ステイホームならぬ玉ホーム! 自宅でプロレスDVDを観る日々!
コロナ騒動の外出自粛でステイホームの日々。ロケを中心とした芸能活動のオレの仕事は「濃厚接触」が常だったわけ。考えてみりゃ今じゃ忌み嫌われる「3密」だけども、それでオマンマ喰ってたと思うと逆に3密に感謝という念まで湧いてきた。
というわけで、スナック番組~町中華番組のロケはすべて吹っ飛び、自宅待機の日々。でも我々は、自宅に籠もっても有意義な時間を過ごす術を持っているのだ。それがムービープラスやらネット配信やら、オレの現在の仕事のように枯れることなく、豊穣の映像の大海に身を投じて夜が明けるのを待つのだ。自宅に籠もりっきり状態のオレの場合は「ステイホーム」じゃなく「玉ホーム」だな。家で一人でロビンソン・クルーソーか『オデッセイ』(2015年)のマット・デイモン状態だよ!
https://www.instagram.com/p/B_mdsafDoqo/
そんなオレが自宅でなにをしているのか? 殆どFANZAのエロで抜いてるんだよね。見放題会員だから25万本見放題なんだよ! 本当に動画配信に感謝だ! で、今回はそのFANZAの中で俺がヘビーローテーションで抜いている熟女優、浅井舞香の作品を紹介しようと思ったんだが、美人編集女史より言下に却下されてしまった!
ならば、エロ以外になに観て自宅で過ごしているかっていうと、プロレスのDVDを観まくってビール飲んでるのが実情なのである! しかも観ている団体は<国際プロレス>という、渋めのチョイス。国際プロレスは昭和プロレス戦国時代にアントニオ猪木率いる<新日本プロレス>、ジャイアント馬場率いる<全日本プロレス>という2大団体の影に隠れるように実在した団体でね。最後はエースをラッシャー木村が務め、レスラーは地味だけども試合は派手に“金網デスマッチ”なんて頑張っていたが、経営が破綻して寂しく団体が潰れちゃうという結末を迎えたんだ。
https://www.instagram.com/p/B_PrGlFDgNp/
勧善懲悪の“成立”か? 破綻を楽しむ“不成立”か? プロレスの奥深さ!
プロレス映像っていうのは、現在、公式で配信しているチャンネルも多数あるけれども、昔、まだネットやら何やらが拡がらない時分に“プロレス裏ビデオ”っていうのが実在したんだな。プロレス会場の前で違法に売っている、ダビングにダビングを重ね「洗濯屋ケンちゃん」状態のプロレス裏ビデオをトラッキング調整しながら観ていたんだ。
伝説のシュートマッチ「アンドレ・ザ・ジャイアントvs前田日明」、後楽園ホールの「前田日明、長州力 顔面襲撃試合」、「前田日明vs佐山聡」なんかを「たみゃらん」という気持ちで観ていたんだよ。まぁ、今はネットで全部観れちゃう映像だけども、当時はやっぱり貴重な映像で、興味津々プロレスの奥深さを勉強させてくれたんだ。で、なんで「プロレス裏ビデオ」ってことになるのか? そして、なんでオレたちがそっちの映像に夢中になったのか?
プロレスの楽しみ方は人それぞれで、プロレスファンになりたての頃はベビーフェイスがヒールをとっちめて“成立”する「水戸黄門」的にプロレスを楽しむファンが最初でね。でも、そればかり観ているとたまに起こる“不成立”を楽しみにして「裏ビデオ」に走り出す、擦れっ枯らしのプロレスファンとなるんだよ。通過儀礼として“成立”から入り、“不成立”を楽しむファンになる人が多いんだな、オレを含めて。
https://www.instagram.com/p/B3Psfkmjtci/
こういうのはジャンルとしては珍しいよ。相撲にはかなりその要素が入ってるけども(日本のプロレスの父・力道山は相撲出身だったしね)、他のスポーツでこういう形で変なファンを熟成させるジャンルっていうのはプロレスだけだ。そういうわけで今回紹介する作品は……
全国一千万人のプロレスファンの皆様、お待たせいたしました。外出自粛にもってこいの、とんでもないプロレス映像がHulu等で配信されています。『ダーク・サイド・オブ・ザ・リング』! こりゃ「ロード・オブ・ザ・リング」を軽く超える作品だぜ! さぁ編集部の方、詳細よろしく!
『ダーク・サイド・オブ・ザ・リング』:
鍛え上げた屈強な体で流血もいとわないド派手な戦いを繰り広げるプロレスラーたちは、“虚構の世界”と揶揄されるリング上よりもドラマチックな人生の主人公だった……。新旧様々な有名レスラーたちの壮絶な生き様から、彼らの“真の姿”を映し出すドキュメンタリー。
リングという晴れ舞台の裏には、語られることのなかったストーリーが眠るダークサイドが広がっている。虚構と現実という2つの世界を生きるプロレスラーたちを追った「ダークサイド・オブ・ザ・リング」配信中。https://t.co/LZ8D8cEGkl#viceonhulu pic.twitter.com/unktNbf5Wg
— VICE Japan (@VICEJapan) February 29, 2020
ブロディ、サベージ、フォン・エリック! 十人十色の“不成立”を描く!!
まぁ、なんでこれだけのプロレス・ドキュメントが日本で作れないかねぇ。日本のプロレスを深堀りする活字コンテンツは存在するけども、映像っていうのは難しいのか。だって、公共放送の力道山の特番は「戦後のヒーロー」という一面しか切り取らない。それこそ、力道山って本当は“不成立”であるのに、公共放送は国民的ヒーローになって“成立”した力道山を垂れ流してたからね。昭和の巌流島決戦での試合不成立を徹底的に描いた名作、増田俊也さんの力作「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」(新潮社刊)が出て溜飲が下がったけどもさ。
玉袋筋太郎 松島トモ子から聞いた力道山vs木村政彦戦の秘話を語る https://t.co/eXeZokREq7
— みやーんZZ (@miyearnzz) January 18, 2020
(玉袋筋太郎)これはね、『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』っていう本があるんだけども。分厚い。増田俊也さんっていう人が書いた。その本にも書かれていないエピソードだからね!
それと、アメリカと日本のプロレスの位置づけが違うってのもあるなぁ。海外マットは「エンターテイメントワールド」になっているけども、日本はこれだけの情報が溢れているのにも関わらず「プロレス村」的な発想が根強く残ってるっていうかね。そういう土壌ではこれほどのドキュメンタリーは作れねぇな。
シーズン1のエピソード1「ブルーザー・ブロディの死」から始まるこのシリーズは見応え充分! プエルトリコで同業者に刺殺されたブロディの死もプロレス界の“不成立”だし、犯人がわかってるのに、いけしゃーしゃーとしている、すなわちブロディが殺されても事件は“不成立”。エピソード2のランディ・サベージと元妻エリザベスのエピソードなんかも、夫婦の破綻は“不成立”なのである。そしてエピソード6、「鉄の爪」フリッツ・フォン・エリックの呪われたエリック一家のエピソードなんてのも、映画化決定ぐらいの家族の“不成立”物語だからねぇ。
“不成立”にこそ旨味がある。うん、考えてみりゃオレの見方はワイドショー目線なのかね? 謀略史観も好きだしなぁ~オレは。だからプロレスに興味なくても、このドキュメントは人を惹き付けるんだよ。誰もが“成立”を目指すが“不成立”に妥協してしまうというのが人生なのである。新型コロナでこれまでの生活が“不成立”になってしまった今こそ、『ダークサイド・オブ・ザ・リング』を観るべし。そしてシーズン2を早く公開してくれねぇかなぁ。
この作品と合わせてプロレス界の“不成立”を楽しむならば「玉袋筋太郎のプロレスラーと飲ろうぜ」という、プロレスラーと酒を飲みながら対談した、外出自粛で家飲みの酒のお供に素晴らしい一冊が白夜書房より絶賛発売中! というパブもしっかり入れて、コラムを“不成立”にしてしまうオレなのであった。
https://www.instagram.com/p/B_kHpugDbT-/
文:玉袋筋太郎
『ダークサイド・オブ・ザ・リング』はHuluで独占配信中
『ダークサイド・オブ・ザ・リング』
プロレスラーは、虚構と現実という2つの世界を生きている。リングの上で演じるキャラクターと、私生活を送る本来の自分だ。ときにその境界線は交錯し、プロレスラーは虚構と現実が混じり合う世界と対峙する。リングという晴れ舞台の裏には、語られることのなかったストーリーが眠るダークサイドが広がっている。
制作年: | 2019 |
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