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『マッドマックス』と『狂い咲きサンダーロード』のスピリッツを継承する近未来バイオレンス『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』の“ココがスゴい”を解説!

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ライター:#ギンティ小林
『マッドマックス』と『狂い咲きサンダーロード』のスピリッツを継承する近未来バイオレンス『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』の“ココがスゴい”を解説!
『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』©2024 BLOODY ESCAPE製作委員会
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住人になるのは勘弁だけど映画的には最高! な非情かつ独特すぎる世界観

谷口監督が原案も担当される作品の大事な魅力のひとつが、ショッキングかつ斬新な世界観の設定。『コードギアス』シリーズは、ヨーロッパの超大国に占領されて植民地になってしまった日本を舞台に、レジスタンスと政府の戦いを描くというもの。未見の方は騙されたと思ってシリーズ第1作『コードギアス 反逆のルルーシュ』(2006~2007年)を観て欲しい。スラムと化した新宿で、レジスタンスと政府軍の激闘がスピーディかつ前のめりに展開するので、グイグイと引き込まれてしまいますから!

このように僕たちが知っている日本の街を、僕たちの常識をフライングした恐ろしい世界にトランスフォームさせることができる谷口監督のスキルは、本作でも遺憾なくスパーク。

世界の人口が減少した未来。人類はAIによって管理され、日本は新宿や池袋などの都市ごとに、高い壁に囲まれたクラスタと呼ばれる分断されたエリアになっている……。そういう設定なので当然、各クラスタの住人は別のクラスタに行くことは不可能、という『ニューヨーク1997』チックなルールもトッピングされている。

ニューヨーク1997

しかも、人類を管理するAIは、人類を多様化する実験として獣人、吸血鬼、魔法使い、サイボーグなどの様々な種族を生み出している、そんなわけで本作は、近未来バイオレンス映画の美味しい部分が詰まった世界観にアウトローだけでなく、改造人間や獣人、魔法使いも大暴れする、という谷口監督にしか到達することができないゾーンを披露してくれます。

『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』©2024 BLOODY ESCAPE製作委員会

本作のメイン・ステージとなる新宿クラスタは、荒れ果てた原野の中にある、高い塀に囲まれた都市。塀の中の世界は、三池祟史監督作で描かれるデンジャラスきわまりない新宿歌舞伎町を、さらにハードコアにした世界で、そこで暮らす住人の半数以上がゴリゴリの反社。しかも、見た目は『レザボア・ドッグス』(1991年)のようなダークスーツ、中身は『仁義なき戦い』のようなアグレッシブな台詞をシャウトする武闘派反社ばかり。さらに言うと、『ロボコップ』(1987年)では、警察が民営化して巨大企業オムニ社がデトロイト警察を経営している、という悪夢のような近未来が提示されていたが、本作では反社が警察を運営している、という『ロボコップ』以上に夢も希望もない暗黒未来をアピール。

そんなわけで新宿クラスタで暮らす堅気の方々の運命は、反社の方々の気分次第。女性は反社の愛人になるか風俗で働くか程度の選択肢しかない、という、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でイモータン・ジョーに支配されていた女性級にハードな身の上になっている……。このように、住人になるのは絶対に勘弁だけど、映画的にはいつまでも眺めていたい、という近未来バイオレンス映画的には申し分のない非情かつ独特すぎる世界観を楽しませてくれます。

『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』©2024 BLOODY ESCAPE製作委員会

主人公の改造ヴァンパイア人間・キサラギは何がスゴいのか?

谷口さんが原案も担当した監督作のもうひとつの魅力が、他の作品では観ることができない、スリリングかつ俺ジナルすぎる主人公。たとえば『コードギアス』の主人公ルルーシュ(福山潤)は、『Vフォー・ヴェンデッタ』(2005年)のような神出鬼没で狡猾なテロリスト。従来のロボットアニメなら主人公のライバル的悪役になる危険分子を主人公にしているんです。

『BLOODY ESCAPE』の主人公キサラギ(声:小野友樹)は、もともとは新宿クラスタの最下層で暮らす人間だったが、ある哀しい理由からヴァンパイア軍団に入隊。人類を遥かに超越した身体能力のオーナーであるヴァンパイアになっただけでなく、改造手術も受け、改造ヴァンパイアの戦士になった。が、またしてもある哀しい理由から、組織から追われる身になり、「カムイ伝」の抜け忍カムイや『木枯し紋次郎』(1972~1973年)、そして『マッドマックス』シリーズのマックスがドッキングしたような流れ者になる。

©東映

つまり、改造人間、ヴァンパイア、そして、哀しい過去を背負う一匹狼の流れ者という、アクション映画ファンが三度の飯よりも大好きな設定を全部乗せしたようなゴージャスキャラ。なんですが、本来なら全部乗せしたことで完全無欠な存在になるはずが、ここでも谷口監督の燃えるセンスが発動。

まず発動したのが改造人間の描き方。改造人間、もしくはサイボーグといえば『ターミネーター』(1984年)以降、体内の骨格がカッコいい骸骨型ロボットになっている無敵の存在というイメージが強くなりましたよね。しかし、谷口監督は『600万ドルの男』(1973~1978年)や、『仮面ライダーV3』(1973~1974年)のライダーマンのようなギミック満載のマシン義肢を、失った片目、片腕、片脚に装着したスタイルにしています。

