あの『ウォレスとグルミット』シリーズ(1989年~)を手掛ける英国アードマン・アニメーションズ製作の人気クレイアニメーション『ひつじのショーン』シリーズの劇場版第2作目『映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!』が2019年12月13日(金)より公開! 共同監督のリチャード・フェランと共に長年アードマン作品に携わってきたウィル・ベチャー監督に、舞台を宇宙にまで広げ様々なSF作品へのオマージュを盛り込んだ本作について話を聞いた。
英アードマンが贈る超人気クレイアニメ『ひつじのショーン』シリーズ最新作!
―アードマン・アニメーションズ(以下、アードマン)の作品には、1フレームごとにキャラクターに愛情が込められていると感じます。監督として、素晴らしいスタッフと作品作りができることに、とても喜びを感じるのではないでしょうか。
愛情がスクリーンから伝わっていることが、とても嬉しいです。スタッフ全員がこの世界観、キャラクターを愛していていますから。作品が完成するまでの道のりは簡単なものではありませんが、みんな仕事の手を抜かないし、才能あふれるスタッフばかりだと思っています。
―監督はスタジオ「ライカ」でも働いていましたが、アードマンとライカの違いや共通する点があれば教えて下さい。
まず、ストップモーション・アニメーションの業界はとても小さくて、ティム・バートン、ウェス・アンダーソン、ライカ、アードマンの中を渡り歩いている人は多くいます。ライカ製作の『パラノーマン ブライス・ホローの謎』(2012年)のプロジェクトに、短い期間ですが参加しました。とても楽しい経験でしたね。ライカもアードマンも技術的な違いはあれど、映画やアニメーション作りを芸術と捉えて、愛をもって作品を作っています。ただ、僕の性格にアードマンが合っていて、アードマンではユーモアやストーリーテリングを学び、今では自分の家のように思っています。アードマンはキャラクターと物語に焦点を当て、手で造形物を作っていきます。手触りをとても大事にしています。
―本作は完成までに約4年を要したとのことですが、アードマンは製作にどれくらいの年月をかけるのでしょうか?
映画の場合は、3~5年ぐらいの歳月をかけて作ります。最初の1年は、監督と脚本家の少人数のグループで、アイディアを出しながら物語を考えます。そして次に絵コンテのチームが入ってきて、最終的に造形物が作られて撮影に入ります。
「『BTTF』へのオマージュや『2001年~』『E.T.』の音楽にもインスパイアされているよ」
―本作はアードマンにとって初めてSFをテーマにした作品です。80年代のSF映画からの影響が垣間見られますが、過去の映画作品からインスピレーションを強く受けましたか?
その通りです。共同監督のリチャード(・フェラン)と私は、子供時代を過ごした80年代に映画をたくさん観て、その影響を受けています。子供の頃に映画を観て感じたフィーリングを思い出しながら、観客の皆さんにも同じ感覚で観て欲しいと思い、有名なSF映画をモチーフにした要素を散りばめました。
―80年代の映画で特に印象深い作品はありますか?
8歳の頃にテレビで観た『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)ですね。ユーモアもあって、とてもカッコ良くて大好きです。タイムトラベルというテーマも好きですが、マーティ(・マクフライ)やドクのキャラクターがとても気に入っています。
―本作に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の要素は盛り込みましたか?
もちろん! いくつか隠されているのですが、テーマパークのシーンに登場するキャラクターのひとりが、マーティ(・マクフライ)と同じ上着を着ています。そして、もう一つは見つけにくいのですが、宇宙船の壁にデロリアンのパーツに似たようなものを入れました。それと、劇中でかかる曲は『2001年宇宙の旅』(1968年)や『E.T.』(1982年)などの音楽をオマージュしています。私はジョン・ウィリアムズの音楽がとても好きで、彼の音楽を通じて素晴らしいSF体験ができました。ウィリアムズの音楽からもインスピレーションを受けています。
「メインの1人に面白い相棒をつけてユーモアあふれる関係性にするのがアードマン方式です」
―本作で初登場する新キャラクター、宇宙人のルーラはどうやって生まれましたか?
