「進さん自身にも変化というか、奥行きが出てきたようにも思います」
―内部監査という真面目さが求められる仕事をする進ですが、眞島さんは彼をどんな人物だと思っていますか?
眞島:友だちに1人いたら楽しそうだなと(笑)。善人であることは間違いないし、どこかに行ったとき、「ここでおいしいものは何?」と聞いたら返信早そうだし(笑)。ほどよく隙があって、話が通じないわけでもない。同世代でもあるし、友だちにいたら楽しそうだなと思います。
―そんな高宮進の好きなところはどこですか?
眞島:ちゃんと家に帰るところ。「今日は一泊して明日帰れば?」と思うシチュエーションでも、絶対に帰るじゃないですか? 宿泊費が出ないとか、監査の経費で落ちないとか事情はあるんでしょうが、その生真面目さが好きですね。下手に自腹を切って、泊らないところ。そこにこだわりがあるというか、日帰りで帰る新幹線の発車ベルが鳴るまでに、乗車時間がどのくらいだから品数はいくつでと現実的に考えて楽しんでいるところが好きですね。でも友人なら「泊まれば?」と言うと思います(笑)。多趣味ではないけれど新幹線を居酒屋として楽しむ趣味にはますます磨きがかかっていく、というのも身近な感じがします。
―社内監査というかっちりした仕事をしている進には、SNS仲間と趣味のやり取りを楽しむ柔軟性もあります。
眞島:むしろ社内には友だちがいないかもしれないですね。SNS仲間の豆知識には、僕も「へえ!」と思うことがあります。
―仕事の内容上、真面目にやればやるほど嫌われてしまう進。行った先で優しくされ、救われるようなエピソードも今回あるそうですね。
眞島:「今日も嫌われたなあ」が進さんの口癖ですが、「いや、嫌われてなかったよ」という出会いも今回はありました。面白い角度のやり取りが来たなと思います。回が進んできたことで、進さん自身にも変化というか、奥行きが出てきたようにも思います。
―会社員もの、仕事ドラマとして共感できる部分もありますね。
眞島:なっているといいですね。帰りの新幹線の時間をどれだけ充実させるか、というのがこの人の面白さでありドラマの魅力でもあると思うので、誰でも楽しめる趣味の魅力が視聴者の方に伝わればいいなと思います。
「日本全国には、まだまだ知らないものがたくさんある」
―このドラマの撮影では、地酒や土地の食べ物のほかに、地域の文化や歴史に出会うこともあると思いますが、帰られてから思わず調べてしまった土地などありますか?
眞島:長岡です。個人的に幕末好きなので、越後長岡藩はここか! と。長岡藩を指揮した、“最後の侍”と呼ばれた河井継之助さんが好きなんですよ。長岡駅は、なんとお城の跡。ドラマの進さんと同じように、僕も心を震わせました。
―司馬遼太郎は「峠」(新潮文庫 刊)で、河井継之助を主人公にしましたね。2019年には、小泉堯史監督によって映画『峠 最後のサムライ』にもなりました。長岡編を見るときは、そんなことも思い浮かべながら拝見します。
眞島:長岡では毎年8月2日と3日に大きな花火大会があります。それを行うことになったきっかけは1945年8月1日の長岡空襲。花火は、焼けてしまった長岡市の復興を願い始まったそうです。長岡の歴史に触れることができたのも思い出深いですね。
―CS放送<チャンネル銀河>では独占で燕三条・新高岡・高崎・金沢の続編4話も楽しめるとうかがいました。それぞれのロケでのエピソードやその土地の印象を教えてください。
眞島:新高岡では、川沿いの“日本のベニス”と呼ばれる射水市の内川エリアが印象的でした。それに食べ物も。いまはオンラインでなんでも買える時代ですが、そこに行かなければ買えない、その土地独特の食べ物も多いですよね。例えば新高岡には、醤油風味の寒天寄せに溶き卵を流し入れた<べっこう>というお惣菜に驚かされました。日本全国には、まだまだ知らないものがたくさんあるなと。
―新高岡編のゲスト、ななめ45°の岡安章介さんにも驚かされることがあったそうですね。
