『ブラエス』谷口悟朗監督がぶっちゃけトーク！ 昭和任侠や剣客時代劇、マッドマックス、009から永井豪まで『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』特別試写会レポート

「永井豪さんの生き方を尊敬してまして」

ギンティ：設定にはあるけれど、映画には登場しなかったキサラギのギミックはありますか？

谷口：最初の義足はミサイルを発射できるようにしようかと思ったんですよ。でも、さすがに冒頭の戦闘でミサイルが出たらキサラギが勝っちゃうから、やめようと（笑）。

ギンティ：なるほど、物語のペース配分によって使える武器が変わるわけですね。

谷口：そうですね。ただ、考えるだけは考えておかないと。『トップをねらえ！』（1988年ほか）というアニメーションにも本編には登場しない必殺技がありましたけど、そういうものです。

ギンティ：僕らは、キサラギたちの今後や横浜クラスタの全貌を観ることはできるんでしょうか？

谷口：それは私が決めることではないですね。プロデューサーが考えることなので。

『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』©2024 BLOODY ESCAPE製作委員会

ギンティ：今作が多くの人に映画館で観られれば、続編の可能性はなくはないですよね？

谷口：そうですね。私の中では、それを作る前提で企画はしていませんが、プロデューサーからやろうと言われれば断る理由はないです。

今、映画館って言われましたけど、やっぱりこの映画はスクリーンで観てほしいんですよ。没入感が違うので。画面の大きさもあるんだけど、しょぼいスピーカーで聴くのとは全然音が違いますから。大事な音域がカットされちゃって、ちょっと届かないんじゃないかな。

あと、ともかく“立派な”映画にしたくなかった。漫画家でいうと永井豪さんの生き方を尊敬してまして。あれだけ時代を築いて、海外でもリスペクトされているのに、たまにとてもくだらない漫画を描くじゃないですか。あれがすごく大事だと思うんですよ。評価基準が自分にあるからこそできる自由。人って軸が弱いと他人に褒められたくなっちゃう、認められたくなっちゃう生き物だから。

ギンティ：なるほど……！

『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』©2024 BLOODY ESCAPE製作委員会

谷口：ファンに向かって作りたくなったり、評論家に褒められるような作品にしたくなったり、無意識が働くんですよね。それで伸びる人もいるんだろうけど、私にとっては良くないことだろうと思います。宮崎駿さんだって、今でもなんかドロドロしたカルト的な映画を撮っちゃうわけじゃないですか。そういったものは、もの作りの人間にとってすごく大事だと思うんですよ。

ギンティ：永井豪先生の話が出ましたが、この作品は「バイオレンスジャック」が好きな人にも観てほしいですね。

谷口：私も「バイオレンスジャック」は大好きで、とあるシークエンスをこの作品の参考にしています。コンテきっていたら出てきちゃったというか。

ギンティ：『仁義なき戦い』、『男はつらいよ』、『バイオレンスジャック』、日本が世界に誇る熱い文化を継承したのが『BLOODY ESCAPE』なんですね。

谷口：深作欣二ラインとも言えるかもしれない。

ギンティ：深作さんと『マッドマックス』の世界観が一緒になった映画は、世界中探しても『BLOODY ESCAPE』だけですよ！

谷口：三池（崇史）さんも、ちょっと入ってます（笑）。

『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』は2024年1月5日（金）より全国ロードショー