クロムスカルの“過剰な変態性”ゆえに内ゲバが勃発
「『クロムスカル リターンズ』は、1作目とは全く異なる作品になっている」とロバート監督は語っているが、まさにその通りだ。一夜の殺人劇だった物語は、様々な人間模様が入り交じった群像劇となり、登場人物たちはしっかりと意味のある台詞を語るようになった。
クロムスカルが組織的に殺害を行う巨悪であったことが明かされ、さらにクロムスカルの“過剰な変態性”ゆえに内ゲバが勃発、果てはクロムスカル・ワナビーまで登場する始末。チーム運営に悩んだ彼は、大虐殺を開始する。
前作『クロムスカル』との共通点は、ファッショナブルな殺人シーンのみ。ファンが一番求めている部分はしっかり残し、クロムスカルのキャラクターをさらに掘り下げる、ファンベースならではの続編に仕上がっている。
『クロムスカル』シリーズの殺人シーンのクオリティが高いのは、ロバート監督が特殊メイクアップ畑の出身であることに起因する。彼曰く、特殊メイクアップ担当として映画に関わる場合、詳細に指示を出しても何らかの障害が生じるとのこと。しかし、自分で監督をする場合はそれがなく、全てがスムーズに思い通りにことを進ませることができる。だからクロムスカルの殺人技が光るのだ。
今回は斬新な殺戮武器も登場。怒り任せに人間を切りきざむシーンもあり、クロムスカルのスキルが確実にアップしている!
「ドナちゃんワーオです」のブライアン・A・グリーンも出演
そんなクロムスカルの非道さを際立たせる役者陣にも注目だ。
クロムスカル役はニック・プリンシピが続投。彼の無言殺人演技は『クロムスカル』以降、高く評価され、今では殺人鬼役として人気俳優になっている。
クロムスカルにコキ使われる組織メンバーも、かなりクセ者。「俺こそがクロムスカルだ!」と息巻くプレストン役にブライアン・オースティン・グリーンを抜擢。彼は『ビバリーヒルズ高校/青春白書』(1990年~2000年ほか)シリーズ終期の中心人物デヴィッド役で知られる(彼のキャリアを作った「ドナちゃんワーオです」の台詞はいつの頃だったか……)。
クロムスカムの禿頭に魅力を感じているHENTAIメンバー、スパンには子役からホラー映画ばかり出演しているダニエル・ハリスを起用しているのも面白いところである。
さらに、サイモン・ベイカー主演の人気TVシリーズ『メンタリスト』(2008年~2015年)で刑事役を務めていたオウェイン・イオマンがゴツゴツした面構えでクロムスカルと対峙。物語を引き締めている。
こんなパワーアップした続編を見せられたら当然、次作にも期待したくなる。既に企画もあり、ハリウッドを舞台にクロムスカルが暴れ回る……はずだった。タイトルは『Laid to Rest: Exhumed(原題)』。
しかし冒頭に“故”と記したとおり、ロバート監督は2021年5月にこの世を去った。いまだ続編を望む声が多い『クロムスカル』シリーズ、だれか彼の意思を継いでくれないものか……。
文:氏家譲寿(ナマニク)
『クロムスカル リターンズ』は2023年8月18日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、新宿シネマカリテほか全国ロードショー
『クロムスカル リターンズ』
全編に繰り広げられる過激すぎるバイオレンスの数々で14年もの間、封印されていた伝説のソリッド・スプラッター・スリラー『クロムスカル』には、さらに異常なまでにこだわり抜いた残虐シーンの連続で世界を震撼させた狂気の続編があった! 完成から12年、映画史上最も残酷で凶悪といわれた映画がついに日本のスクリーンを直撃する!!
制作年: | 2011 |
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2023年8月18日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、新宿シネマカリテほか全国ロードショー