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信長に仕えた黒人武士! Netflixアニメ『YASUKE -ヤスケ-』は日本が誇るMAPPA製作×アメリカ原作の歴史SFファンタジー

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ライター:#増田弘道
信長に仕えた黒人武士! Netflixアニメ『YASUKE -ヤスケ-』は日本が誇るMAPPA製作×アメリカ原作の歴史SFファンタジー
Netflixオリジナルアニメ『YASUKE -ヤスケ-』独占配信中

Netflixオリジナルアニメ『YASUKE -ヤスケ-』の配信がスタートした。安土桃山時代に鋼の肉体を持つ身長6尺2寸(約186㎝)あまりのアフリカ系武士が織田信長に仕え、主人が明智光秀に討たれたのちにも生き長らえたという話を聞くだけでワクワクするが、本作はその史実を根底に置きながらも大胆な解釈を加えた歴史SFファンタジーとなっている。

Netflixオリジナルアニメ『YASUKE -ヤスケ-』独占配信中

Netflix渾身の野心作

『YASUKE -ヤスケ-』は間違いなくNetflixが持てる力を注ぎ込んだ野心作である。まずプロダクションに、『この世界の片隅に』(2016年)という歴史に残る作品だけではなく、ここ2~3年に『ゾンビランドサガ』(2018年)、『ドロヘドロ』(2020年)、『進撃の巨人 The Final Season』(2020年~)、『呪術廻戦』(2020~2021年)といった話題作を次々と世に送り出している<MAPPA>を指名。

日本版キャストは主人公・弥助に意表を突く副島淳、織田信長に英語バージョンも手がけた演技派・平岳大を起用。その上で榊原良子、牛山茂、田中理恵、喜多村英梨、七海ひろきといった豪華な声優陣、さらに占部房子、神尾佑、窪塚俊介らベテラン俳優陣を配するという、挑戦的にして贅沢このうえない布陣である。

https://www.instagram.com/p/COnFwYEjN_T/

Netflixが挑んだ新しい“和術洋想”プロデュース・スタイル

そして、原作、脚本、監督、製作総指揮を務めるのがラション・トーマスである。NY生まれのアフリカ系アメリカ人だが、現在は目黒に在住、前作『キャノン・バスターズ』(2019年)を見ても日本文化に対する関心はかなり高いものと思われる。そんな監督にとって、『YASUKE -ヤスケ-』は“カートゥーン”から、念願していたクールな“アニメ”への転換を遂げた作品となっている。

この作品、原作をはじめとして、製作総指揮、脚本、監督、音楽といった開発&プロデュースはアメリカサイドが担当している。それに対し、実際の制作は日本のアニメスタジオで行われているという文字通りの共同製作であるが、今回は日米が四つに組んだ和魂洋才、いや“和術洋想”とでもいうべき、新しいプロデュース・スタイルにNetflixが挑んでいるように見える。

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小池健の起用の裏に隠された『YASUKE -ヤスケ-』の意図

キャラクターデザインは『LUPIN THE IIIRD 峰不二子の嘘』(2019年)の監督を務める小池健。実は、彼の起用には様々な意味が込められているのだ。

ラション・トーマス監督が『YASUKE -ヤスケ-』を発想するに当たって、岡崎能士原作のアニメ『AFRO SAMURAI アフロサムライ』(2006年)に触発を受けていることは容易に想像できる。当時、新進気鋭のアニメスタジオであった<ゴンゾ>が製作したこの作品は、アフロサムライをサミュエル・L・ジャクソンが演じたこともあり(英語バージョン)、アメリカで高い評価を受けたが、そのパイロットフイルムで監督、演出、絵コンテ、キャラクターデザイン、総作画監督を務めたのが他ならぬ小池健であった。

その当時、パイロットの制作スタジオだった<マッドハウス>に在籍していた筆者は、実際そのフイルムを見ているのだが、とんがったキャラクターデザインもさることながら、小池が『REDLINE』(2010年)で見せたような「小池アクション」の炸裂に驚いた記憶がある。当時から小池は、『PARTY7』(2000年:石井克人監督)のアニメパートや、映画『マトリックス』(1999年)をモチーフとしたオムニバスアニメ作品『アニマトリックス』(2003年)の中の一篇『ワールド・レコード』(監督・キャラデザイン・作画監督)などで、すでに海外でも名を知られた存在ではあったので、当然ラション・トーマス監督も知った上での今回の起用であろう。

