極寒だけど“クール”じゃない、生々しい猟奇的クライム・サスペンス
ダンヴァースは“高潔な”警察官とは言い難く、ネイティブたちへの偏見や疑念を露わにしていて、分かりやすい主人公としての感情移入を許してくれない。鉱山の採掘に従事する住民が人口の約半数というこの土地で“白人”として、しかも役職に就いている=特権を持った立場ではあるが、過剰なまでに周囲を“威嚇”する。
かたやエヴァンジェリンは精神を病んだ妹をケアしながら、過去に受け持った殺人事件への執着を捨てられずにいる。表向きは静かな地元で、突如として起こった大量殺人に過去の事件との因果を感じた彼女は、権限を逸脱した捜査によってダンヴァースと度々衝突する。かつては上司と部下という関係だった2人のあいだには、どんな過去があるのか? 事件の謎とともに、その秘密も徐々に明かされていく。
『遊星からの物体X』&『ツイン・ピークス』なスリルとミステリー
エピソード序盤は、まったく解決の糸口が見えないまま時間だけが経過していく。しかしストーリー上、違和感のないよう巧みに“時間制限”が設けられるため、何らかの進展は時間の問題であろうこともわかる。派手な捕物展開も分かりやすいケレン味もなく、少しずつ判明していく事実の積み重ねによって、融氷のように真実が徐々に滲み出していく。
トラウマによる過去のフラッシュバックなのか妄執による幻影なのかハッキリさせない演出や、ときおり挟まれる呪術的(?)なシーンは、どことなく『ツイン・ピークス』(1990~1991年)を思わせる。そして行動が制限されてしまう厳寒地と“みんな怪しい”シチュエーションは、まるで『遊星からの物体X』(1982年)。さらに超常現象的な演出は(やや強引な例えだが)『SF/ボディ・スナッチャー』(1978年)のような怪しさもあり、ことごとく観客を煙に巻いてくる。
いわゆる地味ケーサツが本領を発揮する僻地ミステリーとは一線を隠す“不可解”っぷりと、あまりにも“人間的”な締めくくりのギャップに、肩透かしをくらう人もいるだろう。だが、ギレルモ・デル・トロやスティーヴン・キングも絶賛した『ザ・マミー』(2017年)のイッサ・ロペス監督は、かけがえのない家族の絆と矛盾、報われない愛や取り戻せない時間への憧憬が“見せてしまう”不思議を、全6話の端々に忍ばせている。
『トゥルー・ディテクティブ』はロペス監督が続投する形でシーズン5の制作も決定した模様。シリーズ史上もっとも視聴された本作だけに賛否も大きかったが、まだまだドラマファンを楽しませてくれそうだ。
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