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『ブラエス』谷口悟朗監督がぶっちゃけトーク! 昭和任侠や剣客時代劇、マッドマックス、009から永井豪まで『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』特別試写会レポート

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ライター:#BANGER!!! 編集部
『ブラエス』谷口悟朗監督がぶっちゃけトーク! 昭和任侠や剣客時代劇、マッドマックス、009から永井豪まで『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』特別試写会レポート
ギンティ小林、谷口悟朗 『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』トークショー ©2024 BLOODY ESCAPE製作委員会
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※以降、ネタバレを含みます。本作をご鑑賞前の方はご注意ください。

ギンティ:途中で完璧な義足を失って、中古の義足をつけますよね。身体能力が高いから頼りない義足でもスタスタ歩くんだろうと思ったら、すごく細かく歩きつらそうに移動してましたね。

谷口:よく観ていただいて、ありがとうございます。あそこは<ポリゴン・ピクチュアズ>の担当の方と話して、最終的には実際に松葉杖を使って歩いてみたところをムービーに撮ってもらったりしたんです。そうすると、やや弧を描くように外側から回り込んだ方が着地しやすいことがわかって、その動きを取り込んだんですね。そうやってスタッフ達が頑張ってくれたからできた表現です。

ギンティ:すごい、そこまで細部の動きにこだわられたんですね。

『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』トークショー ©2024 BLOODY ESCAPE製作委員会

谷口:アニメは記号化された嘘だから、あり得ない動きもできちゃうんですよ。昔からよく言われますが、“画面の奥から3歩で画面手前に出る”ことができる。それはアニメの良さでもあるんだけど、説得力をなくすことでもあるんですよね。でもね、全部正確にやっても、跳ねる部分がなくなっちゃってつまらんわけですよ。最低限の説得力は残しながら、いかに観ていて気持ちのいい動きを作るか、というのがアニメーションのさじ加減ですね。

ギンティ:物語が進んでいき、歩きづらそうにしていたキサラギが新しい義足を手に入れて戦うシーンはカタルシスがありました。もっと早い段階であの義足をつけてあげればいいのに! と思うくらい、ツーアウト満塁のギリギリになるまでつけられないという。

谷口:あれはヤクザ映画でいうところの、ついに高倉健さんが殴り込みに行く場面。ああいうのって若い世代が観たら腹が立つでしょうね。「いつまで我慢するんだ、この人」って(笑)。

ギンティ:ミサイルで義足が運ばれたシーンは、「よっ! 待ってました!」と声をかけたくなるくらい燃えました。

谷口:どこまで我慢できるかが勝負ですから。お客さんが新しい義足の存在を忘れた頃にしたかったんです。

『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』トークショー ©2024 BLOODY ESCAPE製作委員会

「ショットガンを持っている一番カッコいいヒーローは誰か?」

ギンティ:12月4日のジャパンプレミアに登壇された際におっしゃっていましたが、谷口監督は空中を異動するアクションは“有線”がお好きだと。キサラギは指先からワイヤーを出して、柱とかに引っかけて飛ぶので、まさにそれだなと。監督は『ONE PIECE FILM RED』も手がけてらっしゃいますが、ルフィも腕を伸ばして飛びますよね。

谷口:そうそう、ルフィの動きには基本的に物理があるじゃないですか。だから面白いんだと思うんですよ。あれが超能力とかで飛んじゃったら工夫もないし、面白くもなんともなくなっちゃうので。めんどくさいところに演出が存在する、と言えばいいんですかね。

ギンティ:なるほど。

谷口:若手にもよく言うんです。例えば、ここからあちらに移動するとして、真ん中に障害物がある場合。ダメな演出家はそれを何も考えずにどかすんですよ。どかせば作画も楽だし、でも、それは違うんです。障害物があるから避けて進むかもしれないし、ジャンプして飛び越えるかもしれないし、匍匐(ほふく)前進するかもしれない。それで描けるものがあるんです。実写もアニメも演劇も含めて全部そうですよ。段取りにならない邪魔な部分にこそ大事なものがあると思います。

ギンティ:勝新太郎先生が「無駄の中に宝がある」とおっしゃってましたが、まさにそれですね。

谷口:勝さんは『座頭市』のとき、実際に目をつむって生活したので、ああいう動きになったそうですよね。もしかしたら、それ自体に意味はないのかもしれないけど、それによって生まれた座頭市の匂いがある。やっぱり大事なことですよね。

『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』トークショー ©2024 BLOODY ESCAPE製作委員会

ギンティ:ちなみに谷口監督が好きな有線アクションは何ですか?

谷口:最も有名なのは『スパイダーマン』(1977年ほか)だと思うんです。すごく立体的な動きを組み上げている。時代劇で言えば、鎖鎌が重要だと思っていて。絡みついたりもできるから、有線アクションになるじゃないですか。時代劇は日本刀ばかり使っていても面白くならないんですよね。宮本武蔵の何が面白いかって、戦う相手によって武器が変わることだと思うんですよ。

ギンティ:なるほど! 鎖鎌だったり、槍だったり。

谷口:もしくは集団戦だったりとか。最後は佐々木小次郎と刀で一騎打ちというのも綺麗ですよね。エンターテインメントとはどういうものか、伝統的に練り上げられてきたものだと思います。あとは、やっぱり『必殺仕事人』(1979年ほか)ですよ。

ギンティ:中条きよしさんが糸で悪人を吊すあれ(※三味線屋の勇次)ですね! 素敵です。キサラギはショットガンやリボルバーも使いますが、弾数制限があることでドラマチックになっていると思いました。

『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』トークショー ©2024 BLOODY ESCAPE製作委員会

谷口:まず、自分の義手から銃弾が出たりするのは避けたかったんですよね。「その弾、どこから入れてるの?」ということになるので。ただ、機関銃とかを持たせちゃうとランボーみたいになっちゃうから、ショットガンとハンドガンならあり得るかなと。

ギンティ:片手撃ちがかっこいいんですよね。真似したくなります。

谷口:ショットガンを持っている一番カッコいいヒーローは誰かといえば、それは『マッドマックス』(1979年~)じゃないですか。

ギンティ:間違いないです!

谷口:そしたら、どう考えても銃身は切り詰めた方がいいとか、そうなってきますよね。

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『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』

人体実験によって改造人間となったキサラギは、ある組織に追われていた。
その組織とは、分断された「東京」の制覇を目論む不死身の吸血鬼集団「不滅騎士団」。
さらに、殺された親分の敵討ちを誓うヤクザたちも追っ手に加わり、全てを巻き込んだ大抗争へと発展していく。
「元から生きる理由は無いが、コイツらに殺される理由もない──」
改造されあらゆる武器を仕込まれた身体と自らの特殊な“血”を駆使して、キサラギの地獄の逃走劇が始まる!!!

制作年: 2023