気になる他者からの評価、逃れられない人間の性(さが)
夫婦の中にある「愛」よりも、夫婦という「属性」に付随する印象について切り込んでいく内容となっており、大志とゆいが政治家と芸能人という人気商売的な側面のある人物であることを差し引いても、他者からの評価におびえる(のに過ちを犯す)人間の性(さが)が象徴的に描かれていく。
また、そうした「夫婦」というテーマから派生して進んでいくのが、他者を属性や印象で判断する危うさだ。夫婦はこうあるべき、男はこう、女はこう、といった主張が世の中にいかにあふれているのかを、ダイレクトなものから巧妙に隠されたものまでちりばめていく。
選挙の裏側、芸能界、夫婦――
ゆいが出演するCMやドラマは、そうした価値観の温床だ。物語の筋とは関係ないラブシーンや良妻賢母な像の押し付けといった印象操作、だがその結果獲得したのは「お嫁さんにしたい女優No.1」の座……。大志は大志で、「世襲議員」と揶揄されたりその無能ぶりを面白おかしく描かれたりしているが、その背景にはそう生きるしかなかった御家的な宿命がある。
大志との不倫で失脚したアナウンサーの三俣(織田梨沙)は、「性の搾取」といった主張で世間の同情を引こうとするが、彼女自身も楽しんでいたフシがある。そして、ゆいと急接近する自称アーティストの加納恭二(錦戸亮)は、俗世を捨てたアウトローのようでありながら「子ども=幸せ」という幻想に囚われてもいる。
さらに、大志と想田の公開討論会の場では、有権者を置き去りにした「男女平等」論が交わされていく。「ジェンダーフリーの時代だから」という空気感(トレンドという意識)だけで、市井の人々の声を聴かずに“正義”認定し、物事を進めようとする――私たちがいま現実に直面している国内の政治にも、少なからずそういう風潮がないだろうか?
選挙の裏側、芸能界、夫婦――見やすいルックだが中身はヘビーな『離婚しようよ』。1話約60分×9話というボリュームで展開する意欲作を観終えたとき、あなたの目に現実はどう映るだろう?
文:SYO
Netflixシリーズ『離婚しようよ』2023年6月22日(木)より独占配信スタート