ロボット社会、女性迫害……Huluプレミアはディストピアまつり!?
ロボットに依存する世界『ヒューマンズ』
今もっとも熱視線を浴びるアジア系女優といえば? そう、『クレイジー・リッチ!』『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』『キャプテン・マーベル』など話題作/大作に出演しまくっているジェンマ・チャン! オックスフォード大学で法律を学んだ経歴を持つジェンマが主演しているドラマシリーズが、Huluで独占配信中の『ヒューマンズ』だ。
物語の舞台は近未来のイギリス。超高性能ロボット“シンス”が人間に変わる労働力として普及し、その存在に依存しつつある世界。ジェンマ演じるロボットのアニータはある家庭に迎えられるが、ロボとはいえ見た目はセクシー美女のアニータだけに子どもたちに大きく影響を与えてしまう(特に長男、そして幼い末っ子にも……)。まあそれ以上に「倫理的にどうのこうの」と大人たちが翻弄されまくりなのだが。
そんな中、アニータ自身にも原因不明のトラブルが頻発したり、実は中古品だった(過去の記憶が残っている)ことが判明したり、同じような他のシンスたちと勝手に合流したりと、もう序盤はしっちゃかめっちゃか。しかし、フラッシュバック的に描かれるアニータの過去の記憶(?)との間隔が徐々に狭まり、何やら不穏な陰謀/大きな秘密がチラつき始める。
本作のシンスたちは『ブレードランナー』(1982年)のレプリカントよりもだいぶロボロボしているものの、いざ感情が芽生えたシンスはほとんど人間と見分けがつかないくらいに生き生きとしていて魅力的。基本的な世界観と主要相関図を踏まえてのシーズン2では「あ、これ自我っすね」みたいに完全に自覚したシンスまで登場し、新たなキャラクターを含め1人1人(1体1体)の内面にも踏み込んでいく。バイオレンス描写も多くなるが、そこまで悲壮感が漂ってこないのは個性豊かなシンスたちの魅力のおかげだろう。
あまりに人間らしいシンスたちには「人類と同等の権利を与えて!」と肩入れしたくなるが「後のターミネーターである……」みたいな事態になっても困るので悩ましいところ。ともあれ『ヒューマンズ』は2019年5月15日(水)からシーズン3も配信スタート!
https://www.youtube.com/watch?v=BtEAj6qU-Ns
ショック度No.1!『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』
言わずもがな、2017年のエミー賞で作品賞を含む計8部門を受賞したHuluオリジナルドラマ! あらすじを説明するだけでしんどいのだが、超ざっくり言うと「出生率が著しく低下した近未来のアメリカで、キリスト教原理主義者による全体主義国家<ギレアド共和国>が興り、女性の尊厳がメッタメタに踏みにじられる」物語である。
……何それ意味わかんないんだけど!? という怒りの声が聞こえてきそうだが、その理解不能な管理社会がリアルに描かれるから恐ろしいのだ。主人公のジューン/オブフレッドは、上級国民たちの子どもを身ごもるためだけの奴隷=侍女として人権を剥奪された女性。夫と娘と引き離され、様々な境遇の侍女たちと共に強制的な妊活に従事させられることになる。この描写が控えめに言っても“地獄”そのもの!
女性は財産を持つことも学習することも禁じられていて(違反すると指を詰められたり目をえぐられたりする)、侍女は所有者から“儀式”と称して性行為を強要され、生殖能力を持たない女性は強制収容所で核汚染物質の処理作業をさせられる。そんな非道が「さきほど法律が変わりましたので」の一言で施行される恐怖たるや……。
ここ数年の海外ドラマの中でもショック度は間違いなくナンバーワンだが、性別や人種、LGBTQなど多くのテーマを盛り込み視聴者の共感を集めたのが大ヒットの所以だろう。そしてなんといっても、人間としての芯の強さがにじみ出るジューンを演じたエリザベス・モスが素晴らしい。豊かな愛情と屈強な精神力、本能的なサバイバル能力を兼ね備えたジューンがいなければ、この物語は成立しなかったはずだ。
シーズン1はひたすらキツい描写が続くが、シーズン2でも侍女たちへの虐待行為が止むことはない。しかし終盤、侍女を管理し訓練するババアや所有者のクソオヤジたちに反撃の狼煙をあげる展開にはガッツポーズ必至! ジューンが孤独に出産する様子は思わず一緒にイキんでしまうリアルさで、このシーンのためだけにでも観る甲斐あり。さらに超衝撃的なジューンの“ある決断”で終わるシーズン2、ここで言えるのは「とりあえずカナダ最高!」くらいである。
そういえば女性に対して「生む機械」とかほざいた議員がいたが、あの件が海外で報じられた際には「日本にギレアド共和国の人間がいるぞ!?」なんて揶揄されたことだろう。ああ恥ずかしい。
https://www.youtube.com/watch?v=LHUDszG7n4Y
特殊能力×青春ストーリー『マーベル クローク&ダガー』
アメコミ好き以外にはスルーされているかもしれないが、非アメコミ者にもぜひオススメしたいマーベルドラマ、それが『マーベル クローク&ダガー』。コミックではとある実験によって特殊能力を得た男女の物語で、このドラマでも白人の少女タンディと黒人の青年タイロンが謎の能力に翻弄されつつも、徐々に運命を受け入れていく姿を描いている。
このドラマ版は、主人公2人がまだティーンエイジャーというのが大きなポイント。あくまで家族関係や恋愛に揺れ動く多感な心理描写がベースであり、それぞれ“光と闇”を司る能力を駆使して様々な問題に折り合いをつけていく……というのがキモだ。決して品行方正とは言えないホームレス状態のタンディと、名門校でスポーツに打ち込むが目の前で兄を亡くした過去を持つタイロン。生活環境も抱えた闇も異なる2人だが、お互いに過去の暗い事故に迫っていくうちに不思議と心が交わっていく。
ちなみに『アイアンマン』シリーズほか多くのマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品に登場する企業<ロクソン石油>が暗躍していることが示唆されるので、同じ世界を共有していると思われる。今後MCUとの合流はあるのか? 期待は尽きないが今のうちにチェックしておいて損はないだろう。なおHuluでは同じくティーンエイジャーが主人公のヒーロードラマ『ランナウェイズ』も配信中なので、特殊能力×青春物語(+強大な陰謀)がお好きな方はぜひ併せてチェックしてみては?
https://www.youtube.com/watch?v=1QkPLxqWxrI