KADOKAWAによるBLドラマレーベル「トゥンク」と連動しながら、毎クールさまざまなタイプの作品を放送するMBS「ドラマシャワー」の第6作目にして初のオリジナル作品『ジャックフロスト』が、CS放送 LaLa TVにて2023年4月30(日)より放送される。
イングランドに伝わる霜の妖精「ジャックフロスト」をモチーフにした本作。イラストレーターの奥沢律が交通事故によって、同棲していた池上郁哉との記憶だけをすっぽり失ってしまう。恋人だった過去と単なる同居人となった現在が交錯する冬の静けさの中、“両片想い”という関係性が丁寧に描かれる。
今回は、律役の本田響矢さんと郁哉役の鈴木康介さんにインタビュー。「夢のような時間を過ごすことができました」という、お二人ならではの役作りや寒い時期の撮影秘話を聞いた。
「雪、白、水色がパッと浮かぶ世界の空気を感じました」
―本作は、2022年4月期から新設された「ドラマシャワー」枠の第6作目にして、初のオリジナル作品です。本作に主演した率直な感想から教えてください。
本田:律には記憶の一部がありません。僕の人生の経験として味わったことがない感情を表現することが大きな挑戦でした。
鈴木:僕は今回が初の主演作品です。お話をいただいた時は「本当ですか? ドッキリじゃないんですか?」と疑いの気持ちがありました(笑)。実際に企画書を読むと、記憶喪失ものは難しそうだなと感じました。切ないお話を演じる上での覚悟が必要ですし、主役ならではの緊張感をじわじわ感じました。
―いたずら好きの霜の妖精ジャックフロストをモチーフにしたロマンあふれる本作の脚本を読んだときには、どんな物語世界を想像しましたか?
本田:ジャックフロストのことは知りませんでしたが、その名前を聞いたイメージとして、雪、白、水色がパッと浮かぶ世界の空気を感じました。脚本を読み込んでいく中で、ジャック・フロストが霜の妖精で、冬の寒さを呼び込んでくる存在なのだと理解を深めていきました。
―鈴木さんはジャックフロストを知っていましたか?
鈴木:僕も、冬のキャラクターとして聞いたことがあるかな、というくらいでした。撮影時期が1月でしたし、僕も響矢くんも色白なので、そのイメージにピッタリな雪国のお話を想像しました(笑)。
―もしかしてお二人は、雪国の出身ですか?
本田:僕は福井県の出身です。まさに雪国です。
―福井の雪道はすさまじいと聞いたことがあります。
本田:大雪の翌日は、仕事が休みになりますね。車社会なので出勤できなくなってしまうんです。だからそんな日は、みんなで雪かきをして道を整備します。
―雪国のリアリティですね。
鈴木:大雪の日は、年に何回くらい?
本田:一昨年が特に大雪だったなぁ。仕事が休みになった友達は、雪かきが大変で「嬉しさ半分、辛さ半分」と言っていました(笑)。
「カメラが回った瞬間に始まる二人の会話を大切にしたかった」
―第1話冒頭が律の誕生日の夜で、まさかケンカからドラマがはじまるとは思いませんでした。ものの1、2分の場面ですが、律がグラスに残った赤ワインを飲みほす瞬間、BLドラマのマナーここにありという感じがしました。
本田・鈴木:なるほど!
―BL世界へ視聴者を誘うために、お二人はどんなことを心がけましたか?
本田:BL作品を見たことがない方にも楽しんでもらいたいと思いました。郁哉を好きな律がいて、律のことを好きな郁哉がいる。二人だけの空間と世界を、いかに楽しんで見ていただけるかと意識しました。
鈴木:ドラマを観てくださった方からは「二人の世界を覗いているかのよう」という声を多く頂いています。意外なアングルのカメラワークなどがあり、律と郁哉の世界を覗き見ているようで、視聴者の方々が没入しやすいのかなと。より自然に入り込めるように、イラストを描く律なら鉛筆の削り方、家事を担当する郁哉なら洗濯物の畳み方など、日常の何気ない動きを意識しました。
―なるほど、確かに日常の中の律と郁哉の表情が素晴らしかったです。郁哉が料理をしている横顔や外で風に髪がなびく顔など表情が豊かに変化し、イラストを描く時の律は、ふわふわしていながらも芯のある雰囲気がある。本田さんと鈴木さんの掛け合いだからこそ、律と郁哉が愛すべき存在に映るんだと思います。このふたりの間に流れる独特な空気感を表現するために、具体的にどんなことを話し合いましたか?