様々な過程を経て、現在のデザインになりました。最初はサッカーボールのような形をしていて、お腹を空かせるとモンスターになるという設定もありました。ショーンの世界は明確なビジュアル・スタイルを持っているので、ルーラも複雑すぎずカラフルで、不思議な力を秘めた耳や触手を持っていたりと、印象的なスタイルのデザインにしようと思いました。絵コンテのアーティストのひとりが、昔ながらのUFOの絵を描いてくれたときに「このシルエットを頭にしよう!」と思いついたんです。体は三角形になっていてロケットの噴射をイメージしていますが、細かいところは好きに遊んで作りましたね。
これまでの『ひつじのショーン』のシリーズは、親のような存在の牧場主や家族のような牧場の仲間たち、そしてショーンは子供という立ち位置で、家族や兄弟との物語になっていました。本作では、ルーラという新しいキャラクターが登場して、ショーンの親友になり2人で冒険に出かけるという、友情や見知らぬ人との出会いがテーマになっています。
―“宇宙人探索”をするエージェント・レッドは厳格で怖い印象ですが、ただの悪者ではなく、いろんな顔を見せてくれる素敵なキャラクターでした。このキャラクターに込めた想いを教えて下さい。
エージェント・レッドの場合は、ただの悪役ではなくバックストーリーや動機を明確にすることで、多面的なキャラクターにしました。かなりの時間をかけてキャラクター像を作ったので、大人も子供も普遍的に共感できる物語になっていると思います。
―エージェント・レッドの相棒のマギンズがアクセントになっていますが、とてもコミカルで可愛らしいキャラクターですね。マギンズはどういったコンセプトで生まれたのですか?
<宇宙人探索省>に務めるエージェント・レッドは『メン・イン・ブラック』(1997年)のエイリアン・ハンターのような存在なので、中心人物は2人組にしようと考えました。アードマンのお約束というわけではないのですが、メインの1人に面白い相棒をつけることで、ユーモアあふれる関係性にできると考えています。そんなアードマン式に沿って、エージェント・レッドの相棒は面白いものにしようということで、マギンズが生まれました。執事のロボットで、自分はとても優秀だと思いこんでいるのだけれど、エージェント・レッドはまったくそう思っていないし、宇宙人探索省の他のスタッフからは気にかけてもらえません。型も旧式で、キャタピラが付いたファイリングキャビネットなんですが、感情はあるんですよ。
「イタズラ好きで無垢なショーンを新しい環境に連れていくことで、より掘り下げることができる」
―ショーンとルーラが冒険していく中で、スーパーマーケットや、農業用のトラクターで畑を駆け回るシーンがドタバタで印象的でした。それぞれのシーンへの思い入れを教えてください。
ルーラは「これをやってはいけない」という境界線がないので、トラクターを運転したり、スーパーマーケットで興味のあるもので遊んだりと、ハチャメチャなことをします。どちらのシーンも様々なアイディアが出てきたので、とても楽しかったですね。特にスーパーのシーンでは、大騒動が起きた後のぐちゃぐちゃになった店内や、居合わせた人たちの状況も描いているので、そこも楽しんでもらえると嬉しいです。ショーンはルーラがイタズラをしてしまうから、止められなかった自分に責任を感じます。普段はショーンがみんなを率いてイタズラをするのに、ルーラがあまりにハチャメチャなことをするので、ショーン自身も「これが果たして楽しいのか?」と分からなくなるような状況に陥るので、今までにないショーンの姿が見られると思います。
―『ひつじのショーン』シリーズの最大の魅力は何でしょうか?
ショーンは、みんなの中にある童心やイタズラ心に響いてくる無垢なキャラクターなんです。『ひつじのショーン』の世界は知り尽くされていますが、ショーンを新しい環境に連れていくことで、さらにキャラクターを掘り下げることができます。今回の作品では、イタズラをすることがどういう結果を招くのか、ショーンは客観的に見て考えざる得ない状況になります。
―今後、アードマンで作ってみたいのはどんな作品ですか?
自分で生み出したキャラクターや物語で、長編映画を撮ってみたいと思っています。今その夢を実現する為に、アイディアを考えて進めているところです。具体的な企画ができたところで、いつかお話しできると嬉しいですね。もしかしたら10年後になってしまうかもしれませんが、楽しみにしていて下さい(笑)。
『映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!』は2019年12月13日(金)より全国公開
【BANGER!!! 開設1周年記念プレゼント】
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『映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!』
ショーンたちがくらす町に、突然UFOがやってきた!
UFOの中には宇宙人の女の子、ルーラが。
ショーンとルーラはすぐになかよしに。
エージェント・レッドは宇宙人をつかまえようとルーラをおいつめる。
はたしてショーンたちはルーラを守りきれるのか!?
制作年: | 2019 |
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監督: |
2019年12月13日(金)より全国公開