“処刑人”の誕生が韓国全土を揺るがす
警察学校に通うキム・ジヨンは、幼い頃に目の前で粗暴犯によって母親を惨殺された過去を持っている。しかし犯人は、裁判で精神的な問題を主張して減刑されてしまっていた。
加害者の人権が尊重され、被害者とその家族の人権がないがしろにされる韓国の現状に思い悩むジヨンは、かつて母を殺した男がバスの運転手に暴力をふるっている姿を見て、路地裏で男を撲殺。こうしてジヨンは、重い罪を犯しながら求刑が極端に軽く、反省すらしない元犯罪者を探し出して私的に制裁を加える“処刑人”としての活動を開始する。
その事件を追っていたテレビプロデューサーのチェ・ミリョは、それまで報道規制によって守られていた犯人の本名と顔写真を自身の番組で次々と公開。ジヨン=謎の処刑人に“ヴィジランテ(自警団)”と名付け、彼を誘い出すような報道を繰り返していく。
警察も手をこまねいているわけではなく、怪力の巨漢刑事チョ・ホンをチーム長とする広域捜査班を中心に、ヴィジランテを追い込んでいく。そして当然のようにヴィジランテの過激な模倣犯が次々と現れ、韓国全土が大混乱に陥っていき……。
主演ナム・ジュヒョクは兵役中! 路上での“激痛”柔道技などアクションに注目
主人公ジヨンを演じるのはナム・ジュヒョク。『二十五、二十一』(2022年)『スタートアップ:夢の扉』(2020年)などでスターダムに上り詰めたジュヒョクは、本作出演後に兵役のため入隊。事務方で勤務する芸能関係者が多い中、ジュヒョクは自ら志願した軍事警察団機動隊に合格、配属されている。
本作ではボクシングだけでなく、警察映画らしく柔道技も多く炸裂。ジュヒョクの格闘センスを感じるとともに、路上での柔道の有用性が非常によく分かる作品となっている。
ジヨンを追うチョ刑事役には『オールドボーイ』の演技が高く評価されたユ・ジテ。『オールドボーイ』の細マッチョなジテをイメージすると、その“変化”に驚愕するだろう。本作のために筋肉だけを20kg増量したというジテは、存在感たっぷり。片手でチンピラを持ち上げ、パンチで敵を数メートルも吹っ飛ばすなど、常人離れした体躯を活かしたアクションは大迫力だ。
さらに『非常宣言』(2022年)で気丈なチーフパーサーを演じたキム・ソジンが、ヴィジランテを挑発するテレビプロデューサーのミリョを演じる。ミリョは警察よりもヴィジランテのことを理解し、ヴィジランテを挑発するような番組を作り続けるという、ある意味ヴィジランテ最大の理解者。ソジンはこの複雑な役柄を、凛として演じている。
敵か味方か!? 手に汗握るストーリー展開はイッキ観不可避
本作の見所は憎々しげな元犯罪者たちを、あの手この手で処刑するジヨンのエクスターミネーターっぷり。決して圧勝ではなく、敵の卑怯な得意技によってピンチに陥りながらも逆転していくアクションは手に汗握る大迫力。
そしてピンチに次ぐピンチのストーリー展開も中毒性が高い。狂暴な元犯罪者vs.ヴィジランテvs.警察vs.テレビ局vs.模倣犯というふうに敵味方が入り乱れ、敵か味方か不明のキャラクターも次々と登場。全8話というミニシリーズだが、満足度と中毒度は抜群。一気観マストの本作を是非ご覧いただきたい。
文:高橋ターヤン
『ヴィジランテ』はディズニープラス スターで独占配信中
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