ニコケイが“ののしりことば”の歴史を案内
ストレスを感じたときに「クッソー!」とか「チキショー!!」と叫ぶと少しだけ心が晴れるし、机の角に小指をぶつけたりしたときにはなんとなく痛みが鎮まる気がする……。こういった感覚は世界共通のようで、日常会話でもそういった“卑語”が多用されている(しない/気をつけている、という人も当然いるが)。
その代表的なものといえば「FUCK(ファック)」だが、では日本人が「性交!」と叫ぶかというとそんなわけはなく、英語圏における卑語は独自の進化を遂げた文化として日々変化・進化し続けている。しかし、なぜそれらは本来の意味を逸脱し“卑語”として定義されるに至ったのか? まさにそんな疑問に対して、歴史や進化、文化的影響などを通して大真面目かつ懇切丁寧に説明してくれるのが、Netflixのコメディシリーズ『あなたの知らない卑語の歴史』だ。しかもホストを務めるのは、我らがニコラス・ケイジである!
使えばテンションぶち上がり!?「FUCK(ファック)」
外角低め狙いのニコケイ起用ここに極まれりという感じだが、本人もアカデミー俳優としての貫禄を惜しみなく振りまいていて実に楽しそう。たまには極端にプレッシャーの少ないカンペ読み仕事も必要だよな……と思わず笑顔になってしまう味わい深さ。そして第1話で解説される卑語は、もちろん「FUCK」である。
悪い意味でも良い意味でも使えるという部分では日本語の「ヤバい」に近いかもしれないが、その複雑さは比べるべくもない。しかし、数千年の歴史を持つという「FUCK」が初めて生まれたときには、「性交」という意味はなかったという。その語源の真実にはやや拍子抜けするものの、「性交」以外の意味で使用される場合は比喩表現がほとんどであり、それは長らく禁句とされてきたことによって逆に応用範囲が広がったから、という説はとても興味深い。
さて、映画界の「FUCKマスター」といえば“マザファッカおじさん”ことサミュエル・L・ジャクソンだが、実は映画における「FUCK」使用回数ナンバーワン俳優は意外な“あの人”だった! という調査結果にも驚き。映画に関する言及では他に、日々ポルノサイトをパトロールしている紳士諸君にはお馴染みの「MILF(魅力的な人妻)」の出どころも知ることができて、少し得した気分(?)になる。ジョン・チョーも、まさか自分のセリフがここまで定着するとは思いもしなかっただろう。
単なるう○こに非ず! より汎用性の高い便利な卑語「SHIT(シット)」
第2話は「FUCK」と並ぶ2大卑語のひとつ、ご存知「SHIT(シット)」だ。本来の意味は言わずもがな「排泄物」、要するに“う○こ”だが、その使われ方は日本男児大好きワード「う○こちん○ん」などとは一線を画す。
こちらの起源もアングロサクソン時代、つまりイングランド創生までさかのぼる。単なる排泄物を意味する言葉だったものが、やがてプライバシーの概念の変化によって次第にタブー化していったことで卑語とされるようになったというのは「FUCK」とも共通する部分があり、なかなか示唆的な説だ。
「Bitch」「Dick」「Pussy」……つい言葉に出したくなる卑語を正しく学ぼう!
80年代アメリカでは卑語を巧みにリリックに盛り込むヒップホップが隆盛し、その悪影響を恐れた保守的な人々によって「ペアレンタル・アドバイザリー(保護者勧告)」シールが登場。ところが保守層の検閲行為によって卑語はますます発展し、刺激を求める若者はむしろシール付きのレコードを進んで買い求めるようになる。日本では歌詞に「ヤバい」とか「エグい」を多用しても検閲されることはないが、やはり卑語には秘めたるパワーがあるということだろう。
同シリーズのシーズン1では、他にも「Bitch(ビッチ)」「Dick(ディック)」「Pussy(プッシー)」など、つい言葉に出したくなる卑語を解説。大声で発すれば脳内でアドレナリンが分泌されるそうなので、心身に痛みを感じたときは、(TPOに配慮しつつ)ぜひ叫んでみては?
『あなたの知らない卑語の歴史』はNetflixで独占配信中
『あなたの知らない卑語の歴史』
ニコラス・ケイジが進行役を務め、英語の代表的卑語を紹介するシリーズ。興味深い史実やジョークを交え、“ののしりことば”の歴史や文化的影響を探っていく。
制作年: | 2021 |
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監督: | |
出演: |