中国や台湾などの中国語圏のエンタメを指す「華流(ファーリュー)」。日本でこの言葉が広まったきっかけは、なんと言っても漫画『花より男子』を原作とした台湾ドラマ『流星花園〜花より男子〜』(2001)だ。日本を含めた16の国と地域で放送され、各国で大ヒット。少なくとも5億人以上が視聴し、その記録は今も更新され続けている。
その『流星花園』で大ブレイクし、デビュー以来、華流の第一線を走り続けている一人がヴィック・チョウ(周渝民)である。彼の魅力を出演作とともに紹介したい。
華流の申し子ヴィック・チョウ
1981年6月9日、台湾北東部の宜蘭(ぎらん)県出身のヴィック・チョウ。愛称は仔仔(ザイザイ)。
非常に端正な顔立ちと、ふとした瞬間に見せるはにかんだ笑顔やアンニュイな表情のギャップが魅力的。見るからにシャイな雰囲気を持つ彼の俳優デビュー秘話は、とても劇的である。
2001年、当時19歳だったヴィックは友人の付き添いでオーディション会場を訪れたところ、「台湾ドラマの母」の異名を持つヒットメーカーのアンジー・チャイ(柴智屏)の目に止まり、ドラマ『流星花園』の花沢類役に抜擢、芸能界デビューを果たしたのだ。
「流星花園~花より男子~」(2001)
— エスピーオー公式_アジアドラマ (@SPO_asidra) April 14, 2017
伝説はここから始まった…「花より男子」の世界観を忠実に再現!アジアのスーパースターを生んだ永遠の大ヒットラブストーリー
出演:バービィー・スー、 ジェリー・イェン、 ヴィック・チョウ、 ケン・チュウ、 ヴァネス・ウー#SPO30th pic.twitter.com/pxpvB5V6Qu
花沢類というキャラクターは無口でマイペースという性格で、元々シャイな性格のヴィックにとってハマり役、彼の魅力を存分に引き出した。天性のイケメンぶりとデビュー間もない危なげな初々しさはファンの心をガッチリとつかみ、ヴィックは一躍トップスターに。彼のスター性を見抜いたアンジー・チャイは神の目を持っているのかもしれない。
さてドラマのメガヒットの波に乗って、ヴィックは共に学園の御曹司軍団<F4>を演じたジェリー・イェン(言承旭)、ヴァネス・ウー(呉建豪)、ケン・チュウ(朱孝天)らと<F4>の名称でアイドルデビューをし、これまたアジアを席巻! 中国と台湾のイケメン史を大きく塗り替えていった。<F4>は2005年には日本デビューも果たし、2008年には武道館コンサートも行っている。
『流星花園』の後もヴィックの快進撃は続く。アイドル性の高い俳優陣によるラブロマンスを主題にした「アイドルドラマ」と呼ばれるジャンルで数々の主演を務め、特に『山田太郎ものがたり ~貧窮貴公子~』(2001年)、『部屋(うち)においでよ』(2002年)、『戰神 〜MARS〜』(2004年)など日本の漫画を原作としたドラマに多数主演。これらは日本でも放送され、華流王子と言えばヴィック、日本で最も知名度の高い華流スターの一人になったのだ。
『#山田太郎ものがたり~貧窮貴公子~』
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『流星花園~花より男子~』花沢類役でデビューした #ヴィック・チョウ 主演😃
原作は森永あいのコミック💕貧乏一家を支えるイケメン山田太郎が繰り広げる貧乏生活ストーリー😊#UNEXT #台湾ドラマ #周渝民https://t.co/WRlQTaGedl
アイドル絶頂期に訪れた転機
そんなアイドル無双状態だったヴィックにも、30歳を過ぎた頃に転機が訪れる。2012年に終戦前後の東アジアを舞台にした歴史ドラマ『回家』(日本未公開)に主演。旧日本軍に軍医として強制徴用された台湾人青年を熱演し、2013年に台湾版エミー賞こと<金鐘奨>で主演男優賞を受賞したのだ。
この頃から台湾におけるヴィックのイメージはイケメンアイドル俳優から、実力派俳優という評価へと変わっていく。
ヴィックは後に台湾メディアの取材に対し「アイドルとしてデビューしたので、どうしても役者というよりアイドルの枠の中で見られることが多かった。でも金鐘奨が、僕は確かに役者なんだと証明してくれた」 と振り返っている。
確かにヴィックはその圧倒的なビジュアルからイケメン俳優枠に数えられていたが、そもそも役に対しストイックで勤勉という一面も持つ。役者としてさらに飛躍するためにアイドルドラマとは距離を置き、歴史小説を原作にした香港映画『楊家将 ~烈士七兄弟の伝説~』(2013年)、ファッション誌を舞台にしたコメディ『與時尚同居』(2011年)、父子の情愛を描いた感動作『新天生一對』(2012年)と、映画出演やモデル業へ軸足を移していった。
長き沈黙を経て中国時代劇でドラマ復帰!
さて映画で活躍しつつも、『回家』を最後にドラマへの出演がなかったヴィック。アイドルドラマから遠ざかったせいか、2010年代は日本で紹介されるヴィック出演の作品は多くはなかった。
だが2018年! 長き沈黙を経て、なんと中国時代劇でドラマ復帰!『皇帝と私の秘密 ~櫃中美人~』、『如歌 ~百年の誓い~』と立て続けに主演作が公開され、日本にも上陸したのだ。
その後も北宋時代を描いた大型ロマンティック時代劇『大宋宮詞 ~愛と策謀の宮廷絵巻~』(2020年)に主演。戦場で出会った平民の娘を愛し、妻にし、後に皇帝となり夫婦で助け合っていくというドラマティックな役柄で、戦乱という極限の中で生まれた愛を、帝位争いにおける複雑な感情を、そして威厳ある皇帝の姿をと一作の中で様々な姿を演じている。まさにヴィックの天性のビジュアルと磨き上げた演技力が大いに生かされた役どころだと言える。
ついに台湾ドラマにも復帰!
このまま活動の場を中国に軸足を移すかと思われていた2021年。ヴィックは約9年ぶりに台湾ドラマにも復帰! サスペンス・アクション『追撃者 ~逆局~』に主演し、ある事件に関与し拘留された弁護士リャン・イェンドンを好演している。劇中では「弁護士」「プロファイラー」「受刑者」の3つの顔を見事に演じ分け、その演技力が高く評価された。
また、ヴィックはリャンが拘置所で暴行を受けるシーンでは納得するまで何度も殴られて撮り直すという高いプロ意識を見せ 、若手俳優によい刺激を与えたという。彼の役へのひたむきな姿が後進を育てているのだ。
今後、彼はどんな場所で活躍していくのだろうか。ヴィックはオファーを受ける際は「作品の規模ではなく、脚本を見て検討している」と話す。今後はホウ・シャオイエン氏プロデュースの映画「車頂上的玄天上帝」(仮題、2023年台湾公開予定)に主演予定だ。華流と共に舞い降りたスターは今も華流の第一線を走り続けている。
文:沢井メグ
『大宋宮詞 ~愛と策謀の宮廷絵巻~』はチャンネル銀河で2022年9月23(金)より放送
『大宋宮詞 ~愛と策謀の宮廷絵巻~』
蜀の平民・劉娥(りゅうが)は、北宋の第3代皇帝・真宗(しんそう)が皇太子になる前の襄(じょう)王だった頃、命を救ったことがきっかけで彼と愛し合うようになる。真宗の正室・郭清漪(かくせいい)や側室・藩玉姝(はんぎょくしゅ)の存在、劉娥の身分を問題視する宮廷と朝廷からの反対など、様々な逆境の中でも、愛に生きることを決意する劉娥。ところが、真宗との間に生まれた趙吉(ちょうきつ)が太子になってもなお、宮中に迎えられずつらい時期を過ごす。そんな中、敵国・遼が和睦の条件として両国の皇子を相手国へ人質に送ることを提案してくる。真宗は朝廷に劉娥を認めさせるため、趙吉を遼に送ることを決めるのだが……。
監督:リー・シャオホン
脚本統括:チャン・ヨンチェン
出演:リウ・タオ ヴィック・チョウ
リャン・グァンホア チー・シー ツァオ・レイ
制作年: | 2020 |
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チャンネル銀河で2022年9月23(金)より放送