向井理+北村有起哉×おとりよせ
コロナ禍で、できるだけ外食を控えている人も多いだろう。テレビで名店を紹介していても、実際に足を運びづらい世の中になってしまった。美味しそうなグルメが目に入るたびに「ああ、悔しい……」と何度思ったことか。何も気にせずに、いろんなお店に行けていた頃の生活に早く戻ってほしい。ただ、それにはまだ時間を要しそうだ。
こんなご時世でも、何か楽しみを見つけたい。そんなことを考えていた時に、ドラマ『先生のおとりよせ』(テレビ東京)がスタートした。ドSで無愛想な官能小説家・榎村遥華(向井理)と、ドMでフェミニンな漫画家・中田みるく(北村有起哉)が繰り広げる“おとりよせライフ”を描いた作品だ。
さすが、『孤独のグルメ』シリーズ(2012年ほか)や『きのう何食べた?』(2019年ほか)、『忘却のサチコ』(2018年ほか)など数々のグルメドラマを生み出してきたテレビ東京である。とにかく、グルメの“映え”っぷりがすごい。そこに、なんとも美味しそうに食べる演者たちのショットが加わると、ますます食欲が掻き立てられる。深夜帯に放送されているドラマなので、なるべく満腹状態で視聴するようにしているのだが、それでも胃袋がキュッと刺激される。
本作がタイトルに冠している“おとりよせ”は、何かと鬱屈な気分になりがちなこのご時世で、無限の可能性を与えてくれる存在だ。「おとりよせは、家にいながらにして、大自然、大都会、地球の裏側にまで連れて行ってくれる究極の娯楽」とは、劇中における榎村の言葉。もちろん、作品に登場するおとりよせグルメは実在するものを軸としているので、私たちも購入することができる。レンジで温めたり、ちょい足しアレンジをしたり……。ドラマ内ではオススメの調理法まで教えてくれるから、思わずポチりたくなることだろう。
おとりよせグルメが正反対な2人の距離感をじわじわ縮めていく
そんな“飯テロ”が魅力的な作品ではあるが、グルメを通して絆を深めていく榎村と中田の関係性も、かなり尊い。官能小説家と漫画家である2人は、編集部から共同で作品をつくることを提案される。たしかに、榎村のアイデアと中田の画力があれば、無敵な作品ができあがることだろう。しかし、何もかもが正反対な2人は、磁石のS極とN極のように反発し合う。そんな彼らを結びつけるのが、“おとりよせ”というわけだ。じわじわと距離を縮めていく2人に、もどかしさを感じながらも引き込まれてしまう。
向井理が演じている榎村は、クールでカッコつけているのに、おとりよせのことになると急にアツくなるという、ちょっぴり変わり者。最近はスマートな男子を演じることが多い向井が、子どものように口を尖らせたり、おとりよせグルメを食べたいあまり本気で拗ねたりする、「こんな向井理、見たことない!」という表情を堪能できるのも本作の醍醐味である。
そして“フェミニン男子”という絶妙な役どころを、繊細に演じているのが北村有起哉。オネエキャラではないけれど可愛らしさを醸し出している中田、そのさじ加減が見事である。彼のお節介すら愛おしく思えるのも、北村が演じているからこそなのだろう、つい許してしまいたくなる愛らしさがあるのだ。
おとりよせで育まれた2人の関係は、今後どうなっていくだろうか。共同制作する作品は、いつ完成するのか? まだまだたくさんの謎を秘めている『先生のおとりよせ』。いつでもおとりよせグルメを注文できるように、スマホを握りしめながらドラマを楽しんでいきたい。
文:菜本かな
ドラマ25『先生のおとりよせ』はテレビ東京ほかにて毎週金曜日 深夜0時52分から放送中/Amazon Prime Videoで独占配信中
『先生のおとりよせ』
出会う前からお互いの作品のファンであったが、実際に会ってみると想像とは違うルックス・性格にショックを受ける二人……。そんな二人は、唯一「おとりよせ」の趣味が合うという共通点から徐々に心を開いていき……。
全国津々浦々の「おとりよせ」の品々と、美味しいものには飽くなき探求心を見せるイケメンおじさん作家ふたりの、笑えて時にはグッとくる新感覚コメディ×グルメドラマ。
監督:守屋健太郎 本間利幸 保坂克己
脚本:三浦希紗 谷口純一郎 藤平久子
出演:向井理 北村有起哉
橋本マナミ 神尾楓珠 財前直見
制作年: | 2022 |
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