さらに、MAPPAの発祥元がマッドハウスであることにも因縁を感じるが、実は『YASUKE -ヤスケ-』のルーツにも小池は繋がっているのである。

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日本人が知らない大ヒット作品『Ninja Scroll』

マッドハウス時代の小池の師匠は『妖獣都市』(1987年)、『X -エックス-』(2001年)、『バンパイアハンターD』(2000年)などの監督を務めた川尻善昭である。そして、その川尻が1993年に原作・脚本・監督を手がけた劇場アニメ『獣兵衛忍風帖』(英題『Ninja Scroll』)こそが、『YASUKE -ヤスケ-』誕生に大きな影響を与えたと考えられる作品だ。

この映画は日本ではさほどヒットしなかったこともあり、話題に上ることはほとんどなかったが、実は海外、特にアメリカで大ヒット。アメリカの映像関係者やアニメファンで知らない人間はいない、というほど有名な作品なのだ。

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1995年にマンガ・エンタテインメントからビデオが発売された『Ninja Scroll』は、1996年にビルボード誌で週間セールスランキング1位となった『攻殻機動隊』(1995年)に引けをとらない売上を記録した(※『獣兵衛忍風帖』の権利はムービック所有)。当時マッドハウスを訪れる海外からの業界人が、口を揃えて「『Ninja Scroll』はクールで大人気。ビデオが凄く売れている」と言うのを筆者は散々聞かされたが、実際、あのレオナルド・ディカプリオが実写化権を獲得し、一時はSMAPが出演すると報じられたほどなので、その人気の高さがうかがえるであろう(※出典:日刊スポーツ 2009年4月6日「レオ様が映画化権を持つ作品にSMAP指名」)。

1975年生まれのラション・トーマスは『アフロサムライ』はもちろんだが、『Ninja Scroll』から影響を受けているのは間違いない。両作品へのオマージュが溢れている『YASUKE -ヤスケ-』のテーマは、日本の戦国時代を舞台に黒人武士が主人公となって奔放な伝奇ファンタジーを創造することにあったのだろう。

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「ジャポニズム」のきっかけとなった浮世絵とクールジャパン

マンガ・アニメで表現される日本の魅力をこよなく愛する外国人は多いが、そのことに無自覚である日本の状況は、まさに19世紀に起きた“浮世絵事件”と重なる。

1800年代後半、日本の文化が印象派のモネやセザンヌ、ポスト印象派のゴッホやゴーギャンに大きな影響を与えた美術的潮流を「ジャポニズム」と呼ぶが、そのきっかけとなったのは、フランスに向けて輸出された磁器の包装用紙に使われていた浮世絵が評価されたという、何とも皮肉な事実がある。いつの世も日本は自国のポップカルチャーに対し無自覚であるが、おそらく「クールジャパン」戦略が上手くいかないのも、その辺に原因がありそうである。

Netflixオリジナルアニメ『YASUKE -ヤスケ-』独占配信中

最後に気になったことだが、実際の台詞と日本語の字幕が一致していない。おそらく英語版のオリジナルシナリオから字幕の翻訳をしたものと思われる。また、各話数における声優のクレジットが英語バージョンのものになっており、レギュラーメンバー以外の日本人キャストが分からないのもちょっと残念であった。キャスト・スタッフのクレジットが英語なのも、かなりアメリカ市場を意識してのことであるとは思うが。

Netflixオリジナルアニメ『YASUKE -ヤスケ-』独占配信中

文:増田弘道

『YASUKE -ヤスケ-』はNetflixで独占配信中

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『YASUKE -ヤスケ-』

かつて黒人侍として名をはせ、今は船頭として平穏な日々を送るひとりの戦士。邪悪な力に狙われた不思議な少女を守るため、再び壮絶な戦いへと身を投じていく。

制作年: 2021
監督:
声の出演: