• BANGER!!! トップ
  • >
  • ドラマ
  • >
  • 「セックスすること=良い夫婦」なのか?公認不倫から始まる<性&愛>再構築ドラマ『1122 いいふうふ』が“知ったこっちゃない”の先を掴む

「セックスすること=良い夫婦」なのか?公認不倫から始まる<性&愛>再構築ドラマ『1122 いいふうふ』が“知ったこっちゃない”の先を掴む

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook
ライター:#BANGER!!! 編集部
「セックスすること=良い夫婦」なのか?公認不倫から始まる<性&愛>再構築ドラマ『1122 いいふうふ』が“知ったこっちゃない”の先を掴む
『1122 いいふうふ』Ⓒ渡辺ペコ/講談社 Ⓒmurmur Co., Ltd.
1 2

「知ったこっちゃない」の“先”を掴む今泉演出

いわゆる“つれあい”不在の人にとっては「知ったこっちゃないよ……」となってしまいそうなお話だが、そこは今泉作品。もったいぶった演出を極力排除した率直な芝居の応酬はドキュメンタリックかつ可笑しく、近しい人たちの、もしくは喫茶店で隣り合わせた見知らぬ人々の悲喜こもごもを覗き見ているような感覚に陥らせ、見事に共感あるいは野次馬心を惹起する。

『1122 いいふうふ』Ⓒ渡辺ペコ/講談社 Ⓒmurmur Co., Ltd.

まず高畑が演じる一子は、視聴者のストレス源にならないための気配りでもあるのか、おきゃんな言動が猛烈キュート。どこまでが演技なのか分からない成田凌を筆頭に、各登場人物たちもナチュラルな芝居を徹底していて、おおいにアドリブ感のあるやり取りからの、シークエンス毎にピリッとスパイス、もしくは笑いを〆に持ってくる演出も心地良い。

『1122 いいふうふ』Ⓒ渡辺ペコ/講談社 Ⓒmurmur Co., Ltd.

高畑×岡田と高良×西野という“神話級カップル”は正直ファンタジーかもしれないが、“暖”な前者と“寒”の後者のギャップは冷や汗もの。リアリティを残した生活背景の描写も、視聴者を現実に引き戻す効果がある(岡田・高良・吉野の3人を最後まで一つの画面に並ばせないのは輝度が上がりすぎて液晶モニターに焼き付いてしまうのを避けるためだろう)。

多彩な登場人物、ファンタジーとリアルの狭間、連続ドラマならではの楽しみ

悩む一子の相談相手=続く行動のトリガーとなる中田クルミ(友人役)や市川実和子(占い師役)、絶妙な外野具合かつ抗不安薬のような役割も果たす菊池亜希子(二也の姉役)、あと久しぶりに引っ叩きたくなる存在感をカメオしてくれた諏訪太朗など、エピソード毎に視聴者の“あるあるを”投影しやすいキャラクター、そして感情移入しやすいトピックがふんだんに盛り込まれるのは、ドラマならではの魅力。ちなみに吉野演じるセラピストは原作の1億倍エロいので要注意だ。

『1122 いいふうふ』Ⓒ渡辺ペコ/講談社 Ⓒmurmur Co., Ltd.

多くのカップルにとって避けられない「セックスレス」への共感と、倫理的是非にとどまらない「婚外恋愛許可制」という提案。そもそも結婚やセックスに興味がない(重視していない/必要としていない/嫌悪対象である)人にとってはそれこそ泥沼ファンタジーかもしれないが、家父長制的秩序による抑圧、気の休まらない育児、低空飛行の姑関係、その先に待ち構える介護問題などなど、完全に避けて生きるのは難しいものも当然ある。とくにお子さんがいる人ならば発達障害テーマの切実さにも思うところがあるだろう(千葉惣二朗くん好演)。

『1122 いいふうふ』Ⓒ渡辺ペコ/講談社 Ⓒmurmur Co., Ltd.

思わずニヤる笑いとエモみ、からの壮絶展開に悲鳴!

“理解ある妻”ではいたいけど、“サレ妻”にはなりたくない一子。とにかく優しくて器量よしだけど、絶望的に誠実=空気が読めない二也。その帰結の一つである第4話、男性視聴者の下半身がヒュンと縮み上がる衝撃(笑撃)的な“◯◯◯”展開、からのエモ回収は感情が追いつかなくてパニックに陥るかも?……と思ったら、一子と二也がそれ(=視聴者の感情)を察知していたかのようなぶっ壊れを見せてくるものだから、驚きと笑いが追いつかない。

『1122 いいふうふ』Ⓒ渡辺ペコ/講談社 Ⓒmurmur Co., Ltd.

最後までクール&ドライをキープするかに見えた志朗も、ツルリとした可愛らしさとは裏腹なシャチ女子とでも言うべき美月との鍔迫り合いを経て唇に血をにじませ、実はカマキリ男子なのかも? と思わせる。どちらも避けて通れない性愛シーンはリアル(つまり猛烈に不格好)かつエモみも醸し出しているので、ぜひカップルのみなさんにはお二人お揃いで鑑賞していただきたい。

『1122 いいふうふ』Ⓒ渡辺ペコ/講談社 Ⓒmurmur Co., Ltd.

対照的に見えていた夫婦2組の印象がひっくり返っていく顛末、実体験も交えているであろうディテールのナチュラルさ、実感のこもった怒り、焦燥、喪失……。最後の最後まで視聴者を惹きつけて離さない本作は、1話50分強/全7話の比較的タイトなシリーズなので、ぜひ最終話までガツッとイッキに観てほしい。なお5話以降はガチで嗚咽が漏れそうな展開になる(※このへんのリアクションは経験値の差が出るかもしれない)ので抱えやすいクッションか、ジタバタを受け止めてくれる巨大なぬいぐるみか何かのご用意を。

『1122 いいふうふ』(全7話)はPrime Videoで2024年6月14日(金)より独占配信(※ 6月14日:1~3話、6月21日:4~5話、6月28日:6~7話、順次配信)

1 2
Share On
  • Twitter
  • LINE
  • Facebook

『1122 いいふうふ』(全7話)

妻・ウェブデザイナーの相原一子(高畑充希)。夫・文具メーカー勤務の相原二也(岡田将生)。
友達のようになんでも話せて仲の良い夫婦。
セックスレスで子供がいなくても、ふたりの仲は問題ない・・・だけど。
私たちには“秘密”があるー。
それは、毎月第3木曜日の夜、夫が恋人と過ごすこと。

結婚7年目の二人が選択したのは夫婦仲を円満に保つための「婚外恋愛許可制」。
二也には、一子も公認の“恋人”がいるのだった。
「ふたりでいること」をあきらめないすべての人に届けたい——、30代夫婦のリアル・ライフ。
一見いびつで特殊な夫婦の関係に見えるふたり。だけど、結ばれて“めでたしめでたし”で終わる物語のその先は・・・?これは、「結婚」という〈ハッピーエンド〉の続きにある物語。

原作/渡辺ペコ「1122」(講談社「モーニング・ツー」所載)
脚本:今泉かおり 監督:今泉力哉

出演:高畑充希 岡田将生
    西野七瀬 高良健吾
    吉野北人 中田クルミ 宇垣美里 土村芳
    菊池亜希子 内田理央 芹澤興人 前原滉 橋本淳
    市川実和子 片桐はいり 森尾由美 宮崎美子/成田凌/風吹ジュン

主題歌:『i-O(修理のうた)』スピッツ(Polydor Records)

制作年: 2024