眞島:あの後、仕事の都合で、いったん敦賀から東京に戻らなければならなかったんです。でも敦賀まで新幹線が延伸するのは2024年3月16日からなので、まだ開通していない。さて、どうやって帰るのが早いのか? という話を待ち時間にしていたら、ななめ45°の岡安さんが何も調べずに、3つのルートをスラスラ教えてくれたんです。めちゃめちゃ鉄道に詳しい芸人さんで、ものすごく驚きました。
もうひとつ、彼は先に撮影が終了したので、「お疲れさまでした」と送り出したあと、僕らは移動して駅で撮影をしていたんです。でもふと見ると、何時間も前に別れたはずの岡安さんがいるんですよ。たずねると、「まだ乗ったことのない路線があったので乗ってきました」と。生粋の鉄道ファンなんだなと感服しました。
「主役はご当地グルメ。ロケをさせていただいた町のプラスになれば」
―燕三条では、あるものにとても興奮されていたとうかがいました。
眞島:燕三条は駅に、フライパンや爪切り、包丁、タンブラーなど、メイド・イン・燕三条の製品を飾るショールームがあるんですよ。楽しかったなあ(笑)。僕は工業製品が好きなので、めちゃくちゃテンション上がりました。以前から愛用している燕三条製の爪切りはメーカーにメンテナンスをお願いするくらい使い込んでいるんですが、今回、その工場での撮影があって! 僕のお願いはあの電話で受けてくれたんだなと感慨深かったです(笑)。ものづくりが好き、町工場が好き、職人さんが好きな人にとっては、燕三条はたまらない町だと思います。
―高崎には、行くことがあったら寄りたい店ができたとか?
眞島:まるで東京の有名な通りの裏手にある居酒屋みたいな外観の醸造所。そこで作っているクラフトビールがめちゃくちゃおいしいんですよ。自分用に買って帰り、家でも飲みました(笑)。あとは、しょうが漬け、これは一度食べてほしいです。そして、同じ並びにあるお弁当屋さんのオリジナルのタルタルソース! これが絶品なんです。ひれカツサンドやアジフライサンドに付いてくるんですが、ダントツにおいしくて‼ ちょっとした発見でした。でも残念ながらドラマには登場しないので、もし高崎に行くことがあったらぜひ足を運んでみてください。
―シーズン2では、金沢が2回登場します。
眞島:金沢で食べた、かぶら寿しは、本当においしかったです! 糀で漬け込んであるんですが、とてもさっぱりしていて。現地でしか売っていない数量限定のかぶら寿しは、いま実家用に手配中です(笑)。
『#居酒屋新幹線』は、そういう発見も楽しい。残したいと思う日本文化や風土、食は、まだまだたくさんあるなと感じました。どこを訪ねてもそれはあり、ロケをさせていただいた町のプラスになればいいなと思いますね。主役は僕じゃなくて、ご当地グルメと言っているのには、そういう意味もあるんです。
取材・文:関口裕子
撮影:落合由夏
ヘアメイク:佐伯憂香 スタイリング:増井芳江
『#居酒屋新幹線2』はMBS/TBSで毎週火曜深夜放送中。CS放送「チャンネル銀河」で2月10日(土)より放送開始(全12話)
▼CS放送「チャンネル銀河」放送概要
2024年2月10日(土)より毎週土曜 20:00~ ※2話連続放送
2024年3月9日(土)20:00~21:00 第9話・10話テレビ初放送
2024年3月16日(土)20:00~21:00 第11話・12話テレビ初放送
衣装:ジャケット ¥73,700、シャツ ¥35,200、パンツ ¥48,400 全て税込 suzuki takayuki / シューズ スタイリスト私物
『#居酒屋新幹線 2』
損保会社の内部監査室で働き、日帰り出張で全国を飛び回っているサラリーマン高宮進(眞島秀和)。彼の密かな楽しみは、出張先で見つけた選りすぐりのご当地グルメを帰りの新幹線でひとり堪能すること。その土地ならではの酒と肴、駅弁、さらにはスイーツまで揃えたら、今宵も、居酒屋新幹線、開店!
制作年: | 2023 |
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2024年2月10日(土)より放送