『スター・ウォーズ』新三部作の続編
『オビ=ワン・ケノービ』はスター・ウォーズ×ディズニープラスの実写ドラマ化シリーズ最新作です。この座組で、すでに傑作『マンダロリアン』(2019年~)と『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』(2021年~)を送り出しているので、第三弾ということになりますが、今までのドラマとはかなり趣の違う作品です。
というのもスター・ウォーズというのは、基本的に映画はスカイウォーカー家のドラマ、ジェダイのお話です。しかし、実写ドラマの方はジェダイ以外の設定やキャラにスポットをあてています。つまり映画を基本とするならば、ドラマは映画のスピンオフ的立ち位置です。ですが、この『オビ=ワン・ケノービ』は映画『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2003年)のストレートな続編であり、映画でも重要な役割を果たすジェダイの騎士オビ=ワン・ケノービの物語なのです。
しかも本キャラを演じているのは、映画と同じくユアン・マクレガー(彼は本作の製作総指揮も務めています)です。だから『マンダロリアン』『ボバ・フェット』に対しては、スター・ウォーズの世界観を使った新しいドラマが観れる、という喜びだったのですが、この『オビ=ワン・ケノービ』については、『エピソード1/ファントム・メナス』(1999年)、『エピソード3/クローンの攻撃』(2002年)、『エピソード3/シスの復讐』(世に言うスター・ウォーズ新三部作)の正統な続きを17年ぶりに楽しむことが出来るということに興奮してしまいました。
本ドラマが映画につながるものであるというのは、実は第1話の冒頭でハッキリします。いわゆる連続ドラマの定番である“前回までは”という振り返りがちゃんとある。その振り返りシーンは『ファントム・メナス』『クローンの攻撃』『シスの復讐』のダイジェストなのですから!
オビ=ワンとレイアの交流
『オビ=ワン・ケノービ』は『シスの復讐』で起こった事件から10年後という設定です。銀河皇帝&帝国の奸計により銀河を守ってきたジェダイの騎士たちのほとんどは粛清されました。それでも帝国は生き残ったジェダイの残党狩りを続けています。このジェダイ狩りの任務に就いているのは“審問官”と呼ばれる残忍な連中。伝説のジェダイであるオビ=ワンはその正体を隠し、惑星タトゥイーンで暮らしています。彼の使命は、ある少年の成長を見守ること。アナキン・スカイウォーカー(後のダース・ベイダー)の息子であるルークです。
『シスの復讐』の時に赤ん坊だったルークは、このドラマでは既に10歳の少年になっています。僕らは『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977年:事実上のシリーズ1作目)において青年ルークとオビ=ワンが出会うことを知っているので、きっとこの『オビ=ワン・ケノービ』は彼が影で少年時代のルークを守りながら、帝国軍と戦うというストーリーを想像していました。しかし、それは見事に裏切られました。
ご存じのようにルークにはレイアという双子の妹がいます(この時点ではルークもレイアもその存在をお互いに知らない)。なんとオビ=ワンは、とある理由からレイアを守るために冒険の旅に出かけるのです。オビ=ワンとルークのつながりが強かったので、この展開は盲点でした。僕は勝手にレイアはお姫様としてすくすく育ったという印象をいだいていたのですが、レイアもまた大変かつ波乱万丈の人生を送っていたのですね。オビ=ワン・ケノービの復活がルーク起点ではなく、きっかけはレイアだったことが新鮮でした。
今回のドラマを観ていると、なぜ『新たなる希望』でレイアがオビ=ワンに助けを求めたのか、言い換えればレイアがオビ=ワンをそこまで信頼する根拠はなんだったのか? が納得できます。
ユアン・マクレガーが実娘と共演!?
少女の危機を守るヒーローというわかりやすいお話でもあるので、『スター・ウォーズ』シリーズを今まで観ていなくてもすんなり楽しめる導入だと思います。とはいえ、スター・ウォーズ好きを熱狂させるネタもたっぷり。例えばオビ=ワンがまたがっている不思議な四足の馬というかアリクイみたいな動物は『シスの復讐』で彼が乗っていたものと同じです。また、『新たなる希望』でルークの部屋にあった宇宙船のおもちゃが、実はオビ=ワンからのプレゼントだったこともわかります。
さらに、すっかり落ちぶれたクローン・トルーパーの戦士がさりげなく出てきますが、この役を演じているのは『ボバ・フェット』のテムエラ・モリソン。それはそうですよね。なぜってクローン・トルーパーもボバ・フェットもジャンゴ・フェットのクローンですから“同じ顔”のハズです(笑)。
今回のヴィランは“審問官”ですが、この設定はスター・ウォーズのコミック、ゲーム、CGアニメ・シリーズに登場しており、初の実写化。ちなみにスター・ウォーズのゲームには“セカンド・シスター”という黒人女性の審問官が出てきますが、本ドラマには“サード・シスター”という黒人女性の審問官が登場。彼女の制服はゲームでセカンド・シスターが着ていたものと同じです。このへん、何かつながりが語れるかも。
さりげなく豪華キャストも出ており、『エターナルズ』(2021年)のキンゴことクメイル・ナンジアニが偽ジェダイのハジャ役、『ワイスピ』シリーズ(2006年ほか)のハンことサン・カンが審問官フィフス・ブラザー役です。また、オビ=ワンにスパイス(この世界における麻薬みたいなもの)を売りつけるパンクな少女は、ユアン・マクレガーの娘エスター・ローズ・マクレガー。そう思ってこのシーンを見直すと、結構意味深な会話をしています(笑)。
第2話までは、まだオビ=ワンがライトセーバーを使うシーンがないので、いつ彼がライトセーバーを振り回すかが楽しみ。そしてダース・ベイダーとの再会も待ち遠しい。スター・ウォーズはやっぱり面白い! と再認識させてくれるドラマです。
文:杉山すぴ豊
『オビ=ワン・ケノービ』は2022年5月27日(金)よりディズニープラスで独占配信中
『オビ=ワン・ケノービ』
ダース・ベイダーはジェダイを抹殺し銀河を支配しようとしていた。ベイダーら帝国軍から追い詰められていくオビ=ワン・ケノービ。幼きルーク・スカイウォーカーを見守りながら、オビ=ワンはたった一人でシスの暗黒卿にどう立ち向かっていくのか……。
監督:デボラ・チョウ
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ユアン・マクレガー ヘイデン・クリステンセン
制作年: | 2022 |
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2022年5月27日(金)よりディズニープラスで独占配信中