今度の『トイ・ストーリー』は“おもちゃの大前提”に疑問を投げかける!
おもちゃというのは、手に取られた瞬間こそが存在意義の最高潮。いつかは飽きられる。もしくは壊される。捨てられる。そんな、なんともブルージーな存在を描き続けてきたのが1995年の初登場以来、いまだにピクサーの看板作品として世界中で愛されている『トイ・ストーリー』シリーズ。
おもちゃたちは、自分たちが自由に話したり動いたりできるということを絶対に人間にバレてはいけないというルールを健気に守り(とはいっても1作目でいきなり禁忌を破ってたけど)、ひたすら“人間の子どもたちに遊んでもらう”というおもちゃ界の至上の喜びを追求する……というのが、シリーズの持つ大前提。しかし、これに真っ向から疑問を投げかけるのがシリーズ最新作、『トイ・ストーリー4』だ。
「僕はゴミだ!」と自らを揶揄するアナーキーな手作りおもちゃ登場!
自由におしゃべりし、自由に動き回るおもちゃ、というものをこれまでの3作で掘り下げ続けた結果、おもちゃたち、特に主人公であるウッディは正体をバラせないヒーローのようになってしまった。本作はそれを如実に物語るかのように、土砂降りの中、溝にはまったままのラジコンカーをウッディが救出するという緊張感満載のアバンタイトルで幕を開ける。
その後も、ウッディたちの新しい持ち主であるボニーの初登園をこっそり見守り、ボニーに起きたトラブルをこっそり解決したりと、おもちゃの本分をずいぶんはみ出した働き。もはや「ジョジョの奇妙な冒険」でいうところのスタンド、もしくは守護霊のような存在と言ってもいい。ちなみに本作の監督であるジョシュ・クーリーは、『インサイド・ヘッド』(2015年)の脚本家。『インサイド・ヘッド』も、ライリーという女の子の頭の中に住む5つの感情たちが、彼女を幸せな人生に導くべく四苦八苦する姿を描いていた。
そんなわけで相変わらず持ち主に従順なウッディなのだが、ウッディからしたら考えられないキャラクターが登場する。ボニーが幼稚園で手作りした先割れスプーン製おもちゃ、フォーキーだ。彼はボニーに愛されながらも、自分のことをゴミと思い込み、自らゴミ箱にダイブするという『トイ・ストーリー』史上もっともアナーキーな奴。「しっかりしろ! 君はボニーの大事なおもちゃなんだ!」― すでにボニーには見向きもされなくなったウッディの悲しき説教はまったく通じない。そしてフォーキーは、とうとうボニー一家の旅行の最中に脱走。ウッディがフォーキーを追いかけるところから物語はうねりだし、アンティークショップ、移動遊園地を舞台に『トイ・ストーリー』史上最大スケールの冒険へと発展する。
子どもとの“別れ”を経たおもちゃたちが生き方の“多様性”を問う
あまりにもアナーキーなフォーキーをはじめ、本作の新キャラたちは、皆おもちゃとしての本分を全うしていない、もしくは、したいのにできていない。アンティーク・ショップの奥に鎮座する女の子型人形ギャビー・ギャビーは、ボイス機能に欠陥があるため、一度も子どもに愛されたことがない。ぬいぐるみコンビのダッキー&バニーは、移動遊園地の射的の景品だが、いまだに誰にももらわれていない。バイクスタント型おもちゃのデューク・カブーンは、大げさなCMに見劣りしたために持ち主から瞬時に飽きられてしまい、それ以来自信を喪失してスタントができないでいる。
そして、長らく離れ離れになっていたウッディの元恋人ボー・ピープは、いまやすっかり別人となり、決まった持ち主もいない状態で自由気ままに暮らしていた。そんな仲間たちと出会ったことで、ウッディは“おもちゃとして”だけではない生き方の多様性を知る……。
大傑作にもほどがある『トイ・ストーリー3』(2010年)の続きはいらないよ! という人も多いはずだ。しかし観てみると、これまでのウッディたちの歩みを考えれば必然とも言える内容、かつ『トイ・ストーリー3』で描かれた「別れ」から、さらにもう一歩踏み込んだ哲学的な問いかけまで。前作同様、折に触れて見返したくなる作品になっております。
文:市川力夫
『トイ・ストーリー4』は2019年7月12日(金) より全国ロードショー
https://www.youtube.com/watch?v=QJSZjVY50aQ
『トイ・ストーリー4』
おもちゃにとって大切なことは子供のそばにいること。新たな持ち主ボニーの一番のお気に入りで手作りおもちゃのフォーキーは、自分をゴミだと思い込み逃げ出してしまう。ボニーのためにフォーキーを探す冒険に出たウッディは、一度も愛されたことのないおもちゃや、かつての仲間ボーとの運命的な出会いを果たす。そしてたどり着いたのは見たことのない新しい世界。最後にウッディが選んだ“驚くべき決断”とは…?
制作年: | 2019 |
---|---|
監督: | |
音楽: | |
出演: | |
声の出演: |