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2023年9月放送