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マシン義手はブレードや盾、グライダーに変形し、指先から射出するワイヤーはスパイダーマンのクモ糸のようなワイヤーを発射。マシン義足もジェット噴射や飛び道具等を搭載、というワガママきわまりないボディのオーナーになったと思いきや、改造手術を受けた事によりヴァンパイアとしての身体機能が低下。その結果、定期的にヴァンパイアの血液を摂取しないと死んでしまう、というスリリングな設定が加味されています。

どうです、グッときませんか? 個人的には、失った片腕と片脚をマシンで補う近未来バイオレンス映画の主人公って、日本が世界に誇る近未来バイオレンス映画『狂い咲きサンダーロード』(1980年)で山田辰夫さんが演じた主人公・仁さんがクライマックスに披露した武装スタイルを彷彿とさせるんですよ!

『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』©2024 BLOODY ESCAPE製作委員会

『マッドマックス』と『狂い咲きサンダーロード』のスピリッツを継承する唯一の近未来バイオレンス・ヒーロー

って、それは言いすぎだろ! と思う方がいると思いますが、実は『狂い咲きサンダーロード』の初期の脚本では、重傷を負った仁さんは改造手術で身体の中に44マグナム等の武器が倍増されたサイボーグ戦士になり、クライマックスは各種武器を搭載した武装マシンに乗って戦う、という展開になる予定だったんです。

しかし、『狂い咲きサンダーロード』は当時、大学生だった石井聰亙(現・石井岳龍)監督が作った低予算のインディーズ映画なので、そこまで描くことはできませんでした。それでも以前、石井監督を取材した際、仁さんの武装スタイルについてお聞きした時、「俺は、あの姿は仁がマシンと一体化した姿だと思って撮影した!」とサイコーすぎるコメントをしてくれたので、キサラギと同じジャンルの改造人間と思って間違いなし!

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©ISHII SOGO ALL RIGHTS RESERVED

しかも、本作のキサラギは各種ウェポンやガジェットを満載した武装マシンにも乗る、という『狂い咲きサンダーロード』が実現できなかった偉業を達成している! このようにキサラギは偶然、といか奇跡的に仁さんのスピリッツを継承する近未来バイオレンス・ヒーローとなっただけでも贅沢なことなのに、劇中、銃身を切り詰めたポンプアクション・ショットガンを使うんですよ。この理由を谷口監督は、こう語っています。

ショットガンを持っている一番カッコいいヒーローは誰かといえば、それは『マッドマックス』じゃないですか。そしたら、どう考えても銃身は切り詰めた方がいいとか、そうなってきますよね。

つまりキサラギは、『マッドマックス』と『狂い咲きサンダーロード』のスピリッツを継承している、という世界中にただ一人しかいない近未来バイオレンス・ヒーローなんですよ!

マッドマックス(字幕版)

© 1979 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

しつこいようですが、最後に本作の魅力を要約させてもらいますと、『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のような荒野の中にある、『ニューヨーク1997』に三池祟史監督作と深作欣二監督作のイイ部分を豪快にトッピングしたような新宿を舞台に、『マッドマックス』と『狂い咲きサンダーロード』の魂を継承した改造ヴァンパイアが、『仁義なき戦い』に登場するような巨大反社組織、『ブレイド』(1998年)のヴィランに異世界アニメの旨味成分をトッピングしたようなヴァンパイア軍団だけでなく、エキセントリックな魔法使い、ハードボイルドな獣人たちが入り乱れて、凄まじい暴力抗争と逃走劇を展開する、という谷口監督じゃなきゃ到達することができない、近未来バイオレンス映画の新機軸を打ち出した、サイコーすぎるバイオレンス・アクション映画!

もう一度書きますが、アニメファンだけでなく、実写アクション映画ファンも存分に楽しめる作品なので是非、スクリーンでキサラギの逃走劇を観戦してください!

文:ギンティ小林

『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』は2024年1月5日(金)より全国ロードショー

Presented by 2024 BLOODY ESCAPE製作委員会

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『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』

人体実験によって改造人間となったキサラギは、ある組織に追われていた。
その組織とは、分断された「東京」の制覇を目論む不死身の吸血鬼集団「不滅騎士団」。
さらに、殺された親分の敵討ちを誓うヤクザたちも追っ手に加わり、全てを巻き込んだ大抗争へと発展していく。
「元から生きる理由は無いが、コイツらに殺される理由もない──」
改造されあらゆる武器を仕込まれた身体と自らの特殊な“血”を駆使して、キサラギの地獄の逃走劇が始まる!!!

監督・脚本・原案:谷口悟朗
共同脚本:永井真吾
アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ
企画・プロデュース:スロウカーブ
キャラクターデザイン原案:コザキユースケ
音楽:中川幸太郎
主題歌:アツキタケトモ「匿名奇謀」

声の出演:小野友樹
     上田麗奈 斉藤壮馬 内田雄馬 ゆきのさつき
     倉田雅世 福山潤 置鮎龍太郎 中谷一博
     大橋彩香 高橋李依 長縄まりあ 速水奨
     三木眞一郎 日高里菜 山寺宏一

制作年: 2024