ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの『アナと雪の女王2』(2019年11月22日公開)、ドリームワークス・アニメーションの『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』(2019年12月20日公開)といった話題作の日本公開が迫る中、CGアニメーション映画『ロイヤルコーギー レックスの大冒険』が2019年10月25日(金)から劇場公開される。
ピクサーやイルミネーション(『ミニオンズ』(2015年)などの製作会社)とも異なるタッチのキャラクタービジュアルを見て、「どこのスタジオの映画なんだろう?」と思った方もいらっしゃるのではないかと思う。それもそのはず、本作はベルギーのアニメーション・スタジオ<nWave Pictures>が製作した作品なのである。
nWave Picturesってどんな会社?
大手スタジオに比べるとあまり話題に上らないものの、nWave Picturesは1994年の設立以来、3DCGアニメをコンスタントに製作している。日本でも『エンカウンター3D』(1998年)や『SOSプラネット』(2002年)などの短編アニメや環境ドキュメンタリーが、科学館やプラネタリウムの大型スクリーン向け作品として公開されていたようだ。
長編映画では『ナットのスペースアドベンチャー3D』(2008年)と『サミーとシェリー 七つの海の大冒険』(2010年)が劇場公開されたが、残念ながらそれ以降の作品はほぼ全てDVDスルー。『おじいさんと子猫の魔法の家』(2013年)に至っては、2019年になってやっとDVDリリースされたという不遇な作品となっている。しかし、今回の『ロイヤルコーギー レックスの大冒険』は、近年のわんこ映画ブームの波に乗って、本国とあまり間を置かずに日本での劇場公開が実現した。
なにかと話題の“あの大統領”も出ています。
物語の内容は「英国王室でトップ犬としてセレブ生活を満喫していたレックスが、仲間の裏切りで外の世界へ追い出され、様々な困難を乗り越えながら成長していく」という定番のもの。しかし、そこはベルギー製CGアニメ。いろんな意味でディズニー映画とは違う雰囲気を醸し出している。
例えば、セリフを一切使わずにレックスの宮殿での日常を描く冒頭の演出も(ピクサー映画『ウォーリー』(2008年)の前例があるとはいえ)意欲的な試みだし、エリザベス女王やフィリップ王配の登場もインパクト大で、特にトランプ大統領の描き方がスゴい。
「金ピカグッズとセルフィーが大好き」という直球なデフォルメに加え、独特な所作もかなり忠実に再現。宮殿で用意されたコカ・コーラのボトルには、一時期ツイッターで話題になった、あの“謎の単語”がしれっとプリントされている。
『ロイヤルコーギー レックスの大冒険』
— 映画『ロイヤルコーギー レックスの大冒険』公式 (@royalcorgi_jp) September 9, 2019
\キャラクター紹介🐾ミッツィ/
アメリカ大統領とともにバッキンガム宮殿にやってきたテキサス生まれの勝気なコーギー🐕
投げ縄が得意💕#ロイヤルコーギーレックスの大冒険
10月25日公開 https://t.co/30QGi31pGF pic.twitter.com/2iD6bpUXDy
それ以外にも、かわいらしさとうぬぼれ具合のバランスが絶妙なレックスのキャラ設定、ペルシャ・グレイハウンドのワンダのしたたかなヒロイン像、皮肉の効いた結末など、一見子供向けの動物アニメのようでいて、ところどころに大人向けのユーモアやセレブへの風刺が込められており、不思議な味わいを持った作品となっている。
『パシフィック・リム』の作曲家とわんこアニメの意外な組み合わせ
劇中の音楽を担当したのは、『パシフィック・リム』(2013年)やテレビシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』(2011年~2019年)の仕事で知られる人気作曲家、ラミン・ジャヴァディ。およそわんこアニメの音楽とは結びつかない印象だが、本作のベン・スタッセン監督とジャワディは『ナットのスペースアドベンチャー3D』以来の長い付き合い。いつもの重厚なサウンドから一転、今回は犬たちの活躍を彩る賑やかな音楽を作り上げている。
バッキンガム宮殿のシーンでは、気品あふれるオーケストラスコア。宮殿の外ではギターやドラムス、電子音を使ったモダンなスコアというように、音楽のスタイルを自在に変えて、レックスを取り巻く世界の変化を巧みに表現。野犬たちが保護されているシェルターのシーンでは、ジャヴァディの代表作『プリズン・ブレイク』(2005年~2009年、2017年)の音楽をコミカルに味付けしたような曲があったり、レックスのトレーニングシーンで80年代スポ根ドラマ風の曲が流れたり、レックスがワンダに一目惚れして突然ミュージカルのような展開になったりと、凝った音楽演出が楽しめる。
本作はディズニーやドリームワークスなどの大手スタジオのアニメ作品に比べると、背景の描き込みや冒険の内容がややアッサリしている感は否めない。しかし、ジャヴァディのバラエティ豊かな音楽が、映画にダイナミズムをもたらしていると言えるだろう。
文:森本康治
『ロイヤルコーギー レックスの大冒険』
バッキンガム宮殿に住むレックスは、エリザベス女王のトップドッグとして、贅沢でわがまま放題のセレブ生活を送っていた。ある日、晩餐会を台無しにしてしまったレックスは、仲間のチャーリーとともに宮殿を抜け出すことに! しかし、トップドッグの座を狙うチャーリーの裏切りによって池に落とされてしまう…。初めての外の世界、家を失った犬が住むシェルターに保護されたレックスは、仲間の力を借りて宮殿へ戻ろうと計画するが、行く手にシェルターのボス・タイソンが立ちはだかる。レックスは無事女王の元へ戻ることが出来るのか!?
制作年: | 2019 |
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監督: | |
吹替: |