本田:お芝居に関しては、逆に話さないようにして、キャラクターの人間性をそれぞれ監督と話すだけに留めました。「用意、はい」でカメラが回った瞬間に始まる、二人の会話を大切にしたかったからです。
鈴木:(撮影の)スタート前やOKコールが掛かった後は、お芝居に関係のない話ばかりしていました。僕も、なるべくお芝居の中で律と郁哉としていたかったんです。律がどうくるのか? という反応も楽しみでした。
本田:お芝居を大事にするからこそ、全然違う話をしていたんだと思います。それに、律と郁哉の世界に入るためのスイッチを切り替えなくても、自然と切り替わる感覚があったんだと思います。
―カメラの外では他愛のない会話をしながら、いざカメラの前に立つとスイッチが自然と入る。演技のグルーヴ感ですね。
本田:本当にそうですね。
「ところどころ“本田的”に反応してしまう瞬間があって(笑)」
―それにしても、ふたりが恋人だった関係性を取り戻すのかどうか? という設定と、破壊から再生への物語に相手の記憶だけすっぽり忘れることで追加されたリセット機能が新しいなと思いました。
本田:郁哉と行ったご飯屋さんは覚えているのか、いないのか。監督と色々相談して演じながらも、その場で生まれるリアリティを大切にしていました。
―律は郁哉と恋人だったことを忘れ、最初そうとは知らない郁哉は自分たちが別れてしまっただけだと思い込む。恋人だった記憶がただのルームメイトに上書きされてしまったわけですが、この認識の違いが絶妙です。カメラの外ではあまり相談されなかったとのことですが、ああいった心の揺れは、いざお芝居になった時にどうやって滲ませていくものですか?
本田:細かなことなので、視聴者の方に伝わるかはわかりませんが、キャラクターの背景をどれだけ大切にするかで、深みが変わってくると思うんです。律の弟は登場するけれど、他の家族は何をしているんだろうか、友達は多いのか、どういう大学を出て、どういう人生を送ってきたのか……。脚本に書かれていない背景を、クランクインの前にまとめていました。
―演じるキャラクターの履歴書ですね。
本田:はい、履歴書を作って、記憶のニュアンスなど細かなところは監督とお話しました。特に律の心が揺れ動く瞬間は、本番で見えてくる郁哉の表情、動き、声色で反応しています。
―監督からはどんなアドバイスがありましたか?
本田:本番中は目の前で起きていることに対して、本当に“作らない”ようにしていたので、たまに「本田が出過ぎているから、もう少し律っぽく」というご指摘がありました。ところどころ本田的に反応してしまう瞬間があったんです(笑)。
―それが一番出ていたのはどのあたりですか?(笑)
本田:「おいしい!」と反応するご飯の場面だと思います。本田っぽいところは、全部もうワンテイク撮影しています(笑)。
―鈴木さんはいかがでしたか?
鈴木:律がどれだけ忘れているのかを、郁哉が知っていてはいけませんよね。郁哉は普段通りの律として接しているので、記憶がないと知った時のリアクションが勝負です。現場では、響矢くんと監督が話している時、あえて聞かないようにしました。第1話では、それほど郁哉の気持ちの変化はありませんが、逆に律は監督との微調整が多かったので、僕はフライパンを振る練習をしていました(笑)。
『ジャックフロスト』
イラストレーターの奥沢律(おくさわりつ/本田響矢)と営業マンの池上郁哉(いけがみふみや/鈴木康介)。 古びた喫茶店で知り合いやがて恋に落ち幸せな同棲生活を送っていた。しかし自由気ままに生きる律とそれに振り回される郁哉の関係に次第にすれ違いが生じる。 ある冬の日の喧嘩の後、家を出た律はアクシデントに巻き込まれ意識を失う。 目覚めると律は郁哉の記憶だけを失っていた。
二人の関係性をゼロからやり直したいという思いから郁哉は律に付き合っていた事実を伏せて共同生活を再開。 ところが律は記憶を取り戻す為、自分の馴染みの場所に連れて行って欲しいと言い出す。 気が乗らない郁哉だったが、二人で交際の軌跡を辿る“旅”を始めることになる。 初めて出会った喫茶店、いつも散歩していた川辺の道、付き合う前に二人で旅した場所…。 甘い記憶とほろ苦い記憶、二人の時間が郁哉の脳裏を過る。一方、律は記憶を失ったまま、次第に郁哉に惹かれて行く自分に気付き――。
脚本:安川有果 高橋名月 船曳真珠 監督:安川有果(『よだかの片想い』
出演:本田響矢 鈴木康介 森愁斗 祷キララ 松本怜生 ほか
監督:安川有果(『よだかの片想い』)
高橋名月(『左様なら今晩は』)
制作年: | 2023 |
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2023年4月30日(日)よりLaLaTVで放送