にわかに流行中“ループもの”設定の連続ドラマ!
「ループする話」って好きですか? 僕はかなり好きです。Wikipediaでは「ループもの」の項が充実していて、歴史や型の分類、社会学的観点からの批評などが紹介されており、それを読んでいるだけで時間がかなり過ぎてしまいます。
僕はというと、ループを重ねるごとに少しずつ登場人物がとる行動によって生まれる“差”を見ているのが好きなんだということに気づきました。ただ、ふと考えた時に、それって自分が好きな楽曲の構造と一緒だなと気づいて、この嗜好の元はなかなか根深いところにあるように思いました。
そんな話をしたのかしていないのかちょっと忘れましたが「川辺くんが好きそう」と勧めていただいて見たら、まんまとハマったのがNetflixオリジナル作品の『ロシアン・ドール:謎のタイムループ』です。
探偵モノのような推理展開にハマる! 1エピソード約30分の手軽さも魅力
“ロシアン・ドール”はマトリョーシカ(ロシアの民芸品)のことであり、ループのモチーフではありますがロシアは関係なく、アメリカが舞台。36歳でニューヨークに住む主人公ナディアはトイレで意識を取り戻し、誕生日を友人たちに祝ってもらうのですが、ひょんなことで死んでしまいます。そしてトイレからやり直す、というのを繰り返します。ループの型でいうとオーソドックスであり、それ自体に新しさがあるわけではないのですが、ナディアの少々ややこしい性格とそれに伴う日頃の行動や、当人も忘れている出来事が話を複雑にしています。
そのこんがらがった結び目を、一つ一つループして解いていく作業はなかなかスムーズにいかないこともありじれったいのですが、探偵モノのような推理と検証がひと癖あり、一気に見てしまいました。また、キャストたちの演技とは思えないほどのナチュラルさが見どころのひとつでもあるのですが、ナディアを演じるナターシャ・リオンは本作で共同プロデューサーおよび監督を務めており、ひょっとして普段の自分そのままを役柄にしたのかなと思いました。
連続ドラマではあるものの、1話あたり約30分で全8話と、サクッと見られてしまうボリューム感なので、ドラマが苦手な人にもおすすめです。何度も何度も流れるハリー・ニルソンの「Gotta Get Up」はとてもいい曲なのですが、何度も1日をやり直すナディアの疲弊とともに、だんだん聴くのもウンザリしてきます。2019年の2月に公開されてすぐシーズン2の製作も発表されたので、未見の方はぜひチェックしてみてください。
文:川辺素(ミツメ)
『ロシアン・ドール:謎のタイムループ』はNetflixで独占配信中
『ロシアン・ドール:謎のタイムループ』
超現実的なタイムループに入り込んだナディア。36歳の誕生会の夜を繰り返し体験する彼女は、何度も訪れる自らの死から逃れられなくなる。
制作年: | 2019 |
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